第2話「ケーキ屋のプリン美味しいよね←わかる」(3)
あたしは自室に戻ってすぐベッドに飛び込み、意味もなくゴロゴロと転がった。
「ぅぅぅぅぅぅうううううう」
と、声にならない声をあげてしまう。
「永遠の家族って……永遠の家族ってぇぇぇぇえええ………………!」
言って、自分で悶絶した。
ちょっと、ほんのちょっぴりプロポーズか何かかと思っちゃった……。
でも、あんなプロポーズもありだなぁ、ハルらしくて温かい言葉だ。えへへ。
なんて未来の妄想をしてしまった……。
恥ずかしいな、あたし……。
まあ、そのあとすぐ、その幻想は打ち壊されたわけだけど。
やっぱりハルはあたしのことを妹としか思っていないのかな──と、どうしても思ってしまう。
あの時からずっと妹扱いされてはいたけど。
それは本当に嬉しいし、感謝してることでもある反面──あたしを異性として全くみていないということでもあって、もどかしい。
実際のところ、仲のいい幼馴染と扱われるより勝機無さそうだし……!
妹──かあ。
とはいえ、異性として見てもらうために、どうすればいいのかなんて全然わからないけど。
一人の女の子として見てもらうため、か。
当面の課題かな。
それよりこないだからあたし、ツッコんでばっかりなんだけど。
ハルにツッコミ女と思われてるんじゃないだろうか……とても心配だ。
というか、この辺が一人の女の子として見てもらえない要因かな……⁉
あたしも好きでツッコんでるわけじゃ──いや、性格的にどうしてもツッコんでしまうので今更どうしようもないけど、ツッコミ女と思われるのは結構辛い。
なんだったら妹扱いされるより辛い……!
これも今後どうにかしていこう。
できるとは自分でもあまり思わないけど……。
というか、ハルも昔からあたしがツッコんでくれることを期待している節がある。ツッコミ待ちなところがある。難しいところだ……。
それよりも。
ハルのバイト先の先輩──
今朝の自分が愚かしい、恥ずかしい。呪い殺したくなる。
以下回想。
コンビニにお菓子を買いに出たとき、たまたま、本当にたまたまハルを見かけた(別にいつでも探しているわけじゃないよ。ハルのカケラを)。
やったぁ──じゃなくて! こんな時間に珍しい、何してるのかなと思って目で追うと──ハルが朝から用事があるとは思えない百貨店に入っていった。
さすがに怪しいなと思って、あたしはコンビニの中でハルが出てくるのを待った。ハルはすぐに出てきたのだが、その手にはハルが意味もなく買うとは思えないケーキ屋さんの箱(美味しいところのやつだ!)
あたしは直感した。
ハルがこの後行く場所はバイト先しかない。バイト先には美人の先輩(しかもスタイルがいい)がいるということ。
絶対プレゼントじゃん⁉
あれだけ
え、嫌だ嫌だ……。
ということであたしは居ても立っても居られなくなって……ハルのバイト中に探りを入れに行ったというわけだったのだ……。
回想終了。
いや、ホントにあたし馬鹿だな……。
あぁもう、こんな嫉妬丸出しで恥ずかしい……。
でも、行ったら猫語でお喋りしてるなんて嫉妬するなという方が無理あると思うんだけど?
……自分を正当化してもあまり意味はないけど。
あたしだってハルと猫語で一緒にお喋りしたいにゃん!
じゃなくて(じゃなくもない)、まあその心配は杞憂に終わったわけだけど。
今日は絶対顔に出してない自信があった。ハルにもよく言われるけど、あたしは何でも顔にすぐ出るらしい。だから今日は絶対に顔に出さないと誓って──幸運なことに猫語会話のせいでイイ感じに笑顔は作れていたと思う。嬉しい笑顔ではないけど。
それなのに
「ふふ、
こういうやり取りだった。
そのとき、あたしはめちゃくちゃ安堵した。
こんなにも安心するんだと自分でも少し驚いたくらいだ。
もう心臓がずっと嫌な鳴り方をしていたけど、その言葉を聞いてからすっと鳴り止んだのが自分でも本当によくわかった。
それくらいあたしは──生きた心地がしていなかったのだろう。
しかも、敵かもしれないと思っていた人が、突然味方だよと言ってくれたのだ。お礼も言いたくなる。
ホントに、本当に
「てか……あたしわかりやすいのかな……」
と、今更若干不安になってきた。
顔には出していなかったはずだけど、言動……だろうか?
これは問題である。あたしの想いをハルに知られてはいけない。
秘密の魔法だ。
あたしは──ハルにあたしを好きになってもらわなくちゃいけないのだ。
これは前にも言ったけど、あたしの重い想いでハルを強制したくないからなのだけど……。
それと、ハルは優しい。
これはずっと一緒にいたあたしが絶対を保証する。
それが──あたしが告白をしないもう一つの理由でもある。
何度も言う。ハルは優しい。
だから。
これは妄想じゃなく確信していることなんだけど──あたしが、もしハルに付き合って欲しいと言ったら困った顔をして「……
それは──とても辛い。
絶対に無理だ。嫌だ。
だからあたしから告白する日は──たぶん、ない。
告白待ちというと卑怯かもしれないが、あたしはあたしでハルに好きになってもらえるよう、告白したくなるほど好きになってもらえるよう努力をするしかないのだ。
まあもう何年もその努力は空振りに終わっているわけだけど。
でも、あたしのこの想いだけはたとえハルが鈍い人間でも気付かれたくない。いや、気付かれてはいけない。
気を付けなきゃ。
そんなことを考えていたらLINEが届いた。
『おつおつ~! 今日は楽しかったね! また来てね♪
…………。
察しが良すぎる!
これはあたしがわかりやすいとかじゃないのでは……?
安堵したけどちょっと
と。
何か返事しないと思とっていたら続けてまた
『あ、でもハル君今恋してるみたいだよ~! 善は急げだー!』
…………。
「えええーーーーーー⁉」
あたしは恥ずかし気もなく大きい声で叫んでいた。
よかった、一人の自室で。
外でも確実に叫んでいたので大恥をかいていたとこだった……。
あたしは即返事をする。
『今日はありがとうございました! えっと、ハルが恋してるって……誰にですか……?』
と送る。
すると、すぐに返ってきた。
『危機管理~‼』と書かれた可愛い女の子のスタンプのみだった。
「どういう意味⁉」
結局スタンプにはスタンプで返事することしかできず、話はそこで終わってしまった。
いや、え、誰に……⁉
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