可愛くて強そうな味方の女の子と一緒なら、どんなことでも乗り越えられるはず!

!~よたみてい書

可愛い二人の危ない橋渡り

 黒髪女性が透き通った結晶を掲げ、握りつぶした。そして、粉々になった結晶の破片は宙に舞っていく。


「お願い、わたしに力を貸して!」


 黒髪女性は二十歳程の見た目をしていて、身長は百六十センチメートルくらい。前髪は眉まで垂らし、後頭部で大きな尻尾を作って後ろ髪をまとめている。やや垂れ下がった目尻をしていて、黒い円が瞳の中に入っていた。動きやすい薄い生地で出来た白い衣装を身に付けていて、胸部に少し大きめの膨らみが対で出来上がっている。


 黒髪女性は口の端を少し上げながら、眼前の景色を注意深く見つめ続けた。


(どんな人が来るかな?)


「ボクを呼んだのは、お姉さんかな?」


 黒髪女性は目を見開きながら振り返る。


「ふぇあぁっ!?」


 白髪女性は眉尻を下げながら頬を掻く。


「自分で呼んでおいて、驚くのはどうかと思うよ」


 白髪女性は容姿が十八歳前後に見えて、百五十八センチメートル程の身長をしていた。前髪は目の上まで垂らしていて、後ろ髪はうなじで綺麗に整えている。また、頭頂部と側頭部の間からは三角形の耳が一対生えていた。そして、目尻は少し吊り上がっていて、黄色い瞳が宿っており、中心には黒い縦線が刻まれている。黒色の軽い衣服を身にまとっていて、腰の下あたりから四十センチメートルほどの尻尾が伸びていた。


 うろたえながら頭を撫でる黒髪女性。


「あっ、ごめんね。でも、目の前に現れると思ってたから、つい変な声が出ちゃった……えへへ」


 黒髪女性は白髪女性の頭上からつま先に視線を巡らせた。


(この子、可愛いっ! 当たりだよ!)


 白髪女性は引きつった顔を作りながら肩をすくめる。


「そういうのは、固定観念こていかんねんとか、既成概念きせいがいねんっていうんだよ。とっても危ないから、注意してね」


「うん、確かに思い込みは危ないよね」


 白髪女性は微笑みながら頷く。


「うんうん。……ところで、お姉さんのお名前は?」


 黒髪女性は二本指を立てながら明るい笑顔を作る。


「あ、わたし? わたしは、リディアっていうんだ」


 リディアと名乗った黒髪女性は、笑顔を浮かべながら小首を傾げた。


「お姉さんの名前は何て言うの?」


 片目を閉じながら笑顔を作り、尻尾を立てながら親指を立てる白髪女性。


「ボクの名前はケットリバー。今後ともよろしくね」


 リディアは何度も頷きながら右手を前に差し出す。


「うんうん、よろしくだよーケットリバー!」


 ケットリバーと名乗った白髪女性はリディアの右手を優しく握る。


「こちらこそ、よろしくねー! ミャハハ!」


(あっ、手、柔らかい……)


 二人は寂れた町の裏路地で笑顔を見せあいながら、無警戒で笑い声を周囲に響かせていった。




 大きな崖まで移動し終えた二人は、一緒に対岸を眺めていた。 


 そして、リディアは眉尻を下げながら目の前の細い橋を指さす。


「わたし、ここを渡って別の地区に行きたいの」


 ケットリバーは首を傾げながら尻尾を上下に揺らす。


「ミャッ? どうしてリディアはこんな危ない橋を渡ろうとしてるの? もっと別の安全な場所から移動すればいいのでは?」


 硬い笑みを作りながら首を横に振るリディア。


「ううん、ダメなの。他の安全な場所、つまりアクアラインっていう大きな橋があるんだけど、そこを通ると待ち伏せの餌食えじきになっちゃうんだよ」


 小首を傾げながらリディアを見つめるケットリバー。


「待ち伏せって、誰に?」


「弱い物を狙う、卑怯者たち」


 ケットリバーは頭の後ろで手を組みながら口を尖らせる。


「ふーん……」


 頬を掻きながら乾いた笑みを作るリディア。


「だから、抜け穴のこの橋を渡って、別の地区に行きたいなって」


「この橋は安全なの?」


「うん、安全だって言ってたよ」


 尻尾を上下に揺らしながら腕を組むケットリバー。


「ん、言ってたって、だれが?」


 笑顔を浮かべながら親指を立てるリディア。


「情報屋さん! 教えてもらったの!」


「ふーん……」


 ケットリバーは後ろで手を組みながら細い橋を眺めた。


「まぁ、安全らしいけど、ボクが先頭に立って、安全を確保するからね。いいよね?」


「最初からそのつもりだったよ。あ、怒る?」


 首を横に高速で振るケットリバー。


「そんなことないよ! ボクの力が存分に発揮できる機会だよ、任せて!」


 リディアは手を目の下に添えながら呟く。


「うぅ、頼もしすぎるよぉ」


 ケットリバーは腰に手を当てながら胸を少し反らせた。


「えっへん!」


「それじゃ……渡ろうっか」


「了解ー!」


 ケットリバーは腰に携えていたカギ爪を手に装着させる。カギ爪の先端には十センチメートル程の刃が五本備わっていた。


 一方、リディアも腰から十センチメートル程の拳銃を取り出し、強く握りしめる。


 ケットリバーは細い橋に表情を変えずに足を乗せた。


 橋の幅は人が一人立てるほどで、眼下には暗闇が広がってる。そして、対岸は近いとは言えない距離だ。


 リディアは両腕を横に伸ばしながら橋の上を渡っていく。


「うぅ、怖い……わたし、渡れるかな?」


「大丈夫! 風も吹いてないし、障害になりそうなものは何もないよ!」


「うーん……でも、足の震えが」


 小刻みに歩を進めるリディア。


(ケットリバーに手を握っててもらいたい……。でもそれは流石に渡りづらくなっちゃうよね。じゃあ背中掴ませてもらう? ……いや、それも彼女の迷惑になっちゃうし、危ないよね)


 その時、ケットリバーに向かって大きな矢が横から飛んできた。


 しかし、ケットリバーは眉尻を上げながらカギ爪で矢を弾いていく。


「ミャんとっ!? 敵の攻撃!? やっぱりここも安全な場所では無かったんだよ!」


 ケットリバーは鋭い目つきを横の崖上に向けながら、尻尾を立てて毛を逆立たせる。


「逃げ場がない所を狙って狙撃してきてるんだね! あ、でも怖がらないで? もう見切ったから、全部防ぎきるよ、安心して! 出来るだけボクの近くに居てね!」


 微笑んだ顔を後ろに向けるケットリバー。そして、目を見開きながら橋の端の光景を見つめ続けた。

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