第39話 遭難とスク水と人魚
皆さん、こんにちは!アイリです☆夏休みも後半となりましたが、どうお過ごしですか?
私はというと……。
「………………」
「………………」
なぜか遭難して、これまたなぜか人魚に絡まれてます。
******
夏休み前半は平和そのものだった。
ウィリーと遊んだり。ナイトと遊んだり。セバスチャンのシャワーシーンを覗こうとして失敗したり。
ウィリーと遊んだり。セバスチャンの寝床に忍び込もうとして失敗したり。
お父様とお母様が私とセバスチャンを部屋に一晩閉じ込めて既成事実を作らせようとして失敗したり。お父様がセバスチャンを私の婿にするために色々ムチャぶりしたせいでセバスチャンがちょっぴりお怒りになり、お父様にお仕置きしてたり。
それでもお父様が「諦めないぞ~っ」と叫んでいたり……。
ええ、通常運転です。問題ありません。
そして夏休み後半はお楽しみにしていたルーちゃんとプライベートビーチにバカンスに行く予定だった。今頃はルーちゃんと海で楽しく遊んでいたはずなのに、その直前での出来事。
その日の朝、やたら暑くて寝汗が酷かったのでセバスチャンが起こしに来る前にこっそりお風呂に入ったのだ。シャワーだけでも良かったんだが、どうせならほんのりいい香りとかした方が女の子らしいじゃない?と思って秘蔵の入浴剤を使った。香水はセバスチャンが許してくれないからだ。
以前フェロモン香水なるものの存在を知って、“これで気になる異性もイチコロ☆”というフレーズに心引かれたのだが、私が興味を持っているとわかった途端セバスチャンが「香水などで補う前に自身のフェロモンを1ミクロンでも出してから寝言でおっしゃってください」と執事スマイルで断固却下された。
なんてことだ、私はまだフェロモンを1ミクロンも出していないらしい。
しかも寝言で言えって、起きてる状態では口にするのもダメだと言うことではないか。というわけですべての香水が却下される事態となり、入浴剤とシャンプーの香りのみが許された。
そしたらお母様が「この入浴剤はとても魅力的な香りがするらしいのよ」と珍しい入浴剤(なんでも極秘で入手したとか。怪しいです、お母様☆)をくれたのだ。
少しぬるめの湯船に入浴剤を溶かす。お湯がマリンブルーに染まった。
んー?なんの香りだろう?フローラルのような、スパイシーのような……。
いい香りなんだけど、なんの香りかわからない。そんなことを考えながら体を沈める。
「……不思議な香りだなぁ~」
目を閉じてぶくぶくと息を吐きながら顔を半分沈めると、なんだか太陽の下の少し温まった海水にでも浸かっているような、海水の上で浮かんでいるような、そんな不思議な感覚がした。
あぁ、もうすぐセバスチャンが起こしにくる時間だ。早く出ないとふやけちゃう…………。
「アイリ様……!!」
遠くでセバスチャンの慌てた声が聞こえた。セバスチャンが慌てるなんて珍しい。
すると何かをボチャン!と投げ込まれたのだ。私は無意識にそれを掴んで、そのまま泡となった。
******
気が付くと、裸で海辺の砂浜にいました。そして手には紺色のスクール水着がしっかりと掴まれていた。
それはもう、パニックだ。
でも最後の記憶の中で、セバスチャンが「アイリ様、コレを着ていなさい!!」と言っていた気がするので半身を海に浸りながら急いでスクール水着を着た。裸よりは絶対いい。
でもなんでスクール水着なの、セバスチャン?!
辺りを見回すが誰もいない。海と砂浜、それに鬱蒼としたジャングルみたいな森が目の前に広がっていた。
「ここはどこ……?」
私は確かに家でお風呂に入っていたはずなのに、なぜ海?ジャングル?とりあえず砂浜にあがり、木陰を探す。太陽の陽射しがやたらと熱かった。
その時、背後……海の方から声が聞こえたのだ。
「……ねぇ、あなた人間?」
「え?」
振り向くとそこにはものすごい美女がいた。マリンブルーの長い豊かな髪、小顔で白い肌、サファイアのような瞳とふっくらとしたセクシーな唇。
上半身ははち切れんばかりの胸を貝殻のみで隠していて、ある意味ルーちゃんの紐水着よりも際どかった。
そして海に浸かっている下半身。ぴちゃんと水飛沫をあげたそれは2本の足ではなく、魚の尾ヒレだったのだ。
「ねぇ、あなた人間?」
同じ質問が繰り返された。
「…………」
「…………」
私は返事をすることができず、ただただそのサファイアの瞳を見つめ返すことしか出来ずにいた……。
なんか知らないキャラが現れたんですけど?!なんで人魚――――?!
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