第43話
「全員意識はあるか?」
我の問いに全員が頷く。
皆が死ぬまで残り10分を切っておる。もう話すのはかなり辛いであろう。
「──お主らは助からぬ」
「「「…………」」」
我の容赦ない言葉に、その場は沈黙が支配する──
皆も助かるとは思っていないようで表情は変わらない。
その顔はどこか誇らしげだ。
更に我は言葉を続ける──
「──だが、一つだけ生き残る方法がある。我の眷属になるならば存在はなくならぬが、人としての一生は終わってしまう……ここで死ぬか、人外となり──日陰者として生き残るか──決めてくれ」
眷属として──体を作り替えれば生き残る事が出来る。
初めて行うが──クロ丸やシロ丸を作った時のようにし、そこにこやつらの魂を我の血と魂で繋げた状態で混ぜるだけだ。
理論上は問題無い。
このまま死ぬか──我と共に生涯を共にするかだ。
生き残っても、人として死ぬ上に──日陰者として過ごす可能性も高い。
残酷な選択肢だと思うが──
我にはこれ以外に生かす術は思い浮かばぬ。
このまま死ぬ事を選んだとしても──
我の為に命を賭けてくれた者達の事は決して忘れはしない。
出来れば──共にいたいがな……。
「……眷属になったら──アーク様と一緒にいれるんですか?」
口を開いたのは双剣使いのフェネッカだ。
「あぁ……我が死ぬまで一緒だ。血と魂により我とお主らは繋がり──命を共にする。ただ、生き残ったとしても存在を公にする事は出来ないかもしれない……」
「──なら眷属になる……どうせなら結婚より強い絆で結ばれたい……」
「我が責任持って、生涯を共にする事を誓う」
「えへへ、なんかプロポーズされちゃった♪」
プロポーズ? まぁ、確かにそんな感じの言葉ではあるが……。
「私もなる……アーク様と一緒なら役得だよね? 私の鎖で束縛するんだもん」
次に声を上げたのは鎖使いのリーリア。
「人じゃなくなっても──アーク様が責任取ってくれんでしょ? なら私も眷属ってやつになる……」
「……私もなるよ……結婚よりも強い絆っぽいしね!」
大斧使いのティナ、大槌使いのメアも続けてそう言う。
「一緒にいたい……」
「ずっとお守りします……」
弓使いのリーゼロッテ、精霊使いのルカも短いながらも同意する。
「家族みたいなもんだよな? 私もなる」
「ですわね……当然、私もなりますわ」
武道家のロッカ、槍使いのクレアも皆と同じ返事をする。
正直、我が初めから本気を出しておればこんな事にはならなかった……認識の甘さが招いた結果だ。
だが、それでも──
このように言ってもらえるとは思っておらぬかった……。
会って話したのは今回のダンジョン攻略が初めてだったが、そこまで我に好意を持ってくれておったとは……。
母上の教育のお陰か?
