第17話

 盗賊を討伐した後はけっこう色々とあったが、一つ一つ問題を解決していった。


 まずは生き残った村人を広めの空き家まで案内し、仕事を探して貰う手筈を整えた。


 その後は父上から頼まれておった爆弾を模して作った使い捨て魔道具の作成作業に入る。


 材料のメインとなる魔物の核である魔石は今まで訓練用に倒した物が大量にあるからほぼ元手ゼロで損をしない。


 そこに日本語を混ぜた魔法陣を転写して、更に複製防止の為に処理した後は既製品の棒に詰め、誤爆せぬように安全装置を付けて完成である。


 おっと、忘れておった。我の魔力を込めた魔石が無いと発動せんようにしておこう。


 盗賊を倒した時よりも更に威力を高め、我の魔力が篭った魔石さえ持っておれば誰でも使える特性の爆弾棒だ。


 名付けて『アーク棒』だ。父上からセンスの欠片もないと言われたが、聞かなかった事にした。


 肝心の威力だが──


 丁度良くドラゴンが街にやって(襲って)きたので試す為に使ってみた。


 すると──なかなかのものだった。


 爆発規模も影響範囲も広くなったアーク棒は一本でも、この世界の上級魔法に匹敵する威力だった。


 それが魔力を込めるだけで連続で撃てる。


 間髪入れずに投げられるアーク棒達にドラゴンは涙目で叫びながら帰っていった。


 それを見ていた父上と兵士は唖然とし、我は誇らしげな顔をする。


「なぁ、アーク……あれはいくらなんでも……」

「まぁ、威力は十分ですね……」

「……あれを1ついくらで売る気なんだ?」

「まぁ、ドラゴンすら撃退する魔道具ですからね。しかも数があればどんな敵も蹴散らせますよ? その辺を考えた値段でよろしくお願いします」

「……お前……他の貴族から何を言われるかわからんぞ?」

「……身内割引するので面倒臭くならないようにして下さい」

「……わかった。その代わり──これは絶対に俺以外に売るなよ? 後、こういうのは作ったら売る前に俺に報告してくれ」

「……仕方ないですね……」


 とまぁ、こんなやり取りがあって、我は少しお金持ちになった。


 レイモンド領土の安全面は大丈夫になったが、一時的に財政難になったのは言うまでもなかろう。




 そして、フィーリアも不慣れではあるが、最近では我の専属メイドとなり仕事をこなしておる。


 気になる事が一つある。

 フィーリアに呪いが発動しておるのかよくわからぬ……なんせ表情がそんなに変わらぬからな……。


 とりあえずクール過ぎて表情が読めん。まぁ、たまに褒めたりすると口元を吊り上げて笑うように見えるから、そこまで嫌なわけでもなさそうだが……。


 これが日本で言う──『クーデレ』という奴なのかもしれぬな。



 そんなフィーリアがメイドになって変わった事がある。


 この間、フィーリアから──


「もっと、使用人とお話しされてはいかがでしょうか? アーク様に皆さんお菓子を頂き感謝していますよ」


 ──と言われたので我は少し勇気を出して、声をかけるようにした。


 すると、使用人は脅えながらも返答してくるようになった。なるべく負担をかけないように我もなるべく短い時間で返すようにしている。


 家族以外の者と少し話せるようになったのは嬉しい。怖がらせぬように自分から距離を置いていただけだがな。


 それと、前世の部下が「差し入れをすると喜ぶものです」と言っていたのでミラの残り物を差し入れしていたのも良かったのかもしれぬ。


 こうやって、使用人との仲を取り持ってくれたフィーリアには何かしてやりたいとは思うが、何かなかろうか?


 その時──報告書が目に入る。


 内容はフィーリアの村の者達の事だ。この件に関しては父上に掛け合って我が行う事にしておる。


 報告書に目を通す限り、大半の者が新しい生活に馴染めていないようだった。


 仕事と言っても、今まで農村で生活してた者達だ。出来る事があまりないのかもしれぬな……。


 賃金の低い仕事しかないのかもしれぬし、娼婦もあるが、進んでやりたい仕事ではないだろう……。


 我は考える──


 フィーリアの村の者達ぐらいは何とかしてやれぬかと。


 そして、目の前でシュークリームを頬張るミラを見ながら思い付く──スイーツ店を開こうと。


 我には金と『ネット検索』でレシピもある!


 仕事が見つからぬなら、こやつらを我が雇えば良い。


「ミラ、これが街に売っていたら嬉しくなかろうか?」


「それは嬉しいのですッ! お小遣いで買いまくるのですよ!」


 ふむ、ならば後は行動のみだ。


「うむ、ではミラの為に我が店を作ろうぞッ!」

「やったのですッ! でも……」


 ミラは嬉しそうにするが、口籠る。


「どうしたミラ?!」

「たまにはお兄ちゃんのスイーツが食べたいのです……」


 悲しそうに俯くミラは我の手作りが食べれなくなると思ってしょんぼりする。


 な、な、なんと可愛いのだろうかッ! 妹とは良いものだなッ!


 我、萌えッ!


「当然であろうッ! 我はミラの為にスイーツをこれからも作るのであるッ!」


 そんな一幕がミラとあり、我は村人達がいる場所まで向かう。


 フィーリアも連れて行こうと思ったが、休みを与えていた事を忘れていた。



 だが、到着して家の中に入ると──


 ──フィーリアがいた。


「あれ? フィーリア? あぁ、そういえばフィーリアもこの村の一員だったね」


 ここにいて当然か。


「アーク様!? どうしてここへ!?」

「いや、直接皆の様子を見に来たのと──今日は追加で決まった、ここにいる者達のを伝えにね」


 この時、何故か皆の表情が強張る。

 呪いが発動したのだろうか?


「処遇ですか?!」


 フィーリアのその言葉に誤解を与えた事に気付いた我は弁解し、スイーツを出して店の説明を簡単にする。


 皆の返事は了承であった。


 フィーリアも不器用ながらも笑っておる。


 そして、フィーリアを連れて雑談しながら帰る──


 その時、ふと思う。


 説明中──あんまり怖がられてなかったのでは? と。


 フィーリアに聞くと「怖いわけがありません」と強めの口調で言われる。


 我はつい嬉しくて笑ってしまう。


 フィーリアが来た事によって、我も少しずつ変化しておるのかもしれぬ。


 他人と関わる事を諦めておったが、悪くない──


 そう思った。


 村の女子おなご達もたくさん悲しんだ分、これから良い事があると良いな──


 女子は笑顔が1番である。

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