第36話
4階層の魔物を父上と2人でほとんど殲滅した後は魔物の
「さすが、クレイ様とアーク様ですッ!」
「2人がいれば国は安泰ですね」
「私達ももっと強くならないとですね!」
「「「負けてられないッ!」」」
「まさかここまで攻略が楽になるとは……無駄に命を散らさずに済んだのはお2人のお陰です」
次々と一緒に来た精鋭達から声が上がる。最後はノラの父上であるジョイだ。
賞賛は嬉しいものである。
こんな風に我とそれなりに話してくれる者達はスイーツ店の者達以来だ。
年は我より少し上の若者ばかりではあるが、精神面もしっかりしておるし、これからまだまだ伸びるであろう。
先程の戦闘もほぼ、無傷で乗り切っておるし、デーモンぐらいなら単独で討伐出来るぐらいには強い。
今まで見た者達の中でもかなり優秀の部類である。
まぁ、それでも5階層には父上と2人で行った方が良いな……庇いきれぬ。
そんな事を思っていると父上から声をかけられる。
「2人だと余裕だったな」
「えぇ、さすが父上です」
「継承もしてない息子と互角とか笑えんのだが?」
「ふふ、良いじゃ無いですか。頼もしいでしょう?」
「ふっ、そうだな。頼りにしている」
「父上」
「何だ?」
「5階層は2人だけで向かいましょう」
「そう──だな。この階層だけでも危険過ぎるからな……ボスはSランク確定だろう……よし、2人で行こう」
ノラ以外は頷き、了承する。
「では、もう少し休憩したら向かいましょう」
今の所は魔物の
その場合は3階層まで戻るか、もしくは撤退してもらわねばな……。
ふと、顔を上げるとノラが近寄って声をかけてきた。
「アーク様……本当にこの先はお一人で行かれるのですか? 僕も──」
「ノラか……この先はお主程度の腕では足手まといだ。ここで魔物が現れたら皆と協力して倒せ」
「はい……」
こればかりはな……少々キツい言い方ではあるが──
勇者候補に死なれては困るからな……。
「アーク様、女の子にその言い方が酷いですよ!」
そんな事を我に言ってきたのは双剣を使っていた女性だ。
正直、自己紹介をしておる余裕がなかったので名前はわからぬ。
「え、え、えぇ?!」
ノラは女の子と言われ慌てておるな。
こうやって指摘してもらうのは家族やソアラ、マリア以外では久しぶりであるな。
気分は悪くない──むしろ、心を許してくれておると思うと嬉しいものだ。
ノラが女の子というのは同じ女性であればわかるものなのであろう。まぁ、見た目がなよなよしておるからな。
さて、どう答えたらいいものか……ノラは内緒にしておるみたいだったからな……今も慌てておるし……。
「アーク様……実は──ノラはノーラという名前でして……息子ではなく、娘なのです……」
見かねたジョイが気不味そうに話に入ってくる。
「うむ、女性なのは知っておる。何か理由があると思って口には出さんかったのだ。男装しておる理由は?」
「へ? そうなのですか!? 理由は……アーク様です」
「我が?」
「はい、アーク様が幼い頃より同世代で同性のご友人がいないとクレイ様よりお聞きしまして……」
──なるほど、読めたぞ。
おおかた父上が我の交友関係が上手く行かない事をジョイに愚痴ったのであろう。全く余計な事を……。
しかも理由がくだらない……。
我は父上を睨む。
「待て待て、確かに俺は愚痴ってしまった! だが、ジョイがそこまでするなんて思わないじゃないか?!」
ジョイ、ノーラ以外の視線が父上に集中する。
その目は非難轟々である。
「父上──上に立つ者は下の者には考えて話さなければなりません。ノーラは女の子なのですよ? 婚約などもあるでしょう。父上のせいで人生が狂ってしまったのですッ! 謝罪して下さいッ!」
