ウェルカムバルーン&グッドラックバルーンforドッグ&キャット
アほリ
ウェルカムバルーン&グッドラックバルーンforドッグ&キャット
わん!わん!わん!わん!わん!わん!わん!わん!わん!わん!
きゃん!きゃん!きゃん!きゃん!きゃん!きゃん!きゃん!
ばうっ!ばうっ!ばうっ!ばうっ!ばうっ!ばうっ!ばうっ!ばうっ!
にゃ~お!うにゃ~お!うにゃ~お!
にゃん!にゃん!にゃん!にゃん!
ここは、とある保護犬猫施設。
ここには捨てられたり、何らかの事情で飼えなくなって預けられたり、虐待を受けたり、他頭数崩壊でネグレクトされたり、心無い人間に翻弄されてきた犬や猫達がゲージの中で人間のボランティア達に保護されて一心に愛を受けられ何時かは新たな飼い主が決まって幸せな犬猫生を受ける事を待ち続けている。
「本当に酷い飼い主が居るんだな!『これ要らねぇ!』の手紙と一緒に箱の中に入れて、施設の前に放り投げられたとはねぇ!
この飼い主は、犬飼う資格ないよ!悪いけど。」
その箱の中に入れられて捨てられチワワは、投資家にペットショップから血統書付きで飼われたが、飼い主がなつきが悪いのと部屋を荒らされた事への腹いせに、違うチワワを飼うことの引き換えに捨てられたのだ。
「わたし・・・なんでここに居るの?
ふかふかなクッションの下で寝たいよ・・・
わたしの飼い主、何処に居るの?
わたしの飼い主ーー!!わたしのげぼくーーー!!」
きゃん!きゃん!きゃん!きゃん!きゃん!
当たり前だった。チワワのマロはまだ自分が捨てられた事をまだ知らない。
「どこ?どこ?どこなの・・・」
「ウェルカム!!ようこそ野良チワワちゃん!!」
施設内のゲージの中の保護犬達や保護猫達から、一斉に声があがった。
ぽーん・・・
突然ゲージの中から、オレンジ色のパンパンに膨らんだ風船が飛び出して弾んできた。
「ふうせーーーーん!?きゃんっ!!」
チワワのマロは、ビックリして前肢をあげた。
ぱぁーーーーーーん!!
「きゃいーん!」
チワワのマロの前肢の爪がオレンジ色の風船に当たってパンクしてしまった。
「あらら・・・ビックリした?本当はこの風船を鼻で突いて欲しかったんだけどなあ。」
向こうのゲージのブサ猫のヤンが呆然とするチワワのマロに言った。
「このゴム風船は、本来は新たな飼い主が貰われた時に一緒に貰える『グッドラックバルーン』なんだけどなあ。
このゴム風船を拝借して、ここの保護犬仲間や保護猫仲間の有志が一緒に口で膨らまして、新入りに鼻で突っついて『ようこそ』の意味の『ウェルカムバルーン』なんだけど。」
雑種犬のジュンがくぅーんとタメ息をついて言った。
「ごめん。大事な風船割っちゃって。この割れた風船は記念にわたくしのゲージにとっとくよ。」
「そうだ。風船を鼻で突いたら自己紹介する事になってるんだけど。」
柴犬のクータが言った。
「わたくし!改めてゴム風船突きたいっ!!だから、わたくしに風船膨らまして・・・」
チワワのマロの目から涙が溢れた。
「わたくし・・・ドジで・・・ドジなのは・・・飼い主の間違いだらけの・・・うっ・・・うっ・・・」
「チワワさん!落ち着いて!」
「言っちゃいな!!飼い主の仕打ちとか。」
「みーんな元の飼い主に迫害された仲間なんだから、ぶちまけちゃいな!!」
保護犬猫仲間は、嗚咽するちのチワワのマロに激励の声をあげた。
「あ、ありがとう・・ ・みんな・・・
わたくし・・・カミングアウトするね。
わたくし、『マロ』という名前なんだけど、
わたくしの飼い主は、わたくしを叱らないんだ。どんなに部屋の何処でも粗相しても、マンションの外でも粗相しても、全く叱らずに何故か『褒める』んだ。
粗相だけじゃない。どんなに部屋で悪さしても叱らない。
そうしてるうちに、わたくしは『ダメ犬』になっちゃった・・・
だってさ、わたくしは自分の脚で歩きたいのに外は汚れるから乳母車に乗せられて・・・ストレスたまってたまって・・・
それでまたストレス発散で部屋で悪さしても叱らずに・・・」
「なんじゃそりゃ?この飼い主は?俺なんて、飼い主の言うこと聞かないと投げ飛ばされて!怒鳴られて!棒でぶたれて!殴られて!
