第35話

 我はアーク棒を大量に投げながら、し、ビームサーベルで撃ち漏らしたデーモンを殲滅しながら進む。


 結局、父上は我の無茶苦茶振りにドン引きし、途中から後方で指揮を取りながらアーク棒を使ってデーモンを爆破させている。


 我らはあっという間に3階フロアまで到着し、殲滅を終わらせる。


 やはり、罠と一緒にデーモンを殲滅するのが一番手っ取り早い攻略方法であるな。


 ダンジョンの壁も破壊出来たら一番早く攻略出来たのだが、威力が足りぬ。特大のアーク棒でも今度作るか……。



 そんな事を考えながら歩いていると、父上は4階層の入り口で一旦止まる。


「ヤバい感じがするな……──アーク、準備は良いか?」

「私は問題ありません。4階層は罠が無い代わりに魔物の危険度が跳ね上がりますので、皆は近寄られない限りはアーク棒で牽制をして下さい」

「「「はッ!」」」


 追加のアーク棒を配りながら言うと皆は勢い良く返事をする。




「では、進む──」


 父上の言葉に全員が頷き、4階層へ降りると──


 上位悪魔アークデーモンが大量にいた。


 昨日、根こそぎ狩り取ったはずだが復活が早いな……しかも、上位悪魔アークデーモンのみ──これは何かあるかもしれぬな。



 全員が息を呑む音が聞こえてくる。


 ジョイ以外はまだ若い。こんな討伐ランクAばかりの戦場経験は無いであろう……緊張しててもおかしくはあるまい。


 魔物はまだこちらには気付いていない。


「これはまた……厄介だな……。アークよ、本当に5階層はボスだけなんだな?」

「えぇ、5階層はだだっ広い空間にボスが1匹だけのはずですね」


 後でもう一度確認してみるか。


「はぁ……しかし、ここで温存していると全滅するな……本気出すか……」

「そうして下さい。私は皆のサポートに回ります。もう一度言いますけど、他の者はアーク棒で牽制を中心にして下さい。下手に手を出すと死にますよ? もし近付かれたら複数人で必ず迎撃して下さい」

「「「了解」」」


 ここの魔物をまともに相手出来るのは今いるメンバーでは我と父上、及第点でジョイのみだ。


 我が領土を将来守ってくれる者達をこんな所で犬死にさせたくはない。



 父上の雰囲気が変わる──


「──『血脈相承けつみゃくそうしょう』──」


 父上は異能を使用すると──


 目は充血し、真っ赤になり、全身の血管が浮き出る。


 父上の通常時の強さでは上位悪魔アークデーモンを数体相手にするのがやっとであろう。


 丁度良い。異能を使用した父上の力がボスに通用しそうかどうかを見極めさせてもらう。


「行くぞッ──」


 父上はそのまま、我が身体強化時並の動きで上位悪魔アークデーモンの首を狩り取ると同時に開戦する──


 他の者達もいっせいにアーク棒を投げて牽制し、我も近付く上位悪魔アークデーモンを一刀両断にする。


 父上を見ると、たまに攻撃を受けておるが──血は噴き出さず、そのまま使いる。


 この異能は確か──血を操作し、継承する事が出来る異能と聞いておる。


 物語でアークはこの力を使って戦っていた。血を大鎌や他の武器に変えたり、止血したりしてな。


 血が流れぬアークはどんな攻撃を受けても立ち止まらない──


 故についた二つ名は【死神】だ。

 父上は【鮮血】と呼ばれておったが、おそらく血をそのまま操作して殺す様からであろう。


 と言っても、今の父上を見るに──アークはそこまで使いこなしてはいなかったように思うがな。


 思っておった以上に動きが速すぎる。何か他にもあるのかもしれぬな。



 ここまで動きが違うのであれば物語のアークはもっと強くても良い気がする……説明を聞く暇も無く継承をしたからという可能性が高いか?


 今の父上の方が、物語のアークよりもおそらく強いぞ?


『解析眼』で調べるか……。

 異能は『鑑定眼』では名前しかわからぬ上に、この世界の『鑑定』スキルでは表示もされぬようだからな。


 我は『解析眼』を使って異能の詳細を見る──



 ふむ、なるほどな……継承した側は間違いなく死ぬのは確定であるな。


 なんせ、継承の際に己の血を半分以上与える必要がある。


 ……祖父は歴代最強と呼ばれた割に、我が生まれる前に死んでいたのはこのせいか……。


 他には──なるほど、自力が強ければ強い程、効果が見込める異能か。筋肉に血を巡らせる事で爆発的な身体強化の効果があり、スキルを使う事によって、更に効果は膨れ上がる──か。


 父上がスキルを更に使えばボスに通用するやもしれぬな。


 とりあえず納得は出来た。

 物語のアークは自力が無かったのと、スキルが無いから、ここまでの効果は期待出来なかったのであろう。


 異能を使った父上なら我と良い勝負が出来るであろう。それでも我よりまだ弱いが……。



 仮に継承を受けた場合──鍛錬を続けた我ならば物語のアークよりも期待出来るかもしれぬし、死に辛くなるのはありがたいが、父上に死んでもらっては困る。


 死なせぬように立ち回らなければな。

『解析眼』のお陰で最悪──継承をされた時に父上を生かす道筋は掴めた。



 ノラはどうしておるのか見ると──


 うむ、昨日と同じようにアーク棒で牽制しておるな。一番弱いからな。このまま隠れて牽制に専念してもらおう。


 他の者達は──


 近付かれてもジョイの指示に従いながら、各々の特性を活かした足止めと攻撃の連携が出来ておる。


 こやつらはまだまだ発展途上──


 先が楽しみであるな。



 さて、もう一度『千里眼』でボスを確認しておくか……見れるかわからぬが、既に物語のシナリオから外れておるし、何でも良いから情報が欲しい。


 視界に道化が映る──


 ──ふむ、今はレジストされておらぬな。


 我と目が合っておる事から気付いておるのは間違いない。『解析眼』『鑑定眼』を使用するが、レジストされておるな……。


 道化は仮面の下半分を外して口元を吊り上げながら動かす──


『こ・ろ・し・て・あ・げ・る』


 挑発か。



 最悪の事態になれば、我が禁忌を破って本気を出すしかないが──使えば弱体化する上に副作用がな……屋敷に戻る事を考えると禁術を使ったら即座に倒さねばならぬな。



 周りも頑張っておるし、我も負けてられぬ──



 次々と上位悪魔アークデーモンを一刀両断にしていく──



「さ、さすが……レイモンド家──これが国最強──」


 そんな誰かの声が聞こえてきた。

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