第32話 ナイトの想い(ナイト視点)

 ぼくはの名前はナイト。


 古代種族最古であり最強の吸血鬼種族。そのたったひとりの生き残りであるご主人様の眷属で、しもべでもあるコウモリだ。ぼくは他のコウモリたちをまとめる役割を与えられていて、いつもケンカしたりしないようにみんなを見守っていたんだ。


 ある時、コウモリたちの食料であるフルーツがなかなか見つからなくて、みんなお腹をすかせて困っていたんだ。特にまだ小さい子達はすぐケンカしちゃうから、大変なんだよ!

 そしたら、いつもはほとんど人間なんかいない森なのに、人間がいたんだ。ピンクのキラキラした髪の毛をして、なんだかいい匂いがした。

 ぼく知ってるよ、この人間はオンナノコって言うんだ!人間のメスのことだよ!

 するとそのオンナノコは小さい子達を連れたぼくを見て、なんとフルーツをくれたよ。最初は知らない人間に近寄っていいかわからなかったけど、小さい子達がお腹すいた!って泣くからそのフルーツをもらうことにしたんだ。


 みんな喜んでたよ。そしたらね、オンナノコをみてたらなんとなくオンナノコからご主人様の匂いがしたんだ。

 もしかしてご主人様に会いたいのかな?と思って案内するよって言ったらついてきてくれたの。人間って、コウモリの言葉がわかるのかな?ぼく人間とお話したの初めてだよ!後でみんなに自慢しようと思ったよ。


 ご主人様にオンナノコの事を説明したよ。小さい子達が助けてもらったんだから、ちゃんと挨拶しなきゃダメだよね!

 だってぼくらのご主人様だもん!


 ご主人様とオンナノコはなんだか難しいお話をしだして、ぼくにはよくわからなかったけど、ご主人様がオンナノコを泣かしちゃったみたいなんだ!

 ぼくはご主人様を叱ったよ。だってコウモリだってオスはメスに優しくしなきゃダメだって教えられるのに、ご主人様だってオスなんだからオンナノコには優しくしてくれなきゃ困るよ!シメシってやつがなんかアレするよ!


 それからご主人様は人間のオスに擬態してオンナノコと一緒に行くことにしたみたいなんだ。ご主人様はいつもつまらなさそうな顔をしていつもひとりでいたからオンナノコと一緒にいるご主人様が色んな顔をするのを見て、ご主人様に色んな顔をさせるオンナノコのことをぼくは大好きになったんだ。

 なんかいい匂いもするし、ぼくも一緒に行きたいってお願いしたよ!


 オンナノコの家に行ってしばらくは屋根裏に隠れて様子を見てたんだ。ご主人様は忙しそうだけど、なんだか楽しそうに色んなことをしていたよ。

 たくさんの人間がご主人様に笑顔を向けていて、あのアイリ(オンナノコの名前なんだって!)と一緒にいる時のご主人様がとっても楽しい顔をしてたから、ぼくはすごーく嬉しかったんだ。だからぼくはアイリのこと、もっと大好きになっちゃった。

 ご主人様が喜ぶと、眷属にも嬉しい気持ちが伝わるんだよ。


 何日かそうして過ごしてたら、違うお家に言ったよ。ここにはアイリくらいの人間がいっぱいいるんだって。そしたらご主人様がぼくの姿をばれった?っていう髪飾りに変えてくれたんだ。これならずっとアイリの側にいられるんだって!嬉しいなぁ。

 ぼくはアイリの騎士(ナイト)だから、いつもアイリを守るよ!


 ぼくの出番はあんまりなかったよ。だってぼくがアイリの危険に気づく前にほとんどご主人様が来ちゃうもん。

 でもぼくはアイリと一緒にいられるだけで嬉しいから別にいいんだぁ。


 アイリが熱を出して倒れちゃった!(その前にも筋肉のせいで気絶してるのに!)すごく熱くて苦しそうでぼくは悲しいよ。

 そしたらアイリから変なのを感じたんだ。急いでご主人様にお知らせしたよ!

 妖精王の仕業でアイリが苦しんでるんだって!ぼくは妖精王嫌いだし、許せないよ!

 そしたらね、ご主人様がアイリを助けるってお洋服を取っちゃったんだ。ぼくは見ちゃいけない気がしてちゃんと目を隠したよ。オトナノジジョウってやつだよね?


