Battle!Battle! and Battle!(戦いに次ぐ戦い!そして戦い!)

./Round.10

車体がギシギシと軋み、対向車がすれ違う音が遠くでかすかに聞こえる。

キリカ・ロウ・ケンジの3人は標的のいる海上都市に向けて、高速トラックの荷台に乗り込んていた。


いくつもの宅配物が積まれた空間の中、3人はそれぞれの場所に腰掛けている。

運転手はロウが手配した反AI・アンドロイド主義者の人間だそうだ。


荷台に乗り込んでから、すでに2時間近く経過しただろうか。


「ヤバいな」


ロウが突然告げた。


(来る──!)


キリカも瞬時に臨戦体制に入った。


「敵の攻撃だッ!!」


荷台の外から急激に風を切る音が近づき、次の瞬間には爆発音と衝撃と熱に変わった。荷台が大きく揺れ、積まれたダンボールがガタガタと崩れていく。


再びの爆発と同時にキリカはドアを蹴り飛ばし、ロウとケンジを抱えて路上へと飛び出した。トラックはガソリンに引火したのか、大きな炎に包まれた。間一髪といえよう。


見上げると、数十体のドローンが静かに空中で静止していた。

搭載されたミサイルが無機質に、キリカたちに照準を合わせている。


「ここは俺が食いとめるッ!お前たちは作戦通りに進め!!」


ロウは懐から銃を2丁取り出し、両手で構える。

高性能アンドロイドとしての能力をフルに発揮し、踊るように次々と銃声を響かせ、ドローンやミサイルを撃ち落としはじめた。


ケンジとキリカはそれぞれ別の方向に走り出す。

高速道路のガードレールを越えて、山の中へと足を踏み入れていく。

そんな彼らを、複数の刺客たちが追いかけていった。



...



キリカは呼吸の音を乱さず、冷静さを保って山の中を走っていた。

植物をかきわけ、枝を踏み折り、進んでいく。


しかし、背後から迫る気配は振り切れそうにない。

キリカが切り開いた道を走るため、後ろの連中の方が有利なのだ。


深い闇の中を駆け抜け、やがて開けた平地へと辿り着いた。


「全員相手してやるわ。さっさと出てきなさいよ」

「あら、追いかけっこはお嫌いかしら?」


雲が流れ、月光が周囲を照らす。

キリカを取り囲むように、黒装束の集団が姿を現した。

リーダー格の黒髪の女は美人だが、その顔は肉食獣のように好戦的だ。


「私は漆原ユミカ、あなたを狩りにきた部隊の隊長よ」

「知ってるわ。エインヘリアルの元選手にして、引退したおばさんでしょ?」


その一言は、逆鱗に豪速球を投げつけるようなものだった。


「...お前ら、殺せ」


ユミカ以外の隊員が足音も立てずに、一斉に遅いかかった。

目にも止まらぬ速さでキリカは動いた。鈍い打撃音が連続で響き、敵は次々と地面に倒れ込んだ。男のうめき声だけが聞こえる。


「有象無象じゃ話にならないわ。かかってきなさい、おばさん」

「調子に乗るなよ、クソガキ」


キリカとユミカ。デスゲーム"エインヘリアル"のトップ戦士たち。

2人は同時にナノマシンを発動させ、彼女たちの筋繊維がパキパキと乾いた音を鳴らした。


月が再び雲に隠れた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る