第24話


翌朝。



「…ん…」



ニナは目が覚めた。

ぼんやりとしながら、目を擦る。


左側が温かい。

目を向けると、ヴァンがニナに背を向けて寝ている。



「…!!!」



––そ、そうだ、私…



一気に覚醒し、ボボボッと全身に熱を帯びる。

その熱さに反応したのか、ヴァンが寝返りを打つ。

ヴァンの寝顔を見て、ニナは真顔になる。



––まつ毛、長っ。ツヤツヤ。てか、寝顔美しすぎじゃない?え、二次元?いや、二次元よりかっこよ…



「…んぁ。起きたの…?」



「!?は、はい…」



「…へへ、おはよう。」



「…おはよう、ございます…」



「寒いねぇ。寒い寒い。」



ヴァンはふにゃふにゃとした笑顔でニナを抱き寄せる。



「身体、大丈夫?」



ヴァンがニナの頭を撫でながら聞く。



「だ、大丈夫です。」



昨夜のことを思い出し、ニナの体温がさらに上がる。



「…ごめんな、結局無理させた。」



「えっ、全然無理してないですよ!」



「…そっか。良かった。…今日、どっか行く?身体労って、家でゴロゴロするのも良いと思うけど…。」



「うーん…ヴァンさん、普段家では何してるんですか?」



「んー?ニナのこと考えてる。」



「そ、そうじゃなくて!」



「普段かぁ…。寝てるか、テレビ見てるか、ゲームしてるか…あ、ニナ、ゲーム好きなんでしょ?やる?」



「えっ…と、私のゲームはちょっと毛色が違うと言いますか…」



「そうなの?まぁ俺んちにあるのは1人用ばっかだからな…ゲーム好きなら、2人で簡単にできるやつ、見にいこっか。」



「はいっ!」



「…でも、もう少しこのままが良いんですけど。」



「…!わ、私も…です。」



「…ニナぁ。好き。」



「…私もヴァンさん好きです。」



「…な、呼び捨てでも良いよ?敬語もいらないし。」



「それは…ハードル高めですね…」



「えぇ、ニナの特権なのに。」



「うっ…頑張ります。」



「じゃ、練習してみる?」



「えっ。」



「名前呼んでみて。ヴァンって。」



「ぅ………ヴァン…」



「…あっ、ダメだ。俺も練習が必要。」



ヴァンはニナから手を離した。

ヴァンの身体が熱くなるのがわかる。

顔を上げると、ヴァンは手で顔を覆っている。



「…ヴァン?」



「………。」



「ヴァン。」



「………。」



「…ヴァン、好き。」



「ん゛っ。」



ヴァンからプスプスと煙が出ているようだ。

ニナの中に小悪魔な心が生まれた。




その後、2人は新しいゲームを買い、夕方まで楽しんだ。



そして、ニナを家に送る。



「結局、敬語とさん付けに戻ったな。」



「急には…練習しますっ。」



「ははっ、気長に待ってます。」



しばらくして、家の近くに到着した。



「ここまでで大丈夫です。とっても楽しかったです。ありがとうございました!」



「こちらこそ。また来てな。」



「はいっ、また行きます!」



「じゃあ、また職場で。」



「はい、また明日っ。」



ヴァンは、ニナが家に入るのを見届けて、1人で家に戻る。



「はぁ…足りねぇ。」



日が沈みかけた薄暗い道で、ヴァンは1人呟いた。



家に着き、明かりをつける。

明るくなったはずなのに、暗く感じる部屋。

寂しく無音が響き渡る。



自身が思っていた以上に、彼女の存在が大きく、強く、温かいと気付く。



––もっとお互いを知って、もっと信頼してもらえるようになったら、ちゃんと言おう。一緒に暮らそうって。



ヴァンは決意した。

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