 そういえば、しばらくアイリの首に赤いのがついてたよ。ケガしたのかな?ご主人様が昔つけたっていう祝福の傷の横にあったから慌ててご主人様に教えたら、アイリには内緒って言われたよ。

 ご主人様の祝福にかかってるのに何日も治らない赤いのが変な病気だったらと思うと心配だったけど、何日かしてから(何日過ぎたか忘れちゃった)またあの筋肉にあったけど、ご主人様はアイリの首を見せて筋肉をやっつけちゃったんだ!

 あの赤いのって病気じゃなくて筋肉をやっつけれるのだったんだね!その日の夜、アイリが寝てる隙にご主人様はその赤いの消しちゃったけどね。

 ご主人様がぺろってするとほとんどの傷は治るんだよ。すごいねー。


 それからもご主人様はアイリに寄ってくる変なのをいっぱいやっつけたよ。いつも王子?っていうのだけど(へんたいっていうらしいよ)たまに知らないオスも来るんだ。

 アイリが気づく前にぜーんぶご主人様がやっつけてるけどね!

 あ、でもいつも一緒にいるオンナノコはやっつけないよ。だってアイリのこと大好きって気持ちが優しくて、アイリが嬉しそうだもん。

 このオンナノコはご主人様も仲良くしてるんだ。


 もうすぐ、人間たちがくるくる回る?ぱーてぃがあるんだって。ご主人様は仲良しのオンナノコと内緒話をしてたよ。アイリをびっくりさせるからまた秘密だって。


 アイリがきれいなかっこをしたよ。お姫様みたいですごくきれいなんだ!ぼくもなんかキラキラした姿に変えてもらっていつもとは違う場所につけてもらったんだ。

 ぼくかっこいいかも!でもせっかくアイリが嬉しそうだったのに、あの妖精王がやって来たんだ。

 ぼく嫌な気持ちになって思わず叫んじゃったよ!なんかよくわからないことを言っていたけど、アイリが嫌そうにしてたからご主人様にきゅっぽんされてざまぁみろ!って思ったよ。


 でもそのあとのやたらおっぱいの大きな妖精が出てきたんだ。そのおっぱいはご主人様のことが好きみたいでベタベタしてきて、なんか気持ち悪い。

 そしたらね、それを見てたアイリが、ものすごく悲しい顔をしたんだ。

 アイリのあんな顔見たくないよ。アイリはいつもの笑顔がいいのに。


 ちょっと聞いてよ!ご主人様ったら、アイリを襲ったんだよ!

 ご主人様が低温化して冬眠してたから心配してアイリに助けてもらったのに、そのアイリに痛い思いさせて血を吸おうとするってどうなの?!

 だいたい、アイリのことお気に入りだから無理矢理血を吸いたくないって言ったのご主人様でしょ?!オスはメスに優しくしなきゃダメなんだよ!

 ぼく思わずご主人様にきっくして、びんたしたら正気に戻ったけど、ぼくの怒りはおさまらないよ!悲しくって超お説教したよ!

 こんなご主人様じゃ情けないからね!


 そういえば、アイリが自分のこと好きか聞いたのにご主人様ったら誤魔化したの。ぼく知ってるんだ。ご主人様って独占欲が強いんだよ。

 1回自分のもの!って決めたら誰にも取られるの嫌なの。昔からそうだったもん。

 アイリを人間のオスたちや妖精王に取られるの嫌なくせに、なんでアイリにいじわる言うのかな?コウモリは好きなメスにはちゃんと好きって伝えるよ。

 ご主人様はオトナだと思ってたけど、ぼくよりコドモだね!まぁ、アイリがまた嬉しそうな顔に戻ったから、特別に許してあげるけどね。












「きゅい~~(アイリのこと、大好きなくせに~。むにゃむにゃ)」


「ふふっ、ナイトったらずっと寝言を言ってる。どんな夢を見てるのかしら」


 ベッドの上で丸まって、ずっと寝言をむにゃむにゃ言いながら眠っているナイトの姿をアイリがニコニコしながら見ていた。


「ナイトがなんて言ってるかわかればいいのになぁ」


 アイリがコウモリの言葉がわからなくて良かった。と、セバスチャンは心底思う。


 眷属でしもべのはずなのに、やたらと主人に厳しいコウモリは、寝言でとんでもない暴露をしていたのであった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る