第10話

 しばらく父上に付いて歩くと盗賊の拠点らしき洞窟付近に到着する。


 少し離れた場所に2人の男性がいた。1人は大人、もう1人は我と同い年ぐらいだ。


 父上が近くまで行き、話しかける。


「ジョイ、待たせたな」

「──クレイ様お待ちしておりました。急務でしたので、私と子供しかおりません」


 ジョイと呼ばれた男と、その子供は父上に気付くと片膝を着いて受け答えをする。


「そうか、それも仕方ない。俺達だけで殲滅するぞ。あそこの洞窟にいるのか?」

「はッ! お任せ下さいッ! 確認した所、情報通りです」

「わかった。今日は息子を連れて来ている。今日が初陣になる」


 2人の話から、我ら4人で協力して盗賊を対処するようだ。


 父上に促されると、2人に注目されたので自己紹介する事にする。


「アーク・レイモンドです。今日はよろしくお願いします」

「これはこれはご丁寧に。私はジョイ・ランベルトと申します。爵位は男爵です。敬語や敬称は不要です。本日の任務はアーク様と同年代である我が子のソラも一緒に当たらせて頂きます。ほら、ソラ」


 ジョイの掛け声で栗色短髪の男──ソラが話し出す。


「ア、ア、アーク様、わ、わ、わ、私はソラ・ランベルトと、も、も、申します。よ、よ、よ、よろしく、お、お、お願いします」


「う、うむ」


 ソアラ以外に久しぶりの同世代かと思って期待したが──ビビり過ぎであろう……。


 我、凹んだ。


「アーク様、申し訳ありません」


 少し引き攣った顔をしているとジョイが謝罪してきたので手で振って応える。


 ランベルト家はレイモンド家の派閥の一つでこうやって任務を手伝ってくれる家系と父上から以前に聞いた事がある。


 しかし、国防を担う家系の割に──


 息子の方はビビりすぎではなかろうか?

 今も女子おなごのようにブルブルと震えておるぞ? なよなよしよって……こやつ実は女子ではあるまいな?


 ──確か物語ではランベルト家は表記されておったな……ミラと一緒に我の敵としてだが……そこにソラの名前はなかったはず。


 ソラか……隠れキャラというやつであろうか?


 物語が始まる前に死んでおるのだろうか?


 ……情報が足りなくてわからぬ。やはり父上の死亡が関係しておるのか確認が必要やもしれぬな。


 だが、今はそんな事より──盗賊の討伐だ。


 今回は対人戦のリハビリも兼ねて我1人でやりたいのだがな……それに村人の無念と我の鬱憤を早く晴らしたい。


「父上──盗賊の討伐は私一人で行ってよろしいですか?」


「そうだな……敵は少し多いが──ただの盗賊だしな……アークなら問題ないだろう。好きにやれ。ただ、ソラは連れて行け。もしもの時は俺達がしっかり尻拭いをしてやる。それより覚悟はあるのか?」


 おっ、言ってみるものであるな! お目付け役はおるが、大した問題ではない。守りながらサクサクヤレば良かろう。


「はい、問題ありません。レイモンド領土で好き勝手に暴れる盗賊などに容赦はしません。では──正面突破致します」


 好きにやっていいのであれば──正面突破。

 これしかあるまい。

 先程、索敵魔術で調べた感じだと敵は100人程だ。たかが、盗賊──大した事はない。



「え?」


 そんなソラの声が聞こえて来た。チラッ、と見ると頬を引き攣らせ、顔色も悪かった。



 ◆



 僕はソラ・ランベルト。

 男爵家ではあるけど、代々、レイモンド家を裏から支えてきた古株の家系だ。


 今日は初めてレイモンド家次期当主であるアーク様と任務をする事になった。そのアーク様は初陣だ。


 正直、ここへ来るのが──かなり憂鬱だったりする。


 アーク様の事は王太子殿下の誕生日パーティで一目だけ見ているんだけど──


 挨拶をする事なく、僕はその場から逃げ出した。あまりに怖くてその場にいられなかったんだ。


 そして今日、任務を行う為に再び会うと、あの時の恐怖が蘇る。


 怖くて上手く話せないし、涙が出そうだ。

 父さんからは呪いのせいだと聞いているけど、わかっていても怖いものは怖い。


 そんなアーク様は何も情報を聞かずに正面突破をすると言う。


 死ぬ気かッ!? と思って──


 僕はたまらず声を上げてしまう。


「ア、アーク様、敵の規模はご、ご、ご存知ですか?」


「100人程度であろう。問題無い。殺せば良いだけだ」


 いとも簡単にアーク様は言う。


 確かに事前調査では敵は100人程と報告されているし、父さんが事前に調べても同じぐらいの人数だった。


 しかし……アーク様にとって100人の盗賊は問題ないのか? スキル無しって聞いてるんだけど!?


 しかも初陣で初めて命を奪うというのに平常心だ。レイモンド家ではそういう訓練も行っている?


 僕はまだ人の命を奪うのは慣れないな……でもあんな酷い事をする連中を許す事は出来ない。


 僕は覚悟を決めると、アーク様が──


「ソラよ。怖いならそこで見ておったらいいぞ?」


 そう僕に挑発するように告げる。


 口角を上げたアーク様はまさにのように見え──


 それと同時に盗賊は1人残らず全滅する──


 そんな予感がした。

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