精鋭の女性陣も我に賛同するかのように頷いている。
「……ぐぬぬ……」
「父上、早く」
我はさっさと謝るように促すと、父上はノーラに向き合う。
以前、上に立つ者は簡単に頭を下げてはならぬと言ったが、例外はある。
今回は父上の過失な上に、相手が信頼する部下である。支えてくれる者達には誠意が必要だ。
「……ノーラよ……すまなかった。これからは男装は辞めてくれて構わない……婚約者も俺が責任を持って見つける。許してくれ……」
頭を下げる父上にノーラは慌てながら答える。
「え、えぇ?! ちょ、頭を上げて下さいッ! 僕はいいんです! アーク様も止めて下さいッ!」
「いや、父上が悪いからな。むしろ、こんなくだらない理由で婚期を逃しかけたノーラはもっと怒って良いぞ?」
「「「そうだ、そうだッ! クレイ様が酷いですッ!」」」
どんどん父上は小さくなっていく。ジョイも娘の将来に不安を感じたいたのであろう。特に止める様子はない。
その後、父上は──
「クレイ様は女性をなんだと思っているんですか!?」
「これでノーラちゃんが結婚出来なかったらどうするんですか!?」
「ノーラちゃんの代わりに私達が殴りますッ!」
──などと、女性陣に散々説教され、精神的にも物理的にも意気消沈する。
もはや、上司と部下という関係ではないが、楽しいので我も静観している。
ん?
楽しい?
確かに──我は今そう思った。
──そうか、こんな感じのやり取りは前世の子供の時以来であるな……。
こういう時間も懐かしい。
そうだ。我はこういうのを求めておったのかもしれぬな。
恋人も欲しかったが、こうやって信頼出来る者達と和気藹々とする──これが我の望んでおった事だ。
我はまた念願を叶えて笑みを浮かべる。
さて、これからボスを討伐せねばならぬし、そろそろ助け舟を出すか。
「まぁ、ノーラよ。父上のせいですまぬな。別に友人に男も女もあるまい。これからもよろしく頼む」
「は、はいッ! よろしく──お願いしますッ!」
「「「アーク様、優しいぃぃぃッ! これは父親の責任を息子であるアーク様が取って──ノーラちゃんを妾にするしかないわねッ!」」」
そんな女性陣の声が聞こえてきた。
「いや、それは父上がちゃんと婚約者を探してくれるはずだぞ?」
「アークよ、それが一番早い解決策だな。幸せにしてやれよ? ──ぶふぇッ」
それは名案だッ! と言わんばかりの顔で肩に手を置きながら言ってきたので、腹が立った我は渾身の右ストレートを父上の顔面目掛けて放ち、黙らせる。
そんな事は断じてあってはならぬ。
我はソアラがこの事を知って、変貌せぬかの方が心配であるッ!
このフラグは折らねばなるまいッ!
「アーク様が照れてるぅぅ〜」
「ほらほら、ノーラちゃんもまんざらじゃないんじゃない?」
「こりゃー付き合うしかないっしょッ!」
「「「おめでとーッ!!!」」」
うむ、前世で女性ばかりの職場は話が勝手に進んで盛り上がると聞いたが──まさにこれであるな……。
ダンジョン内なのに緊張感が皆無であるな。
そういえば、こういう話をする者は大概、恋人がおらぬ人が多いと聞いておったな。
かなりの美人揃いだけにそんな事はないであろうが、話を変える為に我は思った事をそのまま言う──
「とりあえず、人の事より自分の方は大丈夫なのか?」
「「「……………………」」」
その場を沈黙が支配する──
しまった……触れてはならぬ事に触れたような気がする……コミュ障がこんな所で発揮されるとは……。
予想通り、反応からきっと婚約者どころか、恋人もいない感じであるな……。
ヘイトが父上から我に向かってしもうた?!
