After Story
10年後。
「キーちゃん!お迎え来たから、準備しよっか!」
保育士が小さな男の子に声をかける。
「わかったー!」
男の子は振り返り、元気に返事をする。
深紫色の髪で、瞳の色はワインレッドである。
女の子と2人で遊んでいたようだ。
髪は黄緑で、瞳はオレンジ色である。
「ねぇせんせい、キーちゃんのパパとママ、いっつもちゅーするんだって!ラブラブだねぇ!」
男の子と一緒にいた女の子が言う。
「そ、そうなんだ!いいねぇ、仲良しだねぇ!」
保育士は顔を赤くし、少し困ったように笑う。
「ぼくとサーちゃんもなかよしだもん!」
男の子はぷくっと膨れる。
「そうだね!おんなじくらい仲良しだね!さ、帰ろっか!」
保育士は鞄を男の子に持たせた。
「はーい。サーちゃんまたねぇ!」
「ばいばーい!」
そして、男の子は保育士と外へ出る。
「あー!きょう、パパもいるー!」
男の子は笑顔で嬉しそうに走る。
彼がたどり着いた先にいたのは、ニナとヴァンであった。
「おーキアル、今日も良い子にしてたか?」
ヴァンはキアルを抱き上げる。
「うん!いいこだったよ!あのね、ピーマンぜんぶたべた!」
「お!すっごいな!ヒーローだな!」
ヴァンはキアルの頭を撫でる。
男の子は自慢げに腰に手を当てる。
「先生、今日もありがとうございました。」
ニナが保育士に挨拶した。
「いえいえ!今日もサアラちゃんと楽しく遊んでましたよ。」
「ふふっ、そうですか。今週末、サアラちゃん達と一緒に遊園地に行く予定で。キアル、とても楽しみにしてるんです。」
「そうなんですね!いいなぁ、遊園地!楽しんでね、キーちゃん!」
「うん!」
「じゃあ、失礼します。また明日もお願いします。」
「せんせいバイバーイ!」
「さようなら!また明日ね!」
そして、キアルは右手をヴァン、左手をニナと繋いで歩いて帰っている。
「今日はサアラちゃんと何のお話したの?」
ニナがキアルに聞く。
「んとねー、パパとママがいつもちゅーしてること!」
「え゛っ。」
ニナとヴァンは同時に顔を真っ赤にする。
「でもねー、サーちゃんのパパとママもだって!けんかしちゃっても、すぐになかなおりのちゅーするんだって!」
「そ、そっか。…アリサ達も暴露されてるから、今週末は何も言われなさそうだね。」
ニナは笑う。
「おあいこだからな。…でも、これで余計に心置きなくチューできるなぁ、キアル。」
ヴァンはキアルを抱き上げた。
「んー?ここおきなくー?」
キアルは首を傾げる。
ニナはボッと赤くなっている。
「は、早く帰るよっ!今日はキアルの好きなシチューだからっ!」
「ん!しちゅー!パパはしって!ぜんそくりょく!」
「よし!捕まってろ!」
ヴァンはキアルを抱えたまま軽く走った。
キアルはキャッキャと喜ぶ。
その光景に、ニナは幸せそうに微笑んだ。
そして家に着き、先に風呂を済ませて夕飯を食べた。
キアルは満腹になり、ヴァンの隣で絵本を読みながらも少しうとうとしている。
「ふふ、キアル眠い?」
キッチンから戻ったニナが、キアルの目の前でしゃがみ、目線を合わせて聞く。
「…ねむくない。」
キアルは頬をぷくぷくさせながら、目を擦る。
「ふふ。歯磨きしよ。そしたらいつでもねんねしていいよ。」
ニナはキアルの頬にキスをした。
「…ねぇママ。」
「なぁに?」
「どうしてパパもママもぼくのおくちにちゅーしないの?」
「…!」
ニナは顔を赤くする。
「それはなー、ママのお口にチューしていいのは、パパだけだからだ。」
「…!!!」
ニナはさらに顔を赤くする。
「そうなの?ぼくはだめなの?」
「うん。キアルがもっと大きくなったら、なんでダメなのかわかるよ。だからいっぱい食べて遊んで寝て、早く大きくなろうな。」
「うん!はみまき、する!」
「歯磨きな。よし、パパとピカピカにしよう。」
ヴァンはキアルを洗面所へ連れて行った。
