第12話 ゲームの様な恋人の練習

ミーシャは俺が聞いても、ダメですよ。答えなどは乙女の秘密です、と唇に手を添えて何も言わなかった。

俺は首を傾げながら蒼井を見る。

蒼井は恥ずかしがりながらモジモジしている。

ちょっと訳が分からなかったが秘密なら聞くまい、と思う。


そんな俺達だがアニメ◯トに寄ってからそのまま帰宅の途につく。

コスプレ用品などもそうだがカラコンも買ったし髪の毛を染めるのも買った。

しかしこれを何処で活用する気だ?

思いながら2人を見る。

なあ。お前ら。これ何処で活用するんだ?、と聞いた。


「これですか?これは.....そうですね。飯場くんの家でコスプレでもしてみようかな」


「おお、ダイタンですね。でも負けてられませんね。それなら」


「俺の家でコスプレかよ」


「そうだね。楽しそうだから」


俺は溜息を吐きながらも。

まあ楽しそうだから良いか、と思いつつ目の前の電車に揺られる2人を見る。

2人はオレンジに染まった夕日を受けながら窓から外を見ていた。

今は通勤通学帰宅ラッシュだ。

つまり人が多い。


「大丈夫か。お前ら」


「大丈夫だよ。まあ人が多いけど」


「だな、確かにな」


「こんなのもニホンの風習ですから」


楽しそうだな2人とも。

俺はその姿を見ながら天井の吊り革を持つ。

ミーシャも蒼井も美しいみたいで。

みんな見惚れていた。

それはそうだな、美少女だしな。


「ねえ。飯場くん」


「?、どうした?」


「今日は楽しかったね。有難う。付いて来てくれて」


「こういう事しか出来ないしな。でもお前らが良さげと思っている物を買えて良かったと思う」


「これで片足を突っ込みましたね。アオイチャーン」


「片足を突っ込んだってお前な」


表現が悪いからな。

俺はツッコミを入れながらミーシャを見る。

ミーシャは舌を出しながら反省する。

全く、と思うが。

それから電車は俺達の住まいの近くの駅に着いた。


「降りるかぁ」


「そうですね。駅で解散という形をとりまショウ」


「それも良いかもしれないな」


そんな会話をしていると。

蒼井が俺の袖を掴んできた。

それから俺を赤くなった顔で見上げてくる。

な、何だこの表情は。

するとミーシャが、ほほう、と反応する。


「.....仕方が無いですね。今日は譲りまショウかね」


「ちょ、ちょっと待て。譲るってのは何だ!?」


「内緒ですヨォ。自分で察して下さい」


無理があるってばよ。

だって相手は女子だししかもエロゲ好き。

そんなの訳が分からない。

思いながらミーシャに苦笑いを浮かべていると。

蒼井が、一緒は嫌?、と聞いてくる。


「.....い、いや。嫌じゃ無いけど.....」


「じゃあ一緒に帰ろう。アハハ」


「み、ミーシャ。どういう事だ」


「自分で考えて下さいねぇ」


「ミーシャおま」


そして俺達はミーシャと別れてから。

そのまま俺は蒼井と一緒に帰る事になった。

それは良いのだが何故蒼井がこんなことを望んでいる?

ちょっと意味が分からない。


「ねえ飯場くん」


「は、はい」


「私は貴方に出逢って良かったと思っています」


「.....へ?.....それはどういう?」


「こうして知る世界が広がっていったから。だから出逢って良かったなって」


「知る世界、か」


そうだね。オタクの事を知る世界だよ、と笑顔になる蒼井。

俺は、その世界の事を知ってもあまり得策にならないかもだけどな、と答える。

だが蒼井は、いや。それは違うよ、と否定する。

それから薄暗くなった道を見る。

そして見上げてきた蒼井。


「きっと何か意味がある。オタクの人も私の様な人も。だからそんな事を言わないで」


「蒼井.....」


「私はこの世界を知れて良かったって思ってる。こうして、え、エロゲに出逢ったのもね」


「それは良いけどな。エロゲは完璧に得策じゃないし」


「でも私はエロゲが無かったら君とも知り合わなかった。だから感謝しかないと思う。ねえ。飯場くん」


「何だ?」


家まで送ってくれる?、と上目遣い。

俺はボッと赤面しながらも、あ、ああ、と返事をした。

それから歩いていると。

手をチラチラ見てきていた。

な、何だ?


「.....手を繋いでも良い?」


「それは何で?」


「私、自信を持ちたい」


「じ、自信?」


まあ繋ぎたいというなら.....、と思ったが。

あれこれって結構、恥ずかしいんじゃね?、と頭で否定された。

だが俺は頑張って手を伸ばす。

それから手を繋いだ。

何で蒼井と手を繋いでいるんだ?俺。


「.....暖かいね」


「.....も、もう良いか。手を離すぞ」


「だめ。まだまだだよ」


「な、何でこんな事をするんだ。恋人でも無いのに」


「それは恋人の練習だから。エロゲだって偽物恋ってあるでしょ?」


「あるっちゃあるが」


手を繋いだまま。

というか蒼井が離してくれない。

現実にして良いものなのだろうかそれ。

思いながら俺は恥ずかしがりながらも手を繋ぎ続けた。

真相が訳が分からないままだが。

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完璧な美少女は貴方の為に完璧じゃ無くなります。 アキノリ@pokkey11.1 @tanakasaburou

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