「……アーク様はスイーツ店を作るぐらい商才もあり、とてもお強く、とても聡明なお方です……しかし、少しデリカシーというものを学んだ方がいいかと思います」
「「「うんうん」」」
「いや、今のは言葉の綾という奴である。皆はとても美人だ。これから出会いなどたくさんあるであろう」
「……アーク様? 恋人がいない前提で話してますよね? それ本気で言っているのですか?」
「うぅ……すまぬ。反応からいないかと勝手に予想した。当然、本音を言っておる。そなた達は美人だ。恋人ぐらい直ぐに出来るであろう?」
全員、街を歩いておれば声ぐらいは余裕でかかるであろう容姿だ。
「……アーク様、私達は同じレイモンド領の兵士ですら一歩引かれているのですよ……」
「……何故?」
「私達はミリア様と同じく──強い男性しか興味が無いからです。そうミリア様より教わりましたッ! 私達に言い寄る男共は全員泣き言を言うまでボコりましたッ!」
「…………」
ミラといい、こやつらといい……そんな事を言っておると本当に婚期を無くすぞ?
後、母上ッ! 何教えてくれとるんだ!?
「その顔は失礼な事を考えている顔ですね」
顔には出しておらぬはずだが、女の勘という奴か?
怖いものであるな……。
「……いや、少し妥協すれば恋人ぐらい出来るであろう?」
「「「私達にはアーク様がいますから」」」
「え?」
とんでもない事を全員が口走り、野獣のような視線で我を見据える。
いや、貴様ら何言っておるのだ?!
「アーク様は私達を拾って下さったクレイ様やミリア様より強いです」
「アーク様より強い者はいないでしょう」
「私達はアーク様の盾であり、剣です」
「ずっとお守り致します」
「ノーラちゃんだけでなく、私達も面倒見て下さいね?」
「そうです。こんな感じになったのはアーク様のご両親の教育のせいですから」
「いやー、アーク様と一緒になれるなんて嬉しいですッ!」
「皆初めてなので優しくして下さいね? 夜のご奉仕は知識だけは豊富ですので」
……これ、ガチなやつであるな……こういう時こそ呪いの『畏怖』が発動すれば良いなと心底思う。
……我は開けてはならぬ箱を開けてしまったようだ。
「いつつ、アークもうちょっと手加減しろよな……」
「父上、攻略が終わったらこやつらの結婚相手をちゃんと探してやって下さい」
「いや、無理だろ。俺は早々に諦めた。もうお前が娶れ。それに婚約者がいなかったお前のせいでもある。最悪婚約者が出来なかった事を考えて、ミリアがそんな感じに仕向けていたからな……」
「…………」
なんという事を水面下でやっとるのだ!?
今まさに皺寄せが来ておるではないか!?
「とりあえず、今はダンジョン攻略が先です。攻略してから考えましょう……」
「そう、だな……お前には同情する……俺はあいつらをそんな風に育ててないんだがな……責めるならミリアを責めろ……」
「母上には頭が上がりません。父上がなんとか言って下さい」
「無論、俺も頭は上がらない。諦めろ……」
全て棚上げであるな……。
「「はぁ……」」
父上と同じタイミングで溜め息が出た。
「さぁ、行くか……」
「そうですね……魔力も回復しました。幸い、魔物も一気に
「そうだな。ジョイ──指揮は任せたぞ。皆、ここで死ぬ事は許さん。最悪は撤退しろ」
「「「了解ッ!」」」
先程とは違い、真剣な空気に変わる。
切り替えが早くて助かるな……。
ノーラもここにいたら問題ないであろう。
父上と我は5階層に降りていく──
広い部屋の中心地に道化の姿をしたボスがこちらを見据えて声を出す。
「ようこそ♪」
道化から挑発するような声色で言葉を発すると同時に凄まじい威圧が放たれ、その場に緊張感が走る──
さぁ──我も切り替えねばな。
父上のフラグを叩き折るか──
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