第15話



翌日、仕事の昼休みにニナはアリサに捕まり、昨日のことを根掘り葉掘り聞かれた。




「おぉい…アンタ達、いい歳してピュアピュアかよ。ピュア神様もびっくりだわ。もどかしい。とっくに家行ってると思った。」



アリサが、野菜ジュースをストローで吸いながら言う。



「そ、そんなこと言ったって…付き合ってもないし、私リアル恋愛経験ナシの雑魚だし…」



「ぶっ…ま、まだ付き合ってないの!?てっきり昨日…もう、告白しなよ!好きなんでしょ?」



「す、好きかは…まだ…」



「…はぁ、こりゃヴァンさん大変だ。」



「…嫌われる、かな?」



「いやぁ、あの人もたぶんニナしか見えてないからなぁ。でも、いつまでも燻ってると、アードゥとはいえ誰かに取られちゃうかもよ?」



「ぅ…。」



ニナは、クロエのことが頭に浮かんだ。



「それが嫌なら、ちゃんと伝えないとね。」



「…うん。」





ヴァンは今日、朝から一日中外回りで、勤務時間中に戻ってくることはなかった。



「…顔、見られなかったな…」



ニナは帰宅後、自室で呟いた。



––たった一日会わなかっただけなのに。

何年も会ってないような気持ちになる。



ニナは、ヴァンに出会ってから漫画やゲームが手につかなくなっている。楽しみにしていた新作ゲームも、途中のままである。



その代わり、スマホを眺める時間が増えた。

ヴァンからの連絡を待っている自分がいる。



「…まだ、仕事かな…」



ニナはスマホの真っ暗な画面を見つめる。



––♪



「あっ!」



ヴァンから着信。

ニナはすぐに出た。



「はいっ。」



「びっくりした…電話出るの、早いな。」



「す、スマホ!ちょうどいじってたので。」



「ははっ、そっか。」



「お仕事、終わりました?」



「うん。今帰ってきたとこ。」



「お疲れ様でした。」



「さんきゅー。ニナは家?」



「うん、家です。…あ、あの!」



「んー?」



––い、今こそ…



「えと…その…す、す、」



「ん?」



「す、水族館!楽しかったですね!」



「楽しかった!また行こうな。今度はイワシ!」



「はい…ぜひ!」



「…今日は会えなかったから、声聞きたくて電話したけど…明日早いんだ。今日はこのへんで、ごめん。」



「あ…はいっ。お疲れ様でした!」



「おつかれ。おやすみー。」



「おやすみなさい。」



電話が切れた。

ニナは、真っ暗な画面のスマホを両手で握りしめる。



––ダメだ。私。

寂しいって思っちゃってる。

もっと話したいし、会いたいって思ってる。

あの人が笑うと嬉しいし、もっといろんな表情が見たい。



あの人のこと…好きだ。

もう、誤魔化せない。




「好き…なんだ…。」



ニナは1人呟いた。

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