第6話 雑釈戦争
俺が『雑釈戦争板』に移動すると、すでにそこでは激しい戦いが繰り広げられていた。
「だから、雑共和国はすでに首都ザーツを陥落させられていると言っているのだ! いいからおとなしく降伏しろ、悪いことは言わない!」
「はあ? だから、雑共和国は公式の国なので、雑談板の国の中で最高の科学力を持っているのです! どのような国も私たちの首都を落とすことはできないのです!」
「そんなのずるいぞ! 不公平だ! 訴えてやる!」
「あら? 『戦争法』には、『国は口頭で戦争をする』と書いてありますのよ? 正々堂々と口頭で挑んできなさいな」
こんな感じで、リーザがシャカ国のトップであるらしい人を手玉に取っている。うーむ、リーザの奴、なかなか詭弁が立つな。
「おーい、『戦争法』は読んできたぞ。俺は何をすればいいんだ?」
俺はそう聞いてみた。
「まあ、今は観戦してなさい。ちゃっちゃと決着をつけるから。これも一種の勉強よ」
リーザはあくまで一人でやるらしい。やはり俺より大統領に適している気がするのだが。
「リゲル書記長! 良いことを思いつきました!」
さっきまでリーザと舌戦を繰り広げていた、シャカ国の『リゲル書記長』に、シャカ国の仲間が話しかけている。
「我々の国の名前が何か忘れたのですか?」
「ん? シャカ社会主義共和国だろう? シャカは社会主義からもじったんだよな?」
「何を言ってるんですか? シャカの原義を思い出してください!」
「ああ、仏教の開祖の方か?」
「それです! ですから、シャカ国は仏教的には超強力であるはずなんです! これを使えば、向こうの詭弁を潰すことができます!」
「なるほど! よくぞ言った! さあ、雑共和国! 我々は仏教的には超強国なのである! おとなしく降伏せよ!」
「あーはいはい。でも、それは仏教徒にしか通用しないでしょうが。私は違いますので。ということで今のは無効ね。えーっと、そろそろ逆にそっちの領土を攻撃するわね。まず首都を爆撃して……と」
「やめろ! そうだ、我々は首都の周りに結界を張る! これでお前たちは入ってこられない!」
「そんな非科学的な作戦はなしだと思うけど……。でも、とりあえず首都以外の領土はいただいていくわよ。領土全体に張ればよかったのに」
「あっ、しまった!」
どうやらリーザは戦闘を優位に運んでいるようだ。
「うーん、でも、もうそろそろ休戦しましょう。そっちもわたくしも学校とか仕事とかありますしね。午後の5時から再開というのでいいですか? それまでに作戦を考えておいてください」
「よし、わかった。午後は容赦しないからな!」
なんか休戦してしまった。確かに俺もそろそろ学校に行く時間だ。
「では、ラム大統領もまた後で」
「おう」
リーザとも挨拶を交わし、俺はネットから落ちた。
⭐︎
さて、俺の本業が何かと言えば、花も盛りの中学二年生だ。もちろん実際は全く盛っていない。友達もいず、かといってガリ勉なわけでもなく、授業中と休み時間は昨日読んだラノベの続きを想像している腐男子だ。
そんなわけで、俺は教室に着いたのだが、授業が始まるまでは何もすることがない。ということは、雑共和国のためにできることがあるということだ。雑談板にはもう数え切れないくらいの数の国がある。これを研究して対策を練るのがよいだろう。
さあ、どこの国から見ようかな……と俺は考えつつ、雑共和国のスレを眺めていた。そのとき、急に後ろから話しかけられたのだ。
「あれ、雷夢くん、もしかして雑共和国の人なの?」
「ひゃああああっ!?」
俺は学校で人に話しかけられることはめったにない。驚いて振り向き、そして俺はさらに驚いた。
俺の後ろに立っていたのは、クラスの代表的な陽キャにして中心人物の、
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