第21話



ニナとヴァンが付き合い始めて3ヶ月。



ヴァンは悩んでいた。



––今日もニナが可愛い。というか、日に日に可愛くなってる。可愛いが爆発している。俺の想いも溢れすぎて川。むしろ湖。もはや海。泳げる。ただ、大切にしすぎて、未だに手すら繋いでいない。あれ?俺は学生さんですか?いや待て、学生に失礼だ。とにかく、俺はもっとニナに触れたい。キスしたい。だが、ニナにとって初めての恋人。まぁ、ぶっちゃけ俺もニナにこだわりすぎて、初めての彼女。そりゃもう拗らせている。あ、でもニナ探しのためにパーティー参加してたから、その延長で諸々経験はありますよ?お互い気持ちはなかったけども。それに俺の口調だって普段もう少し荒いのに、アードゥを装ってた時や上司の時の口調が抜けきれず、ごちゃ混ぜでなんかもうよくわからなくなっている。いろいろタイミングがわからない。でもとにかくニナに触れたい。先に進みたい。いやしかし…



「お待たせしました。」



ニナが化粧室から戻ってきた。



「おかえり。じゃ、次行こっか。」



「はいっ!」



2人は今、水族館に来ている。

イワシの餌やりは、リベンジを果たせた。



「今月のイベントは、クラゲ展みたいですよ。」



「へぇ、どんなだろうな。」



「楽しみですっ。」



ニナは張り切っている。



––やっぱ可愛い。くそ可愛い。





クラゲ展ブースへやってきた。

薄暗い空間で、幻想的な色合いとクラゲのコントラストが美しい。

そしてここには、アードゥのカップルが多く来ていた。

手を繋いだり、腕を組んだり…ヴァンの悩みを平気でやってのけている。



ニナを見ると、クラゲに夢中で周りの様子に気付いていない。

そこがまた可愛い。



––いや、でも、今こそ…



「…ニナ。」



「はい?」



「…今日、俺酔ってないですけど。」



「…ん?」



「ん。」



ヴァンが照れながら手を下の方でパクパクさせている。



「…ん?」



ニナも真似をして、手をパクパクさせている。

さすが恋愛初心者のニナである。



「…いや、可愛いけど。…手、繋ぎませんか。」



ヴァンの耳が赤い。



「…!」



ニナは、顔を赤らめながら手を握った。



そして、周囲の人間は思った。

––いい大人がピュアすぎて見てられない。






そして、夜。

2人はニナの家に向かって歩いている。



「それで、その時マリィがケーキひっくり返しちゃって!」



「ははは!そりゃ災難だったな。」



ニナの家族の話で盛り上がっていた。



そして、ニナの家が見えてくる。

あと少しで、ニナと離れてしまう。



「…あの、さ。」



「?」



「…今日…俺んち、来ない?」



「えっ…」



「もちろん無理にとは言わない!でも…まだ一緒にいたい。」



「…い、行きます。行きたいです。ヴァンさんち。」



「!」



2人とも心臓がバクバクしている。



「その…泊まってく、よな?」



「えっ…えと…」



「…明日も休みだし。」



「お、親に連絡しますね。」



ニナは、アリサの家に泊まるとメッセージを入れた。



「じゃあ、行こ。」



ヴァンは手を差し出す。

ニナは黙って手を握り、ヴァンの家に向かって歩き出した。


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