第14話 宿題
「――だから頼む! 教えてくれ」
「別にいいけど……私も正直、自信はないよ…………ていうか何で私の部屋にいるの!!!!」
「え、今さら」
川見の部屋にお邪魔させてもらっていた。
「あまりにも自然と入ってきたから気づかなかった。どうやって? 不法侵入?」
「なわけ。たまたま外で川見のおばあ様に会って、良かったら家寄らない? って誘われて入れさせていただきました。まー用があったし丁度良かった」
「用って?」
「だからー宿題を教えて欲しいんです」
「そういうこと」
ちょっと待って、そう川見の言った通りに俺は正座をして静かに待つことにした。何気なしに軽く部屋を見渡して見る。一目でヒーロー好きだと分かる。部屋の壁に数枚のポスターがあり、枕や机にある筆記用具も何かのヒーローらしきキャラの絵があるのが多い。本当に愛が凄い。
「ちょっとーあんまり見ないでよ」
「見ないでってことは見てって捉えてよろしいやつ?」
「よろしくないやつ。恥ずかしいじゃん」
「了解」
でも見る。
「よし、おけー」
机の上を片付け終えた川見は、俺が持ってきた宿題のワークを手に取った。
「相変わらず宿題の量、多いよね。」
ペラペラっとめくりながら、川見はボソッと呟く。
「ほんとそれ。もー早く宿題を出す側になりたい」
「え! そっち?」
「うん。なんか楽しそうじゃん」
「……楽しいのかなぁ」
床に教科書を広げて俺は宿題に取り組む。横で川見が眺めながら、分からないとこは教えてもらうという家庭教師的なことをしていた。
「――そうそう、そこはそうする」
「なるほど、分かってきた」
教えるのが上手いのか、スラスラっと頭に入ってくる。
「ところで、川見は宿題やったの?」
「宿題。うんやってる、終わってはないけど」
「へ~。じゃあ夏休み明けから学校には来るの?」
「ま、まー……うーん。どう……しよ」
口籠もる川見に、俺は手を動かしながら言った。
「でもさ。正直最近思うんだよ。初めは川見には学校に来て欲しいと思ってたけど、でも。本当に嫌なら別に行かなくても良いんじゃないかって。もったいないけど」
川見は小さく頷きながら返事をする。
「ただ。ただほんの少しでも学校に行きたいっていう気があるなら俺は行ったほうがいいと思う。そしてそのときはさ、俺が絶対に助ける」
「フフッありがとう。でもまだ、あんまり自分の気持ちが分からない」
「まーゆっくり考えたらいいんじゃない。もしよければ頼ってもらえれば」
「うん、分かった。それでさ……思ってたけど、そこ宿題の範囲じゃないよ」
「え! 何だよ! 言ってくれよおお」
「えへへ。なんか今は聞いてほうがいいかな、とか思って」
慌てて宿題を確認する俺の横で、ずっと小さく笑う声が聞こえる。
「もー俺の話なんか全然はねのけて貰っていいのに」
「じゃーこれからそうするね」
そんな会話をしながら再び宿題を始めた。
「ふぁーやっと終わった。もうこんな時間か」
「まだ三十分も経ってないけど。宿題から逃げない」
川見が叱るように俺に言う。
「もー厳しいな、川見さん」
「厳しいんじゃなくて、緩すぎるの!」
「私が?」
「貴方が」
「分かった了解」
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