第3話「クラス替えガチャSSR」(2)
「てまりんんんん! おっそい!」
「ごめんねぇ……! 今日も朝辛くて……」
そうなのだ。
普通逆なのでは──と思ったこともあったけど、
中学になった頃から
「てまりんが遅いからわたし、変な男に絡まれちゃった」
「えええ、大丈夫⁉ 変な男通報した⁉」
「うんん、まだ。今しようと思ったとこ」
そう言って、
「おいおいおい、マドカルちゃん本気で通報とかしないでね⁉ マドカルちゃんは芸能人だから真実味がありすぎるんだよ……絶対俺ら補導されるから……マジでやめてくれぇ……」
「え⁉ 変な男ってハルと
「……そう。てまりんがそう言うなら仕方ない。でも
「マネージャーはタイムパトロールの人なのか⁉」
柄にもなくツッコんでしまった。
「そうですが何か?」
「タイムマシンは存在したんだ……!」
そう──こんな感じで何故か僕だけに厳しい。そして謎に呼び捨て。
でも、
今もずっと
「えっと……ハルは昔からあたしと一緒にいるから未来の人じゃないけど……!」
「あらそう。てまりんが言うなら間違いない。訂正して報告するね。犯罪者だって」
「なんで⁉ 大丈夫! ハルはこれで意外と常識人だから!」
「むむ。てまりんが言うなら、まあ報告は見送ることにしようかな。あ、そうだ! 代わりにてまりんを要チェック人物として報告しておくね。てまりんも一緒にモデルになろ」
「ええっ⁉ あたし⁉ いや無理無理‼ スタイル全然よくないもん!」
「モデルって言う程スタイル関係ないよ。わたしもスタイルはどちらかと言えばよくないし。胸が大きすぎるから。というかモデルは可愛ければ大丈夫。てまりんは可愛い」
「うむ。俺も可愛いと思うぞ。
「僕も可愛いと思うよ、
いつの間にか、みんなで一斉に
「いやいやいやいや⁉ 何⁉ こわっ⁉ てか一体なんの話してるの⁉」
めちゃくちゃ照れていた。
顔も真っ赤を通り越して真紅。
きっと、こういう所がみんなに可愛いと思われるところだと僕も思う。
本当に妹のような存在だと改めて思う。みんなの妹──という感じかもしれない。
「いや、実は推しにどうしたら逢えるかって
と、
僕の親友は司会進行に向いているのかもしれない。そういえば
「へー、そうなんだ」
絶対今の
僕はわかるぞ。さっき褒められすぎて頭の回転力が落ちているのだ。
僕の幼馴染はとてもわかりやすい!
「そう。どうしたら
「へー、そうなんだ……え⁉ 諦めるの⁉」
「いや、待って。僕は絶対死んでも諦めないぞ‼」
どさくさに紛れてなんてことを言うんだ
「あらそう? じゃあちょっとはっきり言わせてもらうけど」
僕への視線はずっと冷たいままだった。そんな表情のまま
「
と強く言った。
その言葉はとても意味深で──僕の心に何故か強く刺さる。
「というか、そもそも
僕はこれに即答する。
明確な答えがある。
「僕は
「……ふーん、そう」
その顔で
「逢うことに意味があるの?
そこで
「逢ってどうしたいわけ?」
と平坦な口調で言った。
「……いや、えっと、それは──」
その
逢って──僕はどうしたかったんだ?
単純に逢いたかっただけ?
本当に付き合いたかったのか?
さっき、ふと僕は逢いたいなと願ったけど──僕にはそれに対する答えが、ちゃんとした僕の応えを、今、持っていないことに気付く。
「たしかに、逢うことが……応援になるわけじゃないとは思うし、付き合いたい……とかじゃないんだけど、やっぱり僕は本当に好きだし、好きだから逢いたいって気持ちになるんだと思うけど……」
僕はしどろもどろの返答しかできない。
「わたしなら逢いたいだけの人には逢いたくないかな。逢ってもつまらないでしょ」
「…………」
いつもなら完敗した、言い負かされた──と思うところだけど。
そういうわけじゃなく、本当に言葉に詰まって何も言い返せなかった。
きっと、言いたいことはたくさんある。言わなきゃいけないことがある。
でも、それが出てこない。
逢いたいだけの人なんてつまらないし逢いたくないだろう。
僕もちゃんとあるはずなんだ。逢いたい理由が。でも、それが見つからない。
逢って──僕は何を求めていたんだ……?
そんな何も言えない僕を見兼ねてか、僕の代わりに
「いやいや、たしかに、マドカルちゃんの言ってることはよぉくわかる。ほぼ正解に近い気もする。ただ俺らは自分に酔ってないし──俺は本気で
「へー。普通にキモチ悪い。それに、わたしにはやっぱり理解できないかな。というわけで、わたしからあげられるアドバイスはない。あるとすれば死んで転生して推しの子どもになることくらい? そういうのみんな願ってるんでしょ?」
「ぐ……!」
なんかすまん……!
心の中で謝罪した後、僕はハッと思い出した──実際、
おそらく
つまり──死ぬことを推奨されてしまったわけだけど……。
最初からこの答えになることを予見して僕に死ねと言っていたなら、
と。
男二人が沈黙したのを嘲笑うかのように、ホームルームを始めるチャイムが丁度鳴る。
「さあ、てまりん行こう行こう。わたしの席の前がてまりんだよ」
「え⁉ あ、うん‼」
と、
「えっと、あ、あたしは逢いたいって気持ちはわかるよ。憧れの人には逢ってみたいって思うし……、あと
「「お、おう! そうだよな!」」
まあ、どう見てもめちゃくちゃ凹んでる男子二人だもんな。慰めたくもなるだろう。
ありがとう、
きっと
というか今更だけど、
何故ここに座っていたんだ……。
その肩を叩きたくなる
そういえば。
朝、
僕の席は──教室のど真ん中の席だった。
…………。
さっきまで
僕は違う意味でドキドキしてきた。仮に
そして僕は一体何を言われたのだろう。
たぶん、きっと、「死ね」だと思う僕だった。
ちなみに。
僕の席の後ろが
命拾いしたな、僕。
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