その後、ニナとヴァンは2人でキアルを寝かしつけた。キアルが寝息を立てているのを確認すると、2人は寝室からリビングへ戻る。
「ふぅ。」
ヴァンはソファへ腰掛けた。
「お疲れ様ー。はい。」
ニナは紅茶の入ったカップを2つテーブルに置き、ヴァンの隣へ腰掛ける。
「さんきゅ。」
ヴァンは紅茶を一口啜る。
「今週末、楽しみだなぁ。なんだかんだ、アリサとルドと遊びに行くの3ヶ月ぶりだし。」
「お互い子どもメインになりそうだけどな。」
「ふふ、たしかに。」
ニナは微笑みながら、紅茶を啜る。
「…な、今度実家にキアル預けて、2人で出かけよう。俺の親、キアルに会いたいってうるさいし。」
「!…うん!楽しみ!」
ニナは嬉しそうに微笑む。
ヴァンは向けられた笑顔に、喜びと幸せを感じている。
「…ニナはいつまでも可愛い。」
ヴァンはニナにキスをした。
「…ヴァンはいつまでもかっこいいよ?」
ニナは照れながらもヴァンを見つめながら伝える。
「俺はもうおっさんなので…」
ヴァンは自身の手でニナの目を塞ぐ。
「私だってもうおばさんです!」
「ニナはいくつになっても可愛いから。」
「ヴァンだってそうなの!実際、全然20代の時と変わんないし…タンザナイトの血はすごい。」
「そうか…?」
「うん!…ね、私、ヴァンがいくつになっても、シワが増えてもハゲちゃっても、ずっとヴァンが大好きだよ!」
「は…ハゲねぇし!うちの家系は大丈夫だし!…でも、嬉しい。」
「…!」
ヴァンはニナの目を塞いだまま、もう一度キスをした。
「…手、どけて。ちゃんと私の旦那さん見たい。」
「…い、言うようになったよな。」
ヴァンは少し赤くなりながら、手をどける。
「へへ、大好き。」
ニナはふにゃっと笑う。
「…俺はもう少し大人にならないとな…」
ヴァンは額に手を当てる。
「ん?どういうこと?」
「なんでもない。…愛してる。」
ヴァンはニナを押し倒しながら何度もキスをした。
––ガチャ。
「!?」
「…パパぁ、ママぁ」
目を擦りながらキアルが起きてきた。
「ど、どうした?起きちゃったか?」
ニナとヴァンは慌てて起き上がり、ヴァンはキアルを抱き上げた。
「うん…もういっかいねんねさせて…」
「わかった。一緒にねんねしような。」
ヴァンはキアルの頭を撫でた。
「私達も、もう寝よっか。」
「そうだな。キアル、ちょっと待っててな。」
「うん。」
ニナ達も寝る支度をして、ベッドに入った。
ニナがしばらくキアルの頭を撫でると、彼は再びうとうとし始める。
「…ママ、パパ、おてて、ぎゅってして。」
ニナとヴァンはキアルの手を片方ずつ握る。
「…えへへ。…ママもパパもだいすき。」
「ママ達もキアルが大好きだよ。」
「うんっ…」
キアルはそのまま寝てしまった。
「…可愛いなぁ、キアル。」
ニナは小さな声で言いながら、キアルの頬を優しくつつく。
「たまらないよな。さすが、ニナの子。」
「ヴァンの子でもありますーっ。」
「そうだけど…俺はライバルでもあるから。」
「なんの?」
「ニナの取り合いするライバル。油断してると取られる。」
ヴァンもキアルの頬を優しくつついた。
「なっ…ははっ!ヴァンも可愛いなぁ。」
ニナは嬉しそうにヴァンの頭を撫でた。
「馬鹿にしてます?」
「してませんっ!」
「…楽しそうですね。」
ヴァンはニナの頬を軽くつねる。
「ふふっ。これからもやきもち焼いてもらえるように、精進します。」
「ほどほどにお願いします。」
「…ありがとう、ヴァン。私、ヴァンのおかげでとっても幸せだよ。」
「俺もだよ。ありがとう。これからも、ずっと一緒だ。」
「うん!」
2人は幸せを噛み締めながら眠りについた。
今日も月明かりが街を優しく照らし、
リリアベルの石像は優しく人々を見守っている。
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