[やさしいBL] 俊と美少年の榊原悠とのやさしい恋物語 ちゅうがっこう

今のは・・・ 第４話

真っ暗な静寂の中で、微かな音が聞こえた。うるさいような心地良いような、そんな音だ。

「・・・君、ン君！シュン君！」

名前を呼ばれた。

それに応えるように、重いまぶたを開けてみる。

ついさっき学校で見た顔が、真上に逆さまであった。

「・・・あっ、榊原（さかきばら）君・・・？」

頭がぼんやりしていて、はっきりした声が出ない。

「そうだよ、ユウだよ」

榊原君は微笑んだ。

突然暗闇から解放されたが、榊原君の顔が視界を覆っていたため、電球の光による眩しさは感じなかった。しかし、彼の表情は眩しかった。

「中々起きないから心配したよ」

「僕、寝てたんだ。というかここはどこだっけ？」

僕は少し不安になって聞いた。学校を出た後の記憶がまるで無いのだ。

「ん？ここはユウの家だよ。学校が終わった後に一緒に遊ぼうってなって、シュン君はここに来たんだよ」

そうか、榊原君の家に遊びに来たのか。そういえばそうだった気がする。

「それで、ユウが一階にお菓子とジュースを取りに行っている間に、シュン君は僕のベッドで寝ちゃったんだよ。疲れているのかと思って、始めは起こさなかったんだけど、一時間も寝てるから、流石に起きてもらわなきゃと思ってね」

「一時間も寝てたの？！」

驚いてベッドの脇に置いてあった時計を見ると、針は二時の手前を指していた。

学校は十二時過ぎに終わったはずだ。そこから一度家に帰って昼食を食べてからここに来たとすると、確かに一時間位は寝ていたことになる。

「うん。しかも自分のベッドじゃないんだよ？もうっ、しっかりしてよ！」

「ごめん、ごめん。」

僕はすかさず謝った。

榊原君はアハハと笑った。

「全然大丈夫だよ。というか、本心を言うとね・・・」

「うん」

「・・・嬉しい」

榊原君は小声でそう言った。

僕は、今度は眠りではない意識の失い方をしそうになった。

榊原君は、僕が自分のベッドに寝ていて嬉しい？そんなことを言うなんて、まさか榊原君は、僕のことが・・・

「・・・ベッドが温まって嬉しい。シュン君が帰ったら、僕も一眠りしようと思ってたんだ」

「なんだ、そういうことか！」

その驚きで脳が活性化した。

ビクッ

気が付くと僕は一人でベッドの上にいた。

（今のは夢・・・）

電球が眩しかった。今は光を遮るものが無い。

　僕は、帰宅すると同時に自分の部屋のベッドに倒れ込んだようだ。

慣れない場所、慣れない人の影響で精神的に疲れてしまった。また、僕が通い始めた、貴梨中学校は、小学校よりも家からプラス徒歩十分程の位置にあり、肉体的にも疲れてしまった。春休みに全く運動していなかったことも関係しているだろう。

ボーッと天井を見つめていると、次第にまぶたが鉛のように重くなってきてしまったのだ。

（榊原君、綺麗だったな）

現実でもここまで榊原君に近づいてみたいと思った。

ボーッと夢の余韻に浸っていたが、すぐに僕はキュッと唇を引き締め、今の夢のように、榊原君との距離を縮めることを決意した。