噛みついたら捨てられたもんね!!」
ハスキーのテツオがトラウマがぶり返したのか、悲しげに言った。
「まあ・・・わたくしは飼い主に飽きられて、他の犬に『買い換える』ように捨てられたし。
所詮わたくしは、飼い主のアクセサリーだったのさ。過保護だったのは大事なアクセサリーだからさ。服や宝石みたいなブランド品。所詮、わたくし『物』。」
「そうだよ!!僕たちは『物』じゃない!!」
サビ猫のアビが声をあげた。
「人間の法律じゃ、わたしらは『物』扱いだから、こんな仕打ちにされるんだ!!」
雑種のポチも声をあげた。
「俺らは『生き物』だ!『家族』になる為に生きてるのに!!人間と同等の命があるのに!!」
心無い人間の虐待で皮膚の火傷の跡がある茶トラ猫のラッキーが涙ながらに叫んだ。
「そうだ!!そうだ!!」「俺らを裏切った飼い主が許さねぇんだ!!」「使い捨てられたこの身!何でコンナ仕打ちになるんだ!!」「そうだ!!私だって『命』はあるんだ!!」
ゲージの中の保護犬猫達は一斉に声をあげた。
すると・・・
ぷぅ~~~~!!
向こうのゲージから、風船を口で膨らます音が聞こえるとぽーんと膨らませた風船が飛び出してまた、ぷぅ~~~~!!と風船を膨らませる音が聞こえる音が聞こえて、ぽーん!と弾んで違うゲージにパスされる度にどんどん風船が大きくなり、
今度はパンパンに膨らんだ風船が、チワワのマロの鼻先に向かってぽーーーーんと弾んできた。
保護犬猫達が少しずつ息を入れて膨らませて、吹き口をほどきやすく片結びして次々とパスした風船だ。
「今度こそ、割らずに突くよ!!それっれ!!」
ぽーーーーん!!
「やったーーー!!」
「『ウェルカムバルーン』せいこーー!!」
「チワワのマロちゃんウェルカーーム!!」
「早くいい飼い主見つかるといいね!!」
わん!わん!わん!わん!わん!わん!わん!わん!わん!わん!
きゃん!きゃん!きゃん!きゃん!きゃん!きゃん!きゃん!
ばうっ!ばうっ!ばうっ!ばうっ!ばうっ!ばうっ!ばうっ!ばうっ!
保護犬猫達が、歓迎の声をあげた。
チワワの突いた風船は、保護施設の天井を舞ってその拍子に風船の吹き口がほどけて、
ぷしゅーーーー!!ぶぉぉーーーー!!しゅるしゅるしゅるしゅる!!
と、保護犬猫の吐息を吹き出して吹っ飛んだ。
それからというもの、毎日毎日保護施設のボランティア達に世話されながら過ごした。
チワワのマロ前の投資家の過保護でネグレクトな飼い方より、時に優しく時に厳しく躾られる日々に、
「これが本来の『犬』の生き方なんだな。」
と、思った。
他の保護犬猫達と世間話は愉しかった。
まだ、チワワのマロより苦労してる仲間が居て、胸が締め付けられるような思いをした。
やがて、この時が来る。
しゅ~~~~~~~~!!
「何の音?」
「チワワ君、あれは施設の人間が風船にヘリウムガスを入れる音だ。
君が来た時に、突いた風船の本来の目的で、通称『グッドラックバルーン』と言われる。仲間を貰いに来る新たな飼い主に、一緒にプレゼントするんだ。
『この保護犬猫が幸せにしてね!』の意味合いでね。
この施設の仲間がまた新たな飼い主に貰われるなあ。今度こそ幸せになればなあ。」
トイプーのルンが感慨深げに、チワワのマロに話しかけた。
「猫飼う時は保護猫にしようと言ったの貴方でしょ?」
「この子が可愛いね。こいつにしよう。」
ハチワレ猫のマルが、黄色い『グッドラックバルーン』の風船を貰った若い夫婦に抱かれて施設を去った。
「ばいばーいマル!今こそ幸せになってね!」
保護ボランティアが貰われたマルに話しかける声が聞こえてきた。
「チワワ君と、いい飼い主に貰われるといいね。」
そんなトイプーのルンも、水色の『グッドラックバルーン』の風船と一緒に新たな飼い主の女性に貰われていった。
そして、また新たな保護犬や保護猫が来てチワワのマロもその新たな仲間の『ウェルカムバルーン』の儀式の為の風船を一緒に口で膨らます事になったり、仲間になった保護犬猫がまた貰われていって・・・
出逢いと別れを幾日も繰り返し・・・
「ワンちゃんだー!!」
「美穂ちゃん!本当に責任もって飼える?」
「お母さん!大丈夫!これから私の友達よ!ワンちゃん!」
チワワのマロは、家族連れの女の子に抱かれてこの保護施設を後にした。
女の子の両親の持ってるオレンジ色の『グッドラックバルーン』風船には見覚えのある跡がクッキリと付いていた。
このオレンジ色の風船は、チワワのマロが始めて施設に来た時に突いた鼻の跡が。
萎んで堕ちてた風船を施設のボランティアが、この日の為にとっておいたのだった。
「ほら!マロ!駄目でしょ!ここでトイレしちゃ!」
貰われた女の子の家の中で、チワワのマロは女の子に、躾られていた。
「わたくしは、ここで今度こそ幸せを掴むんだ。」
チワワのマロの為に飼い主が買ってくれたリードの先には、あのマロの鼻の跡の付いたオレンジ色の『グッドラックバルーン』の風船の紐が結ばれて揺れていた。
~ウェルカムバルーン&グッドラックバルーンforドッグ&キャット~
~fin~
ウェルカムバルーン&グッドラックバルーンforドッグ&キャット アほリ @ahori1970
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