第43話
出勤日。
ニナとヴァンは、自宅から職場までの距離が遠くなってしまったため、ヴァンの運転で車で出勤する。
「俺が遅くなる時は、電車になっちゃうけど…ごめんな。」
「全然大丈夫!むしろ、朝だって、誰かに見られたらまずいんじゃ…」
「…ニナさえ良ければ、皆に報告しようと思ってる。婚約したこと。」
「…え!?」
「俺は男だから、いろいろ言われることは少ないけど、女子はそうはいかないんだろ?ニナが居づらくなるようなら、黙っておく。」
「…ううん、大丈夫。私にはアリサもルドもいるし、私そんな弱くないもん。」
「…そっか。じゃあ、今日支店長に話してみる。」
「うん!」
職場に到着した後、ヴァンはすぐに支店長に報告した。支店長からは祝福され、朝礼で支店長から全体へ報告された。
「えー、今日はまず皆さんにお知らせがあります。この度、ヴァン・タンザナイト君とニナ・クンツァイトさんが、婚約されました。2人には、より一層の活躍を期待しているよ。よろしく頼むね。」
「え!?うそっ!?」
「ヴァンさんとニナさんが!?なんで!?」
「どういう経緯!?」
「てか、付き合ってたの!?」
「何、アードゥだったってこと!?」
予想通り、周囲は大いに騒ついた。
「支店長のご報告の通り、この度ニナさんと婚約させていただきました。これからより一層、精進してまいりますので、皆様どうぞよろしくお願いします。」
「よろしくお願い致します。」
ヴァンとニナは頭を下げた。
「ニナ、おめでとう!」
「おめでとう!」
アリサとルドが拍手をした。
それに合わせて周囲も拍手で祝福した。
「ふぅ…緊張した。」
ニナは席に戻り、一息つく。
「おつかれ、ニナ。」
アリサがニナの肩を叩く。
「ありがと、アリサ。」
「何かあったら、私が守ってあげるからね!」
「俺もいるぜー!安心しろ、ニナ!」
ルドがやってきた。
「アンタは心許ないわ。」
「んな!?なんでだよアリサ!」
「女子には女子の世界があんのよ。」
「私は大丈夫!アリサとルドがいてくれるから!」
「ふふ、かわいいやつめ。」
そして、始業のチャイムが鳴った。
昼休み、ニナはアリサとルドと外のベンチに向かっていた。
「ニナさん!」
ニナは女性3人組に声をかけられた。
「あ…はい。」
ニナはごくりと唾を飲む。
「……おめでとう!」
「へ?」
「最初聞いた時はびっくりしたけど、お似合いだと思う!おめでとう!」
「…あ、ありがとうございます!」
ニナは赤面しながら、感謝を述べる。
「また今度、話聞かせてね!」
「は、はい!」
3人組は去っていった。
「…良い職場で良かったね。」
アリサが言う。
「うん。ほんと良かった…」
ニナは泣きそうな顔で呟いた。
そして、ベンチで昼食を食べる。
「ニナ、意外と男子に評判良かったみたいだぞ。」
ルドが言う。
「んぇ?」
ニナはもぐもぐと食べながら、ルドを見る。
「結婚に地味にショック受けてたやついた。ほら、リリアベルの祝福が解けるようになっただろ?俺にも可能性があったのにー、とか言ってたぜ。」
「そ、そんなっ…」
ニナはボッと赤くなる。
「うちの職場は、女子より男子のが大変かも…」
アリサは苦笑いした。
終業後、ニナは帰りの支度をしている。
「ニナ。」
ニナが振り返ろうとすると、横からひょこっとヴァンが顔を出した。
「あ、お疲れ様です。」
「お疲れ様。俺、あと20分くらいしたら帰れるけど、どうする?」
「あ、じゃあ外で待ってます。」
「わかった。キー渡しとくから、車乗ってていいよ。」
「はいっ。」
ニナは車で待機し、15分程経った後、ヴァンがやってきた。
「お待たせ。」
「お疲れ様。仕事は終わった?」
「うん。でも明日は午後外回りだから、遅くなりそう。ごめんな。」
「ううん、大丈夫!駅近いし。」
ヴァンは車を走らせた。
「今日、大丈夫だった?」
ヴァンが心配そうに聞く。
「うん。個人的にも祝ってもらえた。」
「そっか、良かった。…これで堂々とニナに近付けるな。」
「し、仕事してくださいっ!」
「はーい。…あ、ニナ。」
「うん?」
「あのさ…籍入れる前に、俺の実家、一緒に行ってほしい。」
「…!」
「電話では報告してあるけど、ニナのことちゃんと紹介したいから。」
「うん…!ぜひ行きたい!」
「良かった。じゃあ今週末、行こう。」
「うん!」
ニナは笑顔で答えた。
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