第44話

 さて、ダンジョンから出たのはいいが──


 父上がまだ他の兵士に何やら話しておるな。


 おそらく、指示を出しておるのだろう。もう少し待って、終わらなければ連れ去るか。今の我は大人になっているので人前に出ると色々突っ込まれそうだからな……。


「アーク様ッ!」


 この声は──


「ノーラか。もう落ち込んでおらぬのか?」

「はいッ! いつまでも落ち込んだままだとお父さんに怒られますからね……」


 ジョイは死んだ事になっている……身内が亡くなったというに……強い子だ……。


 まぁ、ジョイは近くにおるのだがな……。


「アーク様……その肩に止まってる鳥は?」


 うむ、それがジョイだな。


 あの後、このまま出たら拙いと思って色々と試したところ──


 我の体内に入れるし、動物にも姿が変えられる事が判明した。


 血の色の動物であるが、眷属と言えば納得してもらえるだろう。


 当然ながら人型の時は顔でバレるので父上がやったように血で甲冑を作って纏うように伝えている。

 どうやら我の血を媒体に眷属化している為か、異能である『血脈相承けつみゃくそうしょう』を多少使えるようで武器も作れるようだった。


 ちなみにジョイだけが外にいる理由は簡単だ。娘の姿が見たくて鳥の姿で肩に乗っておる。


 ちなみに他の者は──


(これがアーク様の中……とろけそうです)

(アーク様と一つになれました)

(あぁん、最高です……)


 などと体の中で言っておる……。


 この一件が終われば是非、外に出そうと思う。


(え〜嫌なんですけどぉ?)


 ……なんというか……コミュ障の我はこやつらとずっと話すのはハードルが高いのであるッ!



 おっと、ノーラに返事をせねば。


「この鳥は我の眷属だ。これから屋敷に戻らねばならぬからな。戦力は多い方が良い」


「そうなんですね。……お父さんは……最後、何か言っていましたか?」


 ジョイ──何かノーラに伝えたい言葉はあるか?


(……では──いつまでも見守っていると、伝えて頂けませんか?)


 ──わかった。


「ジョイは『いつまでも見守っている』と言っていたぞ?」


 実際の所は死んでも存在は消えておらぬ。しかし、知らぬノーラからするとニュアンス的に死霊となって見守っていると勘違いされてもおかしくないな。


(許可さえあればいつでも娘の近くにいたいです)


 これは……ストーカーというやつでは? まぁ、親子なのでセーフか?



「そうですか……看取って頂きありがとうございます。これから領土へ戻ると聞いています──僕も何か役に立てませんか?」


 ノーラの表情はかつてのフィーリアと被る。


 おそらく、我を刺した償いをしたいのであろう。


 だが、連れて行くのは父上だけで十分だ。


 だが──ノーラにもがある。それを頼もう。


「──ノーラ、お主にを与える」

「──はいッ! なんなりとッ!」

「うむ、では──ソアラに『すまぬ、急用で手料理は食べれぬ。また今度にしてくれ』と伝えてくれぬか?」

「わかりました!」

「うむ、我らは急いで領土に戻らねばならぬからな。お主は罰が与えて欲しいのであろう? 屋敷にいる我の専属メイドと同じような顔をしておる」


 念の為に確認を取らねばな……。


「そうですね……確かに罰が欲しいです……僕がやった事は洗脳されてても許される事じゃありませんので……」


 うむ、やはり特別任務を任せよう。


「そうか……ならば──、ソアラが料理を既に作っておったら勿体無いのでが代わりに食べておいてくれぬか?」

「それは罰ではありませんが……アーク様がそれを望むなら任せて下さいッ! でも、どうせなら僕も料理の練習をソアラ様としたいです!」

「……そうか。それも良かろう。では、もうすぐ出発するのである。また会おう」

「はいッ! 僕の料理も良かったら食べて下さいねッ!」

「うむ、楽しみにしておるぞ」


 うむ、これでもしソアラが料理を作っておったらノーラが食べてくれるであろう。罰にもなるし、我、ナイス判断ッ!


 これで今回はソアラの飯を食うフラグは折ったようなものだ。


 仮に今後2人が作る事になってもソアラの料理よりはノーラの方が美味いはずだ。


 ノーラの料理を食べながらソアラの料理をこっそり収納すれば問題ないであろうッ!



(アーク様……)


 ジョイか……すまぬな。さすがの我でもソアラの手料理は無理なのだ。


(いえ……ノーラは破滅的に料理が出来ないのです……アーク様の思う──ソアラ様と引けを取らないぐらいに……)


 …………今、フラグを折ったはずなのに──


 そのフラグが最強の金属であるオリハルコンで再構築された気がしたのだが?


