Another Story



今日はニナとヴァンの結婚式。

アリサとルドはニナに招待され、揃って出席した。



終始笑顔に溢れ、楽しく幸せの詰まった式が終わり、ルドはアリサを家まで送っている。



「はぁー、羨ましい。」



アリサは結婚式の帰りに、ボソッと呟いた。



「何が?」



ルドにはちゃんと聞こえていたようだ。



「えー?だってもうアラサーだよ?結婚なんて今1番したいものじゃん。しかもあんな幸せそうで…改めて、結婚っていいなぁって思ったわ。」



「まぁ、幸せそうだとは思ったけど、別に焦りはねぇなぁ。」



「アンタにゃわからんね。この置いていかれた感。」



「別にニナはこれからも友達だろ?」



「もちろんそうだけど!」



「まぁ、2人して指輪つけて出勤してきた時は、あぁ、結婚したんだなって実感したけどさ。」



「…ルド、まだ引きずってんの?」



「ひ、引きずってねぇよ!俺は応援するって決めたんだ!」



「ふぅーん。」



「おい、信用してねぇな。」



「してますよぉ。」



「…まぁいいけど。」



「私は別に引きずっててもいいと思うけどねぇ。」



「え?」



「すぐに切り替えられないくらい、本気だったってことじゃん。ほら、シエラさんは魔法が消えたら恋愛感情なくなっちゃったでしょ?でもルドは違う。それは本気で心からニナが好きだったんだよ。魔法に勝ったってこと。無理に引き離すんじゃなくて、大切にしてもいいと思うけどね。」



「…ぉぅ…」



ルドは頭を掻いた。

少し顔が赤い。



「あ、でも無理矢理強奪とかはナシね。んなことしたらアンタと友達やめる。」



「しねーよ!」



「ならいい。…はぁー、でも本当よかった!ハッピーエンドで!」



アリサはぐぐっと背伸びをした。

夕日に照らされたアリサの姿が、美しく、輝かしく見える。



「友達…か。」



ルドは呟いた。



「ん?なんか言った?」



アリサはルドの顔を見て言う。



「…アリサってさ、自分のことは二の次で、友達のことばっか考えてるよな。」



「私はただお節介なだけ。てか、ルドだってそうでしょーが。」



「俺はそんなんじゃねぇよ。だから…アリサのそういうとこ、いいと思う。」



「…ん?」



「だから!お前のいいとこ!だと思う!」



ルドは顔を真っ赤にして言う。



「…さ、さんきゅ…。」



アリサも少し赤くなる。



「…なぁ、この前の…俺に惚れたって話、逸らされてそのままなんだけど。」



「…!あ、あれは一瞬そう思っただけ!」



アリサは早足で歩き始めた。



「おい、アリサ!」



ルドはアリサの腕を掴む。



「…一瞬だけかよ。もう無いのか?」



「…!?な、なに言って…」



「俺、お前をずっと友達としてしか見てなかったけど、お前にああ言われた時から、俺の中で何かが変わったんだ。…なぁ、俺、アリサを友達としてだけじゃなくて、1人の女として見ても…いいか?」



「なっ…」



アリサは思わず振り返ってルドを見る。

頬がさらに赤くなっている。



「正直、まだすぐには恋愛はできないと思う。でも俺は、また誰かを好きになるなら、想う相手はアリサがいい。…自分勝手でごめん。でも、俺頑張るから、またいつか俺に惚れて欲しい。」



「…ほ、ほんと自分勝手だ!バカ!」



「…だよな、ごめん。」



「………何弱気になってんのよ。」



「…?」



「そこは!退くとこじゃないでしょうに!これだからアンタはっ…」



アリサは顔を真っ赤にして言う。



「…じゃあ俺、頑張らせてもらうけど。」



「…か、勝手にすればっ。」



アリサは耳まで赤くしながら、下を向いて言う。

その姿を見て、ルドは胸の鼓動が強くなるのを感じた。



「…お前、そんな可愛い奴だったっけ?」



「は!?ふざけっ…」



ルドはアリサに軽く触れる程度のキスをした。



「…!?」



「…少しは意識したか?」



「〜〜ッ!」



「どっちが早く惚れるか、競争な!」



ルドはアリサにいたずらな笑顔を向ける。



「バ、バカじゃないの!?」



「はぁー、んじゃあ飲み行くかー。」



「話の流れ!」



「行かねぇの?」



「…行くし!」



「じゃあ着替えてこいよ。ヒール辛いだろ。」



「さ、さりげなく優しさ見せんな!」



「これは普通にそう思っただけだっつーの!」



「…ッ。バカ!」



「おまっ…バカ言い過ぎだろ!バカ!」



「ルドだって言ってんじゃん!」



「俺は1回だ!バーカ!」



「あ、2回!」



「うるせぇ!」



いつのまにか、アリサとルドは大笑いしながら会話をしていた。いつも通りのようで、少し違う、夕方の帰り道であった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る