第12話 いきなり開戦

 突然の発砲に、会場はざわめいた。といっても音はないが。


「何だ?」

「敵襲だ!」

「どうしよう!」

「どうする?」


 俺たちが演説するために、今は全国民がチャットでつながっている。みんなの慌てた様子が手に取るようにわかる。


 おそらく隣の『国』が攻めてきたのだろう。しかし、どうやって彼らは武器を手に入れたのだろう? 本拠地の近くに武器工場があったのだろうか。もしそうなら、不公平極まりない。


「みんな慌てないで! アイテムボックスを開けるのよ!」


 そうカッシーニが言った。


 アイテムボックスは俺もさっきから使っていた。本部を設営するのに準備する材料を入れておいたはずだが。


「そこに銃と弾薬が入っているはずよ!」


 言われた通りに俺がアイテムボックスを見ると、確かに銃と弾薬が入っていた。なるほど、最初から支給されていたのか。


「みんな、さっきの通知を見なかったの? サービス開始から1ヶ月は、毎日自動で銃と弾薬が補充されるのよ。だから、とりあえずは武器に困ることはないわ。もちろん、早いうちに武器工場を作らないといけないけどね。でも、今のところは気にせず戦って大丈夫よ」


 そんな感じでリーザが余裕ぶって話を引き継いだ。でも、俺たちはその話は話半分に聞いておいて、一体どこから敵がやってくるのかを探すために目をこらしていた。


 と、敵が現れた。正門の方から律儀にやってきた。一直線に俺たちに向かって突っ込んでくる。俺たちは全く統制が取れていないままに、てんでばらばらに銃を撃ち始めた。


⭐︎


 俺たちがあれだけ統制が取れていなかったにもかかわらず、俺たちは完全な勝利を収めた。というのは、敵はほんの少数だったからだーー十人もいなかった。俺はどこかから伏兵が出てくるのではないかとも警戒したけれど、そんなこともなかった。


 興奮している国民たちを整列させて、俺たちは倒した敵の調査をすることにした。どうやら、このゲームでは、敵の持ち物を漁ることができるのである。それは情報だったり、物資だったりする。とにかく、俺たちはそれらを得るためにしばらく作業をした。


 そして、驚くべきことがわかった。実は敵の兵力はこれで全部だったのである。つまり、敵軍は一時的に全滅していたのだった。


 これは後でカッシーニから聞いた話だが、このゲームでは一回プレイヤーが死ぬと、復活までに24時間待つ必要がある。つまり、敵軍は全滅したのだから、これから24時間は敵の本拠地が空になっているということなのだ。こちらとしては非常にラッキーだ。


 それで、俺たちは味方に損害がないことを確認してから、敵の本拠地、すなわちいずし古代学習館に向かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

俺の国〜モブでぼっちの俺、ネット掲示板の大統領(自治会長)になる〜 六野みさお @rikunomisao

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