第34話



ニナは、ヴァンのいない2人の部屋で、

彼の帰りを待ち続けた。




しかし、ヴァンは帰ってこない。

何度電話をかけても繋がらない。

メッセージの返事が来ることもなかった。






––♪



「…!!」



ニナのスマホが鳴り、急いで電話に出る。



「ヴァン!?」



「えっ…アリサだけど…。ニナ、どうしたの?無断欠勤だなんて。ヴァンさんも仕事来てないし…」



「え…」



デジタル時計を見ると、月曜日の昼であった。あれから3日経っていたらしい。



「………アリサ…」



「どうした?」



「…ヴァンが…ヴァンさんが……アードゥに会って…その人と一緒に…行っちゃった……」



「え!?…今日、仕事終わったらそっち行くから!2人の欠勤は、それぞれ私とルドでなんとか誤魔化しとく!だから、ちゃんと私の連絡待ってて!」



「………。」



「ニナ!?わかった!?」



「……わかった…」





そして夜になり、ニナは実家近くの公園でアリサを待った。



「…ニナ!!」



アリサとルドが走ってやってきた。



「ハァ…ハァ…ヴァンさんのこと、本当なんだよね?」



「…私……私……」



ニナの目からぽろぽろ涙が流れる。

ニナの目は、既に涙を出し切ったように乾き、腫れている。

身体は衰弱しきっていた。



「…ッ。」



アリサはニナを抱きしめた。

ルドは切なさと怒りと心配が入り混じった表情で、ニナを見つめる。



「まだ、帰ってこない?」



「…うん。」



「…電話も出ない?」



「…うん。」



「メッセージは?」



「…返ってこない。」



「…そっか。…ニナは、どうしたい?」



「…私…?」



「うん。ニナの気持ちを聞きたい。」



「…わた、し…は…戻ってきてほしい…。魔法のせいで…諦めたくなんか…ないよ…。」



「…よし、わかった。私、協力する。」



「…え…?」



「待ってても始まらない。だって、今のヴァンさん、牢屋に捕まってるのと同じかもしれないよ?逃げたくても逃げられないのかも。一緒にヴァンさん探そう。迎えに行こう、ニナ。」



「…アリサ…。」



「相手の名前、わかったりする?」



「…シエラ・カルセドニーって言ってた。」



「カルセドニー…なんか聞いたことあるような無いような…。よし、私、徹底的に調べてみる!さすがに仕事は休めないけど…合間に調べて、手がかり掴むから!」



「……アリサ…ありがとう……」



ニナは再び泣き始める。



「だから、ほら、もう泣かないで。ニナの可愛い顔が台無し。…て、ニナ、アンタちゃんと食べてた?」



「……。」



「…こりゃ水すらまともに摂ってないな。ルド、私なんか買ってくるから、ニナお願い。」



「…わかった。」



アリサはその場を離れた。




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