第42話
「いらっしゃーい!あ、はじめまして!ニナお姉ちゃんの妹のマリアナです!」
マリアナがニナとヴァンを出迎えた。
今日2人は、ニナの実家へ結婚の挨拶に来たのだ。
「こんにちは。はじめまして、ヴァン・タンザナイトです。」
「お姉ちゃんとお母さんから聞いてました!話に聞いた通り、めちゃくちゃイケメンですね!ま、私の旦那には敵わないですけど!」
マリアナは何の気なしに言う。
「ちょ、マリィっ!」
ニナは赤面する。
「あははっ。明るい素敵な妹さんですね。」
「うるさいだけだよっ。」
「ひどいお姉ちゃんっ!」
マリアナは頬を膨らませた。
「マリアナ、外で喋ってばっかいないで早く中に案内しなさい!ヴァン君いらっしゃい!さぁ上がって!」
ニナの母がマリアナの後ろからやってきた。
「ありがとうございます。」
そして皆、席に着いた。
「新しい暮らしは慣れたか?」
父が聞く。
「うん!便利で良いとこだよ。近くに素敵な遊歩道もあるの!」
ニナが嬉しそうに答える。
「そうか。良かったな。元気そうで何よりだ。」
「ほら、お父さんも喋ってばっかいないで、食べましょ!」
「あの、僕…」
「まぁ、堅い話は後だ。まずは食べよう。」
そして、談笑しながら食事をし、食器の片付けをする。
「手伝ってもらって悪いわね、ヴァン君。」
高い棚へ皿をしまうヴァンに、母が礼を言う。
「いえ。こちらこそ、ご馳走様でした。とても美味しかったです。」
「ふふ、ありがとう。今日は奮発しちゃったの!」
「ヴァン君、ニナ、こっちに来なさい。母さん、あれをお願いできるか?」
「はいはい。」
母は返事をして準備を始め、ニナとヴァンは椅子に座った。マリアナは、邪魔にならないよう、自室にいる。
「…さて、今日は何の話だったかな。」
「はい。今日は…ニナさんと結婚させていただきたく、ご挨拶でお伺いしました。」
「…そうか。君の気持ちは変わりない、ということだね?」
「はい。むしろ、以前お伺いした時より、気持ちはもっと大きくなっています。お願いします、ニナさんと結婚させてください。」
ヴァンは頭を下げる。
「私も、ヴァンと結婚したい。お願いします!」
ニナも頭を下げた。
「…私も嬉しいよ。君みたいな子が、ニナを貰ってくれて。ニナをよろしく頼むよ。」
父は笑った。
「…!はい!ありがとうございます!」
「お父さん、ありがとう!」
「私も嬉しいわぁ!息子ができたみたいで!」
母はワインとグラスを持ってきた。
「ヴァン君、ワインは飲めるか?」
「はい、好きです。」
「このワイン、お父さんのお気に入りでね。お祝い事の時しか開けないのよ!」
母が言う。
「…とても嬉しいです。」
ヴァンは今にも泣きそうな笑顔で言う。
そして、マリアナも呼び寄せ、全員で夜が更けるまで談笑した。
ニナとヴァンはそのまま1泊し、翌朝帰宅した。
「ただいまぁっと。」
ニナは2人の家の玄関で靴を脱ぎながら言う。
「ふぅ。」
ヴァンはホッと一息つく。
「ふふ、ヴァン、ずっと緊張してたね。」
「そりゃするさ。前よりは緊張しなかったけど。人生で2番目に緊張した。」
「この前が1番?」
「もちろん。」
「へへ、そっかぁ、人生で1番かぁ。」
「そーです。…ニナぁ、ご褒美。」
ヴァンはカーペットの上であぐらをかき、両手を広げる。
「!……。」
ニナは赤面しながらヴァンに近付く。
そして、立ったまま腰を曲げ、ヴァンの頬を両手で包み、キスをした。
「!」
ヴァンはハグからと思っていたので、驚き、頬を染める。
「…き、今日は積極的ですね、お嬢さん。」
「…ご褒美なので。」
「…もっと。」
「…ッ。」
ニナは顔を真っ赤にしながら、一生懸命先程より深く、ゆっくりキスをした。
「…やばい、スイッチ入った。」
ヴァンは軽く舌舐めずりしながら、余裕のない顔でニヤリと笑う。
そして、立ち上がってニナをベッドまで運ぶ。
「わわっ!?ヴァン、まっ」
「待ちません。」
そのままニナはされるがままとなった。
その後、ニナとヴァンはベッドの中でごろごろしている。
「伝わったと思うけど、私の家族全員、ヴァンのこと大好きなんだよ。今日また実感できて、私嬉しくなっちゃった。」
「それは物凄く嬉しい。安心した。…本当にいい家族だよな。あったかくて。」
「ふふ、ありがとう。ぜひぜひ、私の家族も好きになってね。」
「もちろん、もう好きだし。」
「…えへへ。…良かった……。」
「………ニナ。」
「……」
「……ん?ニナ?」
「……」
ニナは寝息を立てている。
「寝たのか。」
ヴァンはニナの頭を撫でる。
「ニナ。大好きだ。」
ヴァンはニナの額にキスをした。
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