第28話


夏季休暇3日目。



ヴァンがニナを迎えに来た。



「忘れ物ない?…っていっても、遠くないからすぐ戻って来られるわね。」



「うん。ちょくちょく帰るよ。」



「ヴァン君、今日は私がニナを仕立てたのよ!どう?」



「仕立てたって…」



「とっても可愛いです。いつも可愛いけど。」



ヴァンは笑顔で答える。



「きゃああっ!もうっ!ヴァン君ったら!」



母がニナの背中をバンバン叩く。



「痛いっ!痛いって!お母さんっ!」



「…ヴァン君。同居は認めたが、結婚はまた別だ。」



「お、お父さんっ!」



ニナが焦る。



「…その時は、また報告しなさい。一緒に暮らすことで、悪い面も見えてくるだろう。それを乗り越えて、気持ちが今と変わらぬようなら、できることはしよう。」



「…!はいっ。ありがとうございます!」



「また遊びに来てちょうだいね。マリアナにも伝えておくわ。」



「はい、ぜひ。」



「じゃあ、そろそろ行くよー?」



「うん、いってらっしゃい。身体に気をつけてね。」



「失礼します。」



ニナはヴァンの車に荷物を乗せ、車に乗り込む。

ニナは窓から手を振る。そして、車は出発した。



「…ニナも行っちゃったね。」



母は少し涙ぐむ。



「…2人で旅行でも行くか。今度は、2人の時間を大切にしよう。」



「!…えぇ、楽しみね!」



2人は家の中に入っていった。





ニナとヴァンは部屋に着き、ニナが荷解きをする。



「とりあえず必要なものだけって思ったら、結構荷物少なかった!」



「うん、キャリーケースと段ボール1つは予想外だった。ニナ用のチェスト用意したけど、余りそう。」



ヴァンは笑った。



「え、これ使っていいの?ありがとう!」



ニナが喜ぶ。



そして、ニナの荷解きが終わり、カーペットの上に座ってひと息つく。

ヴァンは、ニナの後ろに座り、ニナを抱きしめる。



「お疲れ様。」



「ありがとうございますっ。」



「…実感した?一緒に住むって。」



「…だ、だんだん。」



「…ニナに触れたら、緊張解れてきた。」



「緊張?」



「挨拶に行ってから今まで、ずっと緊張してたし、ふわふわしてた。挨拶から帰ってきた時なんか、気付いたらそこらへんにぶっ倒れて寝てた。」



「えっ!?そ、そうだったんですか…」



「ほんと良かった、認めてもらえて。」



「…ありがとうございます。とっても嬉しかった。…ふふ、お父さん、ヴァンさんのことお気に入りみたいです。」



「えっ、そうなの!?仲良くなれっかな…」



「なれるなれる!今度お父さんが好きなもの、買っていきましょ!」



「うん。……はぁぁあああぁあっ。ニナぁぁあああっ。」



ヴァンはニナを強く抱きしめる。



「!?」



「今日からずっと、ニナと一緒だ。朝も昼も夜も。嬉しい。嬉しすぎる。嬉しすぎて吐きそう。」



「!…わ、私もほんとに嬉しいっ…!」



ニナはヴァンの腕をきゅっと掴む。



「…ニナ。俺、頑張った?」



「うんっ。とっても頑張ってくれました!」



「じゃあ、ご褒美ほしい。」



「ご褒美?」



ヴァンはニナの正面に来た。

しゃがんで、ニナを見つめる。



「ん。」



ヴァンは自身の唇を指差す。



「!」



ニナは顔を真っ赤にした。

さすがに、キスをしろという合図だとわかる。



ニナは、鼓動を強く感じながら、ゆっくりヴァンに近付き、軽く触れる程度のキスをした。

自分からキスをしたのは初めてだった。



「んー、もっかい。」



ヴァンは幸せそうに微笑む。



「〜〜ッ。」



ニナは、緊張しながらもう一度キスをした。

唇を離そうとしたが、ヴァンに頭を優しく押さえられた。

しばらくして、ヴァンがニナを解放する。



「………。」



ヴァンはニナを見つめた後、ニナを抱き上げベッドに寝かせた。



「ヴ、ヴァンさん!?」



「…ごめん、今日は我慢できない。」



ヴァンは頬を赤らめながら、着ていたシャツを脱ぎ始めた。余裕のない顔をしている。



「だ、だめ!今お昼っ…」



「ちゃんとニナが見れる。」



「だ、だだだだめだよ!」



ヴァンは深いキスをする。



「…ヴ、ヴァン!」



ニナは両手でヴァンの肩を押す。



「…ずるい、今だけそんな呼び方。」



「だ、だって…」



「…わかった、夜まで我慢する。でも、寝られなくても知らないから。」



「…い、意地悪…」



「ゔっ…良心が…」



ヴァンはその後、きっちり夜まで待ったが、

ニナはやはり寝不足になり、昼近くまで眠った。


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