第11話

 ソラは何を恐れておるのだろうか?

 たかが盗賊であろうに……。


 そんな事を思っていると父上が話し出す。


「100人が問題ないか……さすがだな。そういえば情報を話していなかったな。事前情報ではあいつらは昨日の夜──我が領土の村を襲って今は休んでいるはず。それとソラは少し気が弱いが、それなりに強い」


 なるほど、寝起きの討伐ほど簡単な物は無いな。


 我が事前情報を聞いておると、何故か驚いた顔をしておるソラ。

 それなりに強いと言われても──この調子でこやつ本当に戦えるのか?

 今もかなり震えておるぞ?

 我が怖くて震えてるわけじゃなかろうな?

 それなら我、ショックなんだが?


「わかりました」

「アークは初めて人の命を奪う事になる。慣れないかもしれないが、容赦なく殺せ。その内慣れる。もしもの時の為に俺達もいるし、危なくなれば参戦するから安心しろ」


 我とソラは頷く。

 更にソラの顔色が悪いが気にせずにいこう。


「では、ソラよ。離れるでないぞ?」


 我は一気に洞窟まで近寄り、見張り2人の声を上げさせる間もなく剣で首を斬り落とす。


 ソラの顔色は完全に顔面蒼白だな。



「しかし、この程度か……やはり盗賊は盗賊か……弱いな……」


 そんな事を呟くと、後ろの方から父上とジョイの話し声が聞こえて来る。


「ほほぅ、アーク様は聞いていた以上にかなりお強いですな。しかも初めて人を殺して顔色一つ変えないとは……レイモンド家は将来安泰ですな。それに比べて我が子は……2回目だというのに……」


「ジョイ、ソラが普通だぞ……俺らも初めて人を殺した時はビビっていたじゃないか。本格的な戦闘になればソラもきっと動く。それよりもアークは初陣のはずなんだがな……動じる気配が全くない。アークはスキルが得れないが、既に私に近い実力がある。させれば間違いなく、歴代最強となれるだろうな」


「これ以上強くなるとは……末恐ろしい話ですな」


 ソラは2回目なのか……まだ慣れておらんのかもしれんな。まぁ、吐かないだけまだマシであろう。


 それより気になるワードがあったのだが……とは何であろうか?


 そういえばがあったな。それかもしれぬな。



「ソラよ、無理しなくて良いぞ? キツいならそこで休んでおけば良い」


「い、いえ、お供します」


 いや、正直邪魔なんだが……まともに動けるとは思えんし。しかし、こやつが来てくれんと進むのに待ったがかかりそうだしな……一応聞くか。


「父上、ソラを置いて行っても構いませんか?」


「ダメだ」


 やっぱりそうなるか……仕方あるまい。


「……ではソラが復活したら行きます」


 少し時間もあるし──

 一応、中の様子を見ておくか……。



『千里眼』──



 うむ、久しぶりに使ったが、よく見えるな。


 洞窟内にいる盗賊はほとんどが寝ておる。盗賊の癖に身なりが良いのが引っかかる。


 なにやら──きな臭い。


 やはり、女子おなごばかりが捕まっておるな……だが、幸い──酷い目にあってはおらぬ。


 ん? 紅い髪の女子──……やはりか……。

 物語で学園に入った後、しばらくしてからアークにとしてやってきた子だ。


 いや、まだ確定するには早い。会って確認せねばな。仮に彼女がそうだとしたら暗殺フラグはへし折らねばならぬ。



 ふむ、女子達を逃さぬように見張っている盗賊がおるな。


 何やら喋っているし、唇を読み取るか──


『俺も寝てぇな』

『まぁ、後1時間もしたら交代だ。頑張れ。しかし、昨日のは疲れたな。後は報告したら通常業務に戻れるぞ』

『そうだな……しかし、を襲うと聞いた時は肝が冷えたが、案外上手くいくもんだな』

『だな。レイモンド領の兵士は強い奴が多いから相手にするのは面倒だったが、が上手く魔物を使って離れさせたな。──!? 洞窟の表に4人いるな……どうやら敵襲のようだな。全員起こせッ』

『ちっ、マジかよ……これで【鮮血】のクレイだったら最悪だな』



 ──ふむ、父上は大層な二つ名だな。


 しかし、我らがいるのがバレたか……気配に敏感な奴がおるとは──中々優秀な盗賊だ。


 それにか……。


 手際の良さと唇を読み取るに、こやつらはどこかの私兵の可能性が高い。


 敵は同国か他国の貴族あたりか? それとも組織か?


 この事を父上は知っておるのだろうか?


 どこの国でも腐った連中というのはいる。我が統治していてもこの手の輩はおったからな。


 ふむ、他にも起きている盗賊がおるな……。


 そいつらも何か話しておるので一応、唇を読み取る事にする。


『しっかし、逃げる親子を殺す時が一番楽しいなッ!』

『そうだな。あの必死に逃げる姿や叫び声が最高なんだよな』

『そんで、最後はお決まりのパターンだろ? この子だけは助けてーってッ!』

『そうそう、揃いも揃って同じ事しか言わねーなッ! もちろん答えは『嫌だ』だけどなッ!』



 その瞬間、我は拳に握り込む──


 ポタポタと握りしめた拳から血がしたたり落ちる。


 慈悲は与えぬ。皆殺しだ──


「どうしたアーク!?」

「なんという凄まじい圧力と殺気──」

「あわわわわッ」


 もうすぐ、盗賊が表に出てくる頃だな。


 あぁ、ダメだ。もう待てぬ。


 我はもう我慢の限界だ。特攻して一人で片付けたい。

 しかし、ここで暴走すると今後に差し支えが出るかもしれぬ。


「ソラよ、選択肢を与える──見学するか戦うか選べ。敵に気付かれた」


「──戦いますッ!」


 ソラはやる時はやる奴だったか。


「うむ、では死ぬなよ。父上達は予定通り見学でもしていて下さい。こやつらは私達でしますので」


 続々と盗賊が出てくる──


「敵襲ッ! ──ぐあぁッ──」


 我はにする為に両手足を切断していく──



 久しぶりにたぎるな──


 糞共を殺すのは──


 盗賊であれ、どこぞの私兵であれ──何人なんぴとたりとものがさぬ。

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