第5話 戦争法
俺がリーザに言われた通り『戦争法』のリンクをクリックすると、PDFのファイルが出てきた。一枚目の最上部に大きく『戦争法 2030年5月13日 雑共和国副大統領兼総務大臣リーザ・ミリア帝国皇帝ミリア制定』と書いてある。どうやらミリアもこの文書に一枚噛んでいるらしい。俺の知らない間に仲良くなったとは。それにしても、このファイルを印刷する奴はいるのだろうか。
ともかく、内容だ。
『1、国の建国
そもそも、戦争によって何を争うかを決めないと、戦争をすることはできない。両者のスレをハッキングするわけにもいかない。そこで、次のことを各国に義務付ける。
・各国は下図に示す世界地図のどこかに自国の本拠地を決定する。これは早い者勝ちである。また、建国時においては、一国につき実際に世界に存在する一国分しか領土の保有を認めない。
・もしあまりにも多くの国が成立したため、世界地図が全て埋まった場合は、第二、第三の世界地図上に建国する。各世界は実際の国の各首都から行き来できる。つまり、第一世界の東京から第二世界の東京を攻めることはできるが、第一世界の東京から第二世界のロンドンを攻めることはできない。逆も然りである。
2、首都
・各国は自国の領土内の好きな場所に首都を設けることができる。ただし、他の世界とつながるのは現実世界の首都に限るということを留意すること。つまり、将来一国が現実世界の二国分を支配することがあれば、その国は二つ別世界への扉を持っていることになる。
・基本、首都を陥落させることが戦争の勝利条件となる。各国は何としても首都を守り抜くこと。
3、国際連合
・各国が円滑に戦争を行うため、またフェアプレーを保証するため、『国際連合』を設ける。これには全ての国が加盟する必要がある。新しく成立した国は、国際連合に加盟を通知し、先ほどのルールに従って領土を決定して初めて、国として認められる。
・上記の手続きをしない国は非公式の国であり、これの全ての行動は無効である。つまり宣戦布告なんかは無視してよいということである。あまりしつこく絡んでくる場合は、ブロックが認められる。
4、追記
・将来的には、戦争用のより現実的なアプリが作成される予定である。だが、それまでは当分の間口頭で戦うこと。』
ずいぶん詳しく設定されているーーと、俺は頭を抱える。荒唐無稽で厨二的だが、論理は間違っていない。
しかし、口頭で戦争するというのはどういうことだろうか。とにかく、雑共和国に戻って、シャカ国との戦争を手伝わなければならない。
ところが、俺が雑共和国のスレに戻ってみると、コメントの応酬は止まっていた。そして、リーザによって一つのリンクが残されていた。
「雑共和国とシャカ社会主義共和国との戦争は、これよりこちらの『雑釈戦争板』で行います。参加したい方はご移動願います」
うーむ、今日の俺はリンクを移動してばっかりだぞ。
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