第8話 晴天とご飯と

「ワタシもキャラクターに完璧になり切ろうかと思います」


「.....は?」


結論から言って俺達は3人で2人が作ったという弁当のご飯を食べながら。

ミーシャの話を聞いていた。

そのミーシャはそう言葉を発する。

俺は、?、を浮かべながらミーシャを見る。


「どういうこった?どういう風の吹き回しだ」


「ワタシはアナタが好きです」


「それはもう分かったから言うな。そんなに必死に。頼むから」


「だからこそですよ。ワタシはアナタのお気に入りになりたいんです」


「成程な。好かれたいって事か」


「そういう事ですね」


まあ確かにそれだったら俺の好みになりそうだが。

だけどまあ薄々だけど感じ始めたけど。

もしかしてそれって既に、と思いながら。


思いながら蒼井を見る。

蒼井は、?、を浮かべて俺を見ている。

だけど、まさかな、と思う。

そんな事を蒼井がするとは思えない。


「ミーシャ。やり過ぎるなよ。お前の事だから暴走列車になりそうだから」


「暴走列車?なりませんよ?」


「なるからな。自覚しろ」


「エッチ」


「何処がや」


俺はミーシャの頭をぐりぐりする。

ミーシャは、ウエェ、と言いながら暴れていた。

すると蒼井が、仲が本当に良いんだね、と言ってくる。

クスクスと笑いながら。


「まあな。腐れ縁とも言える」


「そうですね」


「恋愛対象とかに見ている訳じゃ無いけどな。ミーシャは」


「.....そうなんだ」


ああ、と言いながらミーシャを見る。

ミーシャは、まあ仲間同士でもあるからねぇ。意識しないのは仕方が無いよね、と納得しながら言う。

納得するのか、と思いながらミーシャを見た。


「でもワタシはいつか本当に恋愛対象に見てもらうからねぇ」


「見れないって。だから」


「いやいや。絶対に振り向かせてみせるよぉ」


「いやいや.....」


そんな会話をしながら。

俺達は向こう側に広がる空を見る。

良い天気だなぁ、と思いながら。

するとミーシャが、もし良かったら放課後にみんなで買い物に行きませんか、と提案してきた。

俺は、買い物?、と聞いてみる。


「アニ◯イト行きましょう。ちょっと小さなビルにあるじゃないですか」


「いや。行くのは良いがエロゲとか買うなよ。学生の服じゃマズイ」


「買い物はしませんって。エロゲ買わないですって。コスプレの衣装を買いましょうって話です」


「.....ああ。それは良いかもな。道具とかだろ」


「ですです」


そんな会話をしていると蒼井が、私行きたいんだけど今日は用事が、と切り出した。

俺は、ああ。マジか、と言いながら蒼井を見る。

その蒼井は少しだけ悲しげな顔をしていた。

何だか行きたくない様なそんな顔。


「残念です。蒼井チャン」


「そうだね。ミーシャ。ゴメンね。代わりに行って来て。2人でデート」


「デートじゃないですよ!」


「そうだぞ蒼井.....」


全くなんて事を言うのやら。

俺は考えながら弁当を食べ続ける。

するとミーシャが、でも蒼井チャン。何の用事ですか?、と聞いた。

そうするとビクッと身体を震わせた蒼井。

そして、ピアノのレッスンがあるの、と少しだけ悲しげに話した。


「ああ.....お前の家ってアニメは観るが固いらしいからな」


「そうだね」


「そういう事なんですね」


「.....うん」


ピアノのレッスンなんぞ死んでも嫌だな俺は。

思いつつ俺は蒼井を見つめる。

ミーシャも何だか気になる様だった。

俺は切り返す。


「まあまあ。暗い様な話になっちまうけど。でも明るく行こうぜ」


「そうですね」


「ですね」


取り敢えずお土産とか買ってきてやったら良いんじゃないかな、と俺はミーシャに笑みを浮かべる。

ミーシャも、そうですね、と笑顔を浮かべた。

蒼井は、有難う。2人とも、と言ってくる。

俺達は笑み合ってから頷いた。


「気にするな。雪子」


「そうですよ。雪子チャン」


「.....え?雪子.....」


「だってお前が目指しているんだろ?雪子」


「.....うん!だね!」


良かった。

暗い表情が一気に明るくなった。

そして俺たちに笑顔を見せる様になる。


だけど.....気にはなるよな。

そのピアノのレッスンとやらが、だ。

結局知り合い同士だしな。


「でも教室では恥ずかしいからその名前では呼ばないでね」


「当たり前だろお前。エロゲキャラの名前で呼ぶとかあり得んわ」


「でも私はアリだと思っているけどね」


「ミーシャ.....」


ミーシャを黙らせる必要がある。

俺はジト目で思ったがミーシャは、冗談だってばよ、と舌を出した。

そして、人が嫌がる事をするのは趣味じゃないよ、と言う。

見開きながら俺は、そうか、と返事をした。


「ワタシそれで友達失ったし」


「.....だな。心配すんな。俺もだしな」


「そうなの?」


「人とのコミュニケーションって分からないよな。距離とか」


「.....だね」


ミーシャは苦笑する。

そして頬を掻いた。

俺はその姿を見ながら、まあ何だ。待ってるからな。蒼井、と向く。

ミーシャもニコニコしながら蒼井を見る。

蒼井は見開きながら、有難う、と涙を浮かべた。


「さてさて。なので今は楽しみましょうぞ」


「そうだな。ミーシャ」


「うん。楽しもうね」


まだまだ色々あるかも知れないけど。

今が1番楽しい気がする。

俺は考えながら.....笑みを浮かべる。

そして5時限目を迎えた。

美味しいご飯に恵まれて、だ。

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