第35話


「………。」



「………。」



公園には、ニナとルドの2人。

沈黙が流れている。



しばらくして、ルドが沈黙を破った。



「…ニナ。」



「……うん…?」



「……なんで、そんなアイツにこだわんの。」



「……好き…だから…。」



「…こんなに傷付いてんだぞ?」



「…それでも…」



「…その好意、アイツに向けるしかねぇの?」



「…?」



「他は…可能性ねぇの?」



「…ルド…?」



ルドは、ぎゅっと拳を握る。



「…ニナ。…俺じゃ…ダメなのか?」



「………え?」



「俺じゃ、アイツの代わりになれない?」



「ちょ…どういう…」



「…俺は、ずっと…ずっとずっと前から、アイツよりも前から…お前のこと好きなんだよ!」



ルドは立ち上がって、叫んだ。

頬が赤くなっている。



「……え?…え!?」



「ほんと、お前鈍感だから、全ッ然気付かねぇ。」



「だ、だって!そんな素振り全然…」



「…まぁ、そうだよな。悪い。…でも、俺は、誰よりもお前のこと大切に思ってたし、大切にしてきた。アイツが好きって聞いた時、悲しかった。悔しかった。辛かった。切なかった。…でも、それでニナが笑っていられて、幸せなら、それで良いって思った。応援しようと思ってた。でも、結局アイツはニナを泣かせた。傷付けた。俺はアイツが許せねぇ。俺は絶対、ニナをこんなことで泣かせたりしない。」



「こ、こんなことって言ったって…魔法の強さ、わかったでしょ!?私を好きで居続けるなんて保証どこにも…」



「あるんだよ!その保証が!」



「…え?」



「…とにかく、俺はニナが好きだ!お前が弱ってる時に、こんなのずるいってわかってる!でも…こうでもしないと、振り向いてくれないだろ…。」



「……ッ。」



「…俺…じゃ…ダメか…?」



「……ごめん。私はやっぱり…ヴァンさんが好き。諦められない。私は、ヴァンさんの隣にいたい。ずっと。だから…ごめん。」



「……………そっか。わかった!」



ルドはニッと笑う。



「俺のおかげで、意志が固まっただろ?」



「…うんっ。」



「よし、じゃあ俺の株がまた1つ上がったな!」



「…もうとっくにMAXだよ。」



「…そ、そっか。…なぁ、俺、こんなこと言っちまったけど…今まで通り、友達でいてくれるか?」



「もちろんっ!ルドと縁切る気は無いよっ!」



「…安心した。よしっ、じゃあ俺も手伝うよ、ヴァンさん探し!あのムカつく顔面に一発かましてやりてぇし!」



「…ふふっ、ありがと!」





「…あのぉ、お取り込み中すみませんが。」



声のした方へ目を向けると、アリサがムスッとした顔でニナ達を見ている。



「アッ、アリサ!?お前いつから…」



ルドは顔を真っ赤にする。



「アンタ声デカい。道まで聞こえてきたわ、愛の大告白。」



「……〜〜ッッッ!!」



「…ほれ、ニナ。まずは飲んで食え。そして寝ろ。ヴァンさん探しは明日からねっ。」



「…ありがと、アリサ。…2人とも、本当にありがとう。」



「それは見つけてから言ってちょーだいっ。」



「よしっ。相手はシエラ・カルセドニーだな!絶対見つけ出してやる!」



それから、アリサとルドはニナをアパートへ送っていった。



その姿を、1人の人物が陰から見つめ、その後颯爽と立ち去っていった。





アリサとルドはニナを送った後、帰宅しながら会話をしている。



「…まさかあそこで告白するとは…」



「し、仕方ねえだろ!居ても立っても居られなくなっちまったんだから…」



「まぁ、見事に玉砕でしたけどね。」



「うるせぇっ。…でも、なんかスッキリしたわ。今までずっと言えなかったことが、やっと吐き出せたからな!」



「…そうかいそうかい。じゃあ、早いとこヴァンさん見つけて仲直りしてもらって、飲みに行くかね。」



「おうっ!」



2人は、月が明るく照らす夜道を歩いて帰っていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る