第37話



それから1週間後。

ニナ達は有力な情報が得られずにいた。

いくつかの特定した家を張り込んだが、シエラとヴァンは現れなかった。



「1週間か…。早く見つけ出さねぇと、もっと見つけられなくなりそうだよな。」



「…ッ。」



「ルド!」



「わ、悪い!そんなつもりじゃ…」



「でも、本当に、このままじゃ…」



ニナは下を向き、ぐっと拳に力をこめる。






––カツッ、カツッ。



ヒールの音が近付き、ニナ達の前で止まった。



「Hi、ニナ。」



「…!」



ニナは顔を上げると、その存在に驚いた。

サングラスをしたクロエである。



「…!ア、アンタ…何しに来たのよ!」



アリサが身構える。



「誰…?」



ルドはニナとアリサの顔を見る。



「…これ。」



ニナに一枚の紙を渡した。

地図のようだ。2ヶ所に赤い丸がある。



「3日後、シエラ・カルセドニーの結婚式があるそうよ。」



「…え!?」



アリサとルドが声を上げた。

ニナは驚きすぎて声が出ない。



「その赤い印は、シエラが住んでいるであろう邸宅。結婚式の日の早朝、式場に向かうために、そのどちらかからシエラとヴァンが出てくるはずよ。…チャンスは一度。活用しなさい。」



「クロエさん…どうしてこれを…!」



ニナは目を潤ませる。



「私の情報網、舐めんじゃないわよ。あと、夜の公園でデカい声で騒ぎすぎ。ちょっとは声量抑えなさい。特にアンタ。近所迷惑だわ。」



クロエはルドを指差す。



「お、俺…!?」



ルドは困惑する。



「な、なんで協力するの…!?」



アリサは混乱する。



「…私は、アンタ達に幸せになってもらわなきゃ困るのよ。私が惨めに負けたことになるでしょ。だから、早くヴァンを奪い返してやりなさい。」



「クロエさん…ありがとう…!」



クロエは手をひらひらと振って、去っていった。



「だ…誰…!?」



ルドは未だに困惑している。



「…ふふ、私の友達。」



ニナが笑う。



「ニナ…いつのまに…!?」



「うんと…昨日の敵は今日の友…?」



「…はぁ…やっぱすごいわアンタ…」



アリサは呆れつつ、笑った。





そして、3日後。



ルドは1人で一軒を張り込み、ニナとアリサはもう一軒を張り込んでいる。ルドとアリサは通話を繋げたままにし、すぐに情報共有できるようにしている。



「…ニナ、大丈夫?」



アリサが聞く。



「…うん…大、丈夫。」



ニナの手が震えている。



アリサはニナの手を握った。



「大丈夫。心は決まってるんでしょ。ヴァンさんに会って、文句言ってやんな。」



「…うんっ。」



ニナは覚悟が窺える目つきに変わった。










そして、シエラとヴァンが現れた。


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