皆の想いをこんな形でしか返せぬ我を許してくれ……。
「アーク様と結ばれたら──クレイ様やミリア様がある意味本当の親になるんだよね?」
「「「……確かにッ!」」」
「それより──フェネッカだけプロポーズされてズルいッ!」
「「「そうだそうだ」」」
……こやつら……本当に死ぬ寸前の者達なのかと疑うぐらい元気だな……。
術を施せば人としての命は失う──まぁ、それぐらい構わぬだろう。
「──お主らと生涯──我の命が尽きるまで共にいる事を誓う」
我の言葉に皆は笑顔を浮かべる──
さて、残りは──
「──ジョイはどうする?」
「私は男ですが、よろしいのですか? まさかアーク様は両刀使いとか?」
揶揄うように言うジョイ。
「馬鹿者が。お主も我や父上の為に命を懸けて立派に戦ってくれた……人ではなくなるが──我と共に来ぬか?」
「そう──ですね……正直、娘の成長をまだ見ていたいです。日陰者でも遠くから見るぐらいは良いのでしょう?」
「うむ、いつか必ず再会出来る日は訪れる。その日まで我慢はしてもらうがな……」
ジョイは笑みを浮かべる──
すまぬな……今この事を明かせば──我は完全に魔王認定されるやもしれぬ。
そうなれば最悪、物語と同様に領土を巻き込んで国と対峙する事になる。
それだけは避けねばならぬ。
だが──いつか必ずや再会させてやる。
我も覚悟を決めよう──
こんな
まぁ、後悔はしておらぬから構わぬ。
「──日陰者となるかもしれぬが本当に良いのだな?」
再度、確認を取ると頷いて返してくれた。
もう時間もない──
「では──始めよう」
我は予め用意した魔法陣を大量に展開していき──
膨大な魔力を込めていく──
媒体は有り余っておる血で良かろう。
我は目を瞑り集中する──
────
────────
────────────
「──上手くいったな──」
我が目を開けると──
皆の体は少し赤黒くなり──
胸には血で出来た十字が刻まれていた。
我の血を媒体に体を作り替えるのは成功したようだ。
「──お主らはこれから『
9人しかおらぬから軍はおかしいが、こやつらは現段階で父上並に強いのはわかる。軍勢並に強いという事にしておくか。
「「「はッ!」」」
膝を曲げて跪く
……何故?
「何故、跪く?」
「いえ、魔王様に畏れ多いです」
我はジョイの言葉に疑問符を浮かべる。
「……我は人だが?」
「実はアーク様と繋がった時に……アーク様の情報が……入ってきまして……」
……なるほど、魂も繋がっておるからな……前世の事も全てバレたのだろう。
「──我は元異世界の魔王だ。今はただの人である。お主らは眷属ではあるが──そのような態度はいらぬ。ただ、この事は他言無用だ。わかったな?」
「さっすがアーク様ッ! 話がわかるねッ!」
「「「うんうん」」」
「誰も知らないアーク様の秘密知っちゃった♪」
「繋がりを凄く感じる〜」
「大人のアーク様、超格好良い……」
「ボッチなアーク様には私達がいますから安心して下さいね?」
ジョイ以外が一気に話し出す──
魂で繋がっておるから『畏怖』も効果が出ておらぬだろう。怯えや恐怖は無い。
なにより、前世の事を知ってもこやつらは変わらぬ事が何より嬉しい。
ただ──
「──我はボッチではない」
ソアラもおるからなッ! そこだけは譲れぬッ!
「「「またまた〜」」」
揶揄うように言われるが、悪くない。
「アーク様」
「ジョイ、どうした?」
「ありがとうございます」
ジョイが我に頭を下げると──
「「「ありがとうございますッ!」」」
他の者達も頭を下げる。
「構わぬ、我の命尽きるまで共に歩もうぞ──」
我は神に目をつけられておる。
今後もこんな形で命を狙われるかもしれぬ。
巻き込んだ事は申し訳なく思う──
「アーク様は──もう1人じゃありません。我々が必ずやお守り致します。フラグというものは、折まくってなんぼでしょ?」
──!?
ジョイの言葉に我は心を読まれたかと思い、驚く──
「──なるほど……我らは繋がっておるからな……思考が読めるのか……」
「えぇ、断片的ですが何となくわかります」
「そうか……」
「──我々が最後までお付き合い致します」
「そうだよッ! 私達がいれば王太子も神も全部ぶっ飛ばしてやるんだからッ!」
フェネッカの言葉に皆も頷いている。
「あぁ、よろしく頼む──」
そうか──我はこの運命と1人で戦わなくてよいのか。
自然と笑みを浮かべてしまう──
「あぁ〜ッ! アーク様がデレたッ!」
「デレておらぬわッ!」
「今度はツンデレだぁ〜ッ!」
さて、さっさと屋敷に戻らねばならぬが──
このまま行けばこやつらは絶対バレるな……なんとかせねば……。
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