(……近い将来に間違いなく──2人の最強の手料理を食べる事になるかと……)


 …………なんだと……。




「アーク」


 折れぬフラグがあると知って口元が引き攣っておると、父上が我を発見して声をかけてきた。


「お待ちしてました父上。では向かいます──」

「うお!? これは血か? 浮いてる?!」

「移動しますので話すと舌を噛みますよ?」


 我は血で父上を半円状に囲み、飛翔魔術を使う──


 今の魔力量では転移魔術を使えぬからな。


 音速を超えるつもりなので父上が死なぬように血で囲んでおる。完全に囲むと間違って取り込まぬか心配なので半円状にしておる。


 我が大人の状態を維持出来るのは残り30分ぐらいか。


 それまでに移動して決着をつける。


「では、行きます──」

「うおッ!? なんだこれは!? 飛んでる?!」


 父上が子供みたいにはしゃいでおるが、無視だ。



 音速を超えた速度で移動しながら魔物を討伐し、血と魔力を回収しながら進む──






 途中──『千里眼』にレイモンド領から1人で逃げ出しているを発見する。


 何か独り言で当たり散らしているので、唇を読み取る──


『糞ッ! 歴史通りに進んでいないじゃないかッ! 何故、『魅力』がレジストされるんだ?! あの胡散臭い道化に任せて逃げる事になるとは……屈辱だ……──全てアークのせいだッ! あいつさえ消えれば全て俺の思い通りになるのにッ! 絶対殺してやるッ!』


 ふむ、発言から──


 こやつもの可能性が高いかもしれぬな。歴史とはおそらく本編の事を指しているのだろう。


 王太子は道化から物語を歴史として教えられたのだと推測する。


 それにしても──何故か腕は再生しておるな……何か特別な魔道具でも使ったか? それとも道化が治したか?


 まぁ、良い。


「ふむ、良い機会であるな。父上、このをつけて下さい」


 この仮面は──日本の文化を学んだ時に作ってみた『ひょっとこ』とかいうお面だ。


「なんだ……この趣味の悪い仮面は……お前──ネーミングセンスだけでなく、美術センスも無いぞ?」


 失礼なッ!


「……これはとある国の民族が死者を弔う時に付けるお面です。今から死んだ者達の弔いを行いますので早く付けて下さいッ!」


 嘘八百を並べて父上を説得する──


「?? 今から弔うのか? しかも、こんなふざけた仮面をつけて? 「早くッ!」──わ、わかった」


 父上が付けたのを確認し、我もひょっとこ仮面を装着する──


 王太子が目視出来る距離になると向こうも我らに気付く。


「──敵か!?」


 王太子は迎え撃つ気で剣を構える──


 まぁ、敵と言えば敵で間違いないな。


 我は拳に血でトゲトゲのグローブを作成する──


「──とりあえず利子分の借りは返すぞ?」


 そう言いながら我は王太子とすれ違いざまに顔面を全力でぶん殴ると木々を薙ぎ倒しながらどこかに消える──



「けひゃ──」とか聞こえてきたが、気にせずそのまま進む──


 何を吹き込まれたかは知らぬが──


 ミラ達を危険に晒し、ノーラを殺そうとし、ジョイ達が死ぬ事になった元凶には然るべき罰が必要だ。


 それに最強の料理を2を食う事になるかもしれぬ恨みもついでに込めておいた。


 故に──


 手加減など全く無いッ!



 しかし、殴ってから気付いた……。


 ……しまったな……身体強化もすれば良かった……。


 まぁ、今は時間が無いからこれで今回は勘弁してくれる。


 それにこちらは仮面をしておるし、成長して声も変わっておるから万一生き残ったとしても証拠は無いはずだ。


 あの感じだとおるだろうがな。


 さすがは【】だ。


 音速を超えた速度が乗っておるのに死なぬとはな。中々しぶとい。


 何か咄嗟にスキルでも使われたのか? それとも魔道具であろうか?



「なぁ……今の殿下じゃなかったか?」

「さぁ、私には賊にしか見えませんでしたが?」

「……そうか……仮面をするってそういう意味かよ……」

「まぁ、ノーラが私を刺した剣の事は聞いているでしょう? 私を殺そうとした罰ですよ。それさえ無ければ誰も失わずに勝てたかもしれないのです。それに殺してませんから大丈夫ですよ」

「まぁ、気持ちはわかるがな……。殺してないって……木々が折れて進んでたが?」

「あれぐらいじゃ、王太子は死にません」

「…………いや、普通死ぬだろ……」

「……さて、到着です。私は屋敷に向かいます。父上は外のデーモンをお願いしていいですか?」


 領土の街に到着したのでしれっと、父上からの話を無視して指示を出す事にした。


 見た感じ──兵士達が所持しているアーク棒も残り少ないから父上に向かって殲滅してほしい。


「わかった。中には──あの道化がいるんだろ? 任せたぞ?」


 そう、そして何より屋敷におる道化は我にしか相手が出来ぬからな。


「任せて下さい。瞬殺してきますよ! あっ、援軍を直ぐに送るので先に殲滅を開始して下さい。では後程!」


 父上は街を守る為に走り出す──



 父上だけではあの数は少し厳しいだろう。


「──血十字軍ブラッドクルセイダーズよ──街を守れッ!」


「「「御意ッ!」」」


 こやつらがいれば余裕で終わるはずだ。



 さて、我も動くか──


 我は血を水のように操り──


 屋敷に群がるデーモンを飲み込んでいく──

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