第22話
歩いて20分程で、ヴァンの住むアパートに着いた。
「お、おじゃましまぁす…」
「どうぞー。」
ヴァンの部屋は、ワンルームで物が少なく、書類や小物は綺麗に整頓されていた。黒や白の家具が多い。
「…綺麗ですね、お部屋。」
「そう?物がないだけだよ。飲み物出すから、適当に座ってて。」
「は、はい…」
ニナは、隅っこの方に、ちょこんと正座した。
「…ぶはっ、なんでそんな隅っこにいんの!」
「お、収まりが良かったので…」
「…はぁ、可愛いすぎ。まったく…。」
ヴァンは飲み物をテーブルに置き、ベッドの側面に寄りかかって座る。
「こっち。おいで。」
ヴァンが隣をポンポンと叩く。
ニナは隣に膝を抱えて座った。
「何飲む?ビールかお茶だけど…」
「じゃあ…ビールで。」
「…お酒で逃げようとしてない?」
「えっ、まさか。」
「そう?じゃあ、はい。」
ニナに缶ビールを渡す。
ヴァンも缶ビールを手に取った。
「かんぱーい。」
「乾杯です。」
2人はビールを三分の一程度一気に飲んだ。
「あ、この時間何かテレビ見てる?」
「特に見てないです。」
「俺の好きな番組やってるから、つけていい?」
「どうぞどうぞ。」
ヴァンはテレビをつけた。
バラエティ番組がやっている。
「…あ、これアリサとルドが好きなやつだ。」
「あ、そうなの?これ面白いよ。俺も好き。」
「そうなんだ…私もこれから見ようかな。」
「…俺が好きな番組だから?」
「うん。」
ニナはニコニコしながら言う。
「…くそかわ。」
ヴァンは飲み物をテーブルに置いた。
「?」
「…まだ酔ってないだろ?」
「え、はい。」
「…キスしても、いい?」
「!!?!?」
ヴァンはニナの肩に手を回し、引き寄せた。
そして、ニナの頭に額を合わせる。
「キスしたい。」
「あっ、あぁぁのっ…」
「だめ?」
「…ッ聞かないでっ!…」
ニナはきゅっと目を瞑り、顔を真っ赤にする。今にも爆発しそうである。
ヴァンは、ニナの顎を持ち上げながら、
ゆっくりニナの唇に近付き、
そっと触れた。
「ニナ、好き。」
額を合わせ、想いを口にする。
「…。」
先程より、深く触れる。
少し苦い。ビールの味。
「好き。」
ヴァンは、もう一度想いを囁く。
ニナは、心臓の音がうるさくて、テレビがついているはずなのに、何も聞こえない。音が聞こえてしまいそうで、彼の耳を塞ぎたくなっている。嬉しさと恥ずかしさが、みぞおちに集まり、ぎゅうと締め付けている。熱も、39度まで上がったような気分だ。
ヴァンは、ニナの頬に手を当て、親指で撫でた。
「わ、私も、好き。」
ニナは緊張しながらも、一生懸命伝えた。
「…かわいい。かわいい、ニナ。好きだ。」
もう一度唇が触れる。
先程より、もっと深く、もっと長く。
「……ッッぅうぅッ。」
ヴァンはニナを解放し、頭を抱えて高い声で唸った。
「えっ、えっ?ど、どうしたんですか?」
ニナは慌てる。
「…ずっと、もっとニナに触れたいって思ってたから、すげぇ嬉しいのと、止まらなくなりそうで抑えてるのと…もうぐっちゃぐちゃ。」
ヴァンは膝を抱えて顔を埋めながら言った。
ニナは、その言葉にボボボッと顔から火が出る。恋愛初心者のニナは既にキャパオーバーである。
しかし、ニナは少し成長していた。
と言うよりも、恥ずかしさより嬉しさが勝っていた。
勇気を振り絞ってヴァンの袖を摘む。
「…と、止まらなくなっても…いいです、よ…?」
「!?!!?」
ヴァンは驚いて、顔を上げてニナを見つめる。
ニナは、袖を掴んだまま目を逸らしている。
「ニナ…そんな言葉とテク…どこで覚えたの…俺以外に絶対言わないで…瞬殺だから…」
「いっ、言いませんよ!」
––♪
ニナのスマホが鳴った。
「あれ、誰だろ?」
ニナが鞄からスマホを取りに行くため振り返る。
しかし、ヴァンがそれを阻止した。
ニナを再度引き寄せ、キスする。
「今は…やだ。俺のことだけ考えて。」
「!?!!」
ヴァンは、顔の彼方此方にキスをした。
ニナはきゅっと目を瞑り、自身が蒸発してしまいそうなのを抑えている。
そして、唇にキスをした後、首にキスをする。キスがだんだん下へ下がってくる。
「!?ちょ、ちょっとまって!」
ニナは慌てて、ヴァンの肩を押さえる。
「…止まんなくてもいいって、ニナが言った。」
「あ、あぁぁあの、でもでも…」
「ニナが言ったもん。」
ヴァンは、ニナの服の中に手を入れて、腹を触った。
ニナは目がぐるぐる回る。
「おっ、お風呂!!ください!!!!」
「ニナ汚くねぇよ。」
「私がやだ!!!」
「……。」
ニナが嫌がることはしたくないので、仕方なく解放する。
「一緒に入る?」
「は、入りませんっ!」
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