SF小説 しん 浦島太郎

森緒 源

第1話 リューグ星のヒメ王女

 地球を離れて25光年 (約23,652兆キロ)…銀河系宇宙に、高度な文明を誇り優雅な生活をたしなむ星民が暮らすリューグ星がある。その星は大きな青い海に覆われ、その中に日本と同じくらいな面積の丸い島が1つ。島の中心には小高い丘、そして丘の上には特殊なガラスドームに覆われた豪奢で華麗で素敵な王宮があった。


 そんなリューグ星の王室では星民からの厚い崇拝と敬意を集めるオト王が星を治め、民の平和を保っていた。

 この星の民はみなとても美しい姿をしている。…基本的には地球人類同様、頭胴体2腕2脚各指5本と一緒だが、細胞内DNAを容易に変える技術があり、要するに姿態を人工的に組み替えることが出来るのだ。


 という訳で気高く荘厳なビジュアルを誇るオト王は、優美で清楚で凛としたビジュアルを隠せぬ愛する王妃に、こんな提案をした。

「そなたが私の妃になってはや20年…記念に夫婦の保養となるような別荘を持ちたい…それも民に気を使わせぬ別の星に!…どうかな?」

「まあっ!素晴らしいと思いますわっ、ぜひそうしましょう」

 王妃は即同意したが、実は内心、

(突然何言ってんだか ! …私は宇宙船キライなのよね、ワープで飛ぶと即酔いしてゲロ吐いちゃうのに全くさぁ ! )

 と悪態をついていた。

 しかし王妃のイメージを崩す訳にはいかなかった。そして王に進言した。

「では別荘とする星のリサーチやらその星の生物調査などを、まずは王女ヒメに任せてみては如何?…もう大人として扱うために王の与える王室任務の1つ目として」

「おぉ…さすがは聡明なる王妃 ! …ではそなたから王女に伝えるが良い」


 という訳で王妃がその旨を王女ヒメに伝えることになった。

 魅惑的な明るさと健康的しなやかさと…え~と、要するに、早い話をかいつまんで言やぁ、キレイで若くてカッコいいビジュアルプリプリの王女は、実際はざっくばらんに王妃の言葉を聞いていた。…というのも王妃と王女は王の居ないところではざっくばらんに会話する関係だからだ。

「…って訳だからさぁ、どっかテキトーな星探しといてね ! …あ、言っとくけど、該当星無かったってのはダメだかんね!…一応王様の言ったことだから、ちゃんとやりましたってテイを見せないとヤバいかんね!…あっ、そうだ、そしたらさ~、その星のいっちゃん高等生物っぽい奴を一匹サンプルとして持って帰るか!…すりゃあちゃんとやったよって証拠になるじゃん」

「わかったよ母ちゃん、面倒くせ~けどやるよ、要するに母ちゃんの顔つぶさね~ようにして任務は一応果たしたかんな的結果見せりゃ良いのね ! 」

「さすがヒメ、ポテト長い ! 理解早い ! 頭キレキレッ ! 」

 ざっくばらん会談は素早く終了した。


 結果、王女ヒメはオト王の希望をかなえるために別荘地としてリゾート環境優良な星を求め、調査を意気低く開始することにした。

 …まずは王室係官長を呼び、今回の任務を説明すると、

「それなら色んな惑星の情報に詳しい、ウンミガメ係官を担当に付けましょう、任務に役立つことと思います」

 と言われた後、官長と入れ替わりにそのウンミガメ係官がやって来た。

 ちなみにその係官のビジュアルは亀梨和也に似ている。

「この度は麗しきヒメ王女様の担当官という名誉を賜りまして…」

「あ~もうそういうのいらないからさぁ、私も疲れっからさ~、ざっくばらんに行こうぜ~、いいよタメ口で ! 王も王妃も居ないところならさ」

 ウンミガメの挨拶を遮り、ヒメ王女が言った。

「えっ!マジ !? …いや~それマジ助かるわ~、じゃあさ、もう俺オススメ物件あんのよ、あ、大丈夫、任務聞いてっから ! …ちょ、これ見て!」

 ウンミガメはコロンと態度を崩し、官服の胸のポケットからスマホ状の機器をだしてチョチョイと操作すると、二人のいる会話室の空間が一変した。

 部屋空間がそのまま3Dリアルスクリーンになったのである。

「へ~ぇ ! …なかなかじゃん!これ、どっかの星の海?…と浜辺かな」

 ヒメ王女の眼がキランと煌めいたのを見て、ウンミガメがドヤ顔で言った。

「でしょーぉ!…これ、銀河系の田舎、太陽系の星で、地球って言うんだぜ !! 」

「はっ ! …なるほど確かに名前ダッセ~ ! 」

 そして2人で笑った。



( 読者が付けば続く )






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