第9話 本格開戦へ
俺が学校を終え、家に帰ってくると、雑談板の戦況はかなり進展を見せていた。なんと、全ての国の間で休戦協定が成立していたのだ。朝はあんなに激しく戦っていたのに、何があったのだろう。
と、俺の個チャにリーザから着信が来ていた。
「もしそちらの学校か仕事が終わっていれば、なるべく早く寝ることを勧めるわ。実は、本格的な戦争が今日の深夜12時から始まるの。朝のラッシュまではノンストップで戦うことになると思うから、その時間帯はずっと起きていられるように準備をしておいて」
これだけ言われても、真夜中から何が始まるのか見当もつかない。
「いったい何が始まるんだ?」
そう俺が聞くと、リーザは驚くべき答えを返してきた。
「『戦争法』に、近々口頭でない戦争の方法を示すとあったでしょ。今日の午前中に、ミリアが大手のゲーム会社に話をつけてくれたの。つまり、私たち雑談板の『国』は、そのゲーム『雑戦争』を媒介として戦うわけ。現在の私たちのルールをもとにして、うまく構成されているの。まあ、詳しいことは真夜中に説明するから、とにかくラム大統領はその時間に起きられるようにしておいて」
「わかった」
かなり早起きしないといけない。でも、さすがに今から寝れば、親が怪しむんだよな。1時間くらいは早められるかもしれないけど。それでも9時で、3時間しか寝られない。なんてことだ。これは毎日は無理だぞ。
それにしても、やはりゲームで戦争をすることになるとはな。だんだん本来の掲示板を管理するという目的から外れていっているように見えるが、まあそれはいいだろう。
⭐︎
12時になった。俺は耳に差し込んでおいたイヤホンから聞こえる目覚ましで目を覚ました。すぐに枕元のスマホを手に取り、雑談板にログインする。
雑共和国のスレには、もうすでにリーザが例のゲームのリンクを貼っていた。そこからゲームをダウンロードするらしい。
俺がそのリンクを押すと、ダウンロード画面が表示された。『ダウンロード』のボタンを押したが、なかなかダウンロードは進まないようだ。15分くらいはかかりそうだ。俺はそれまで暇なので、その雑談板の代理戦争をするゲームの説明の文章を見てみることにした。
「『雑戦争』は、雑談板の自治会『雑仮想国家』が、雑談板の覇権を懸けて戦うために作られたアプリです。このアプリは、基本的にはプレイヤーだけの移動によってゲームが進んでいく戦略シュミレーションゲームです。……」
プレイヤーだけのゲームらしい。つまり、NPCはいない、単純なプレイヤーだけの動きで全てが決定するゲームだということなのだろう。
その説明文を何回か読み直していると、ダウンロードが終わった。俺はさっそくユーザ登録をして、所属する国を登録する。もちろん、俺が選ぶのは『雑共和国』だ。
俺は雑共和国の首都に転移することになるらしい。さあ、どんな街ができているのだろう。いや、まだ始まってすぐだから、首都付近も原始的な状態か。
だが、転移した俺は、あまりに予想外の出来事に、あと少しで大声で叫んでしまうほど仰天した。
雑共和国の首都は、俺のリアルのホームタウンだったのだ。
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