第40話
そして、ニナの両親は戻っていった。
次第に街の人々が石像や記念碑の前に集まり出し、騒ぎ始めている。
「ヴァン様。」
声のした方へ目を向けると、申し訳なさそうな顔をしたシエラがいた。
「この度は、私がご迷惑をおかけしたようで、本当に申し訳ございませんでした。」
「あ…いえ、こちらこそ、貴方がいなければ、この紋様は残ったままだったかもしれません。本当にありがとうございます。」
「私からも…本当にありがとうございました。」
「…ふふ、あなた方は心優しく、本当に愛し合っているのですね。お2人の幸福をお祈り申し上げますわ。」
「…へへ、ありがとうございますっ!」
ニナは笑った。
そしてシエラはその場から去る。
彼女を見届けた時、ヴァンはクロエの姿を捉えた。
クロエの服は汚れ、破れている箇所もある。彼女はサングラスをかけ、少し微笑みながら、その場を去ろうとする。
「クロエ!!」
ヴァンが叫びながら駆け寄る。
クロエは振り返ろうとしない。
「本当に…ありがとな。」
「…馬鹿じゃないの?アンタの為じゃない。私の友達のためにしたの。」
「…は?友達?」
クロエは振り返り、ヴァンを指差す。
「いい?今度ニナを泣かせたら、まじでギタギタにしてやるから!」
そう言うと、ヴァンに背中を向け颯爽と歩いて行った。
一方、アリサとルドは広場の隅のベンチに座っていた。ルドはベンチの背もたれにもたれかかり、アリサは自身の膝に肘をたてて頬杖をついている。
「良かった良かった。ハッピーエンドで。」
「…そうだな。」
「んじゃあ、飲み行きますかね。」
「…おう。」
「……かっこよかったぞ、ルド。」
「…そうかよ。」
「…ちょっと、惚れた。」
「…そりゃどうも。」
ルドは、いつもの冗談だと流しつつ、アリサを見る。
アリサの耳が赤い。
「…え?…マジのやつ?」
「……。」
「おい、アリサ。」
「……。」
「お、おいって!こっち向けよ!」
ルドは顔が真っ赤になる。
「アリサ!ルド!」
ニナが駆け寄る。
「本当にありが…あ、あれ?どしたの?」
不思議な雰囲気の2人にニナは戸惑う。
「…ニナー!良かったねぇ!」
アリサはニナに抱きつく。
「おいアリサ!話逸らすなよ!」
「話?なんの話してたの?」
「話?なーんも?ね!ルド君?」
アリサはルドを見て微笑む。
いつものアリサに戻っている。
「…ったく。」
ルドは赤面しながら頭を掻いた。
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