第31話


連休が明け、出勤日。



「ニナ、そろそろ出るよー。」



「はーいっ。」



玄関には、大きさの違う2足の靴。

ニナとヴァンは、それぞれ自分の靴を履き、一緒に部屋を出る。



「おはようございまーす。」



「おはようございます。」



同じアパートの住人にすれ違い、2人で挨拶をする。



いつもと同じ職場へ行くのに、

いつもと全く違う朝。



「ニナ、楽しそう。」



「んー?ふふ、楽しいですっ。」



「実家よりちょっと遠くなったけど、平気?」



「平気!朝は強いので!」



「ははっ、そっか。…あ、そうだ、これ。」



ヴァンはニナに合鍵を渡す。



「…!」



「昨日できたから、買い物帰りに受け取ってきた。使って。」



「はいっ…!ありがとうございます!」



ニナはニコニコと幸せそうな笑顔を見せる。

ヴァンもその姿を見て、幸せそうに微笑む。

お互い幸せを感じながら、同じ職場へ向かっていた。




信号待ちをしていると、声をかけられた。



「あっ、ニナ!ヴァンさん!おはようございます!」



アリサが駆け寄ってくる。



「アリサ!おはよー!」



「おはよう。」



「ほんとに同棲始めたんだ!」



「うんっ。」



ニナは照れながら答える。

信号が変わり、3人で歩き始める。



「もーっ、ヴァンさん!ニナ独り占めしすぎ!せっかくの夏季休暇だったのに、ニナと全然遊べなかったです!」



「あははっ、ごめんごめん!今度は気をつけます。」



「あ、ルドだ。ルドー!」



ニナが前方にルドを見つけ、声をかけるが、反応がない。



「ありゃ、聞こえてないね。」



「もうっ!」



ニナはルドのもとへ早足で近付く。



「おはよ!」



ニナはルドの肩をバシンッと叩く。



「ぅおっ!?…なんだニナか、ビビらせんなよ。」



「声かけたのに無視すんだもん。」



「聞こえなかったんだよ!」



ニナとルドが楽しそうに会話する様子を、ヴァンとアリサが後ろから見ている。



「…ニナって、ルド君にしか見せない顔があるよね。」



「え…そうですか?私に見せる顔と一緒だと思いますけど…。」



「………。」



「そ、そんな切ない顔しなくても……ヴァンさんにしか見せない顔の方が、多いと思いますよ!」



「…そうだといいな。」



「…まったく、どんだけ頭ん中ニナなんですか!」



「ほぼ?」



「は、恥ずかしげもなく…!…ふふ、ヴァンさんって、余裕あるように見えて、そうでもないかも?」



「全然ないね。かっこ悪い。」



「…まぁ、大丈夫ですよ。ニナ、いつも幸せそうだし、ヴァンさんの話するときも嬉しそうだし。」



「…それはとても嬉しい。」



ヴァンは微笑む。



「…はぁ、朝からお腹いっぱいです。ご馳走様でした!」



アリサはニナとルドのもとへ駆けて行った。

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