第19話


翌日。今日は休日である。

午後1時頃、ヴァンから連絡が来た。



「もしもし。」



「ごめん、遅くなって。昨日、嬉しくて全然眠れなくて…」



「…わ、私も同じです。」



「そ、そっか…。今日、会えそう?」



「はいっ。」



「じゃあ、迎えに行く。行きたいとこ、ある?」



「うーん、今日は特に…」



「じゃあ今日は、俺の趣味紹介しようかな。」



「!はいっ!」



「じゃあ、2時頃で大丈夫?」



「大丈夫です!支度しますね!」



「うん。じゃあまた。」



ニナは早速支度をする。

アリサに教えてもらった、簡単なヘアアレンジを実践した。



––今度、メイクも教えてもらおうかな…。



ニナはそんなことを考えつつ、服を選ぶ。





「出かけてくるねぇ。」



ニナは両親に伝える。



「…ニナ、最近外出が増えたね。なんだかオシャレしてるし…アードゥ探しに本腰入れ始めたの?」



母が聞く。



「えっ…と、そんなとこ。」



本当のことは、まだ言えそうにない。



「アードゥパーティーにもちゃんと行ってるの?」



「い、行ってるよ!ドレスコード無しのやつ!」



「そうかい!良かった、ニナもやっと幸せになれるね。」



「…私、今も充分幸せだよ?お父さんとお母さんと一緒だし、大事な人達もいるし。」



「ニナ…。ほ、ほら。出かけるんでしょ?行ってきな。もう大人だから、とやかく言わないけど、事故には気をつけてね。」



「はーい!行ってきます!」



父は何も言わずに、ただニナの後ろ姿を見つめていた。





「ニナ。」



ヴァンが既に到着している。



「こんにちは、お待たせしました。」



「そんな待ってないよ。…今日も可愛い。」



「ゔ、あ、ありがとうございます…。…ん、車?」



「うん、俺の趣味はドライブ。付き合ってくれる?」



「もちろん!楽しそう!」



「よし!じゃあ出発!」



今日は昼過ぎの出発であったため、片道1時間ほどの地まで足を延ばし、食べ歩きや観光をした。



そして、あっという間に夜が来た。

ニナを家の近くまで、車で送る。



「今日はありがとうございました。」



「あっという間だったな。」



「まぁ、出発が遅かったですしね。」



「また行こう。」



「ぜひ!」



「…明日も会える?」



「あ、明日はすみません、アリサと約束があって…」



「そっか。じゃあ夜、電話する。」



「はいっ。待ってます。…じゃあ、おやすみなさい。」



「…うん、おやすみ。」



ニナは車を降りた。



「…明日は会えないのか。」



ヴァンは呟いた。



––ガチャ。



ニナが車のドアを開け、ひょこっと顔を出した。



「ん?忘れ物?」



「あの…運転するヴァンさん、かっこよかったです。もっと好きになりました。…じゃ、おやすみなさいっ!」



ニナはドアを閉めて、走って帰って行った。



「……はぁあ゛ぁあぁあ゛あっ…。」



ヴァンはハンドルを握りしめ、思い切りハンドルに額をぶつける。




––好き…は?好き…かわいい…むり…俺…どこまで耐えられ…いや…ニナを大切にするって決めたんだ…ニナが心を許すまで…ゆっくり……ゔゔぅ…



ヴァンは1人、己と戦っていた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る