第3話


2日後。



「ふぁ…。おはようございます。」



ニナは眠そうな顔で出社する。

夜遅くまで新しいイケメンを攻略していたからだ。



ニナは銀行員である。

地域に根付いた地方銀行に勤めている。



「おはようニナ!ねぇ〜、昨日のテレビ見た!?大笑いしちゃったんだけど!」



「あー、ごめん見てないや。」



「もぉ、またゲーム!?ずっと部屋に引きこもって…身体腐るよ!?」



「こわいこと言うなし…」



朝から元気な彼女は、アリサ・シトリン。

レモン色の長い髪を後ろで1つに結わえている。瞳は太陽のように輝くオレンジ色。



「俺は見た!最後のドッキリラッシュやばかったよなぁ!」



「うんうん!アンタとはテレビの趣味だけは合うんだよねぇ。」



「何だよその嫌味な言い方!」



この男性は、ルド・ツァボライト。

若草色の髪で、瞳はグレー。ハキハキとしつつ、思いやりのある好青年である。



この3人は同期であり、昼食もよく一緒に食べる。全員、アードゥはまだいない。



「おいニナ、たまには外にも興味持った方がいい。どんどん置いてかれて、気付けば寂しい人間になってんぞ?」



「まあ、そーなったらそーなったで仕方ないよねぇ。」



「うっわ他人事…。ニナ、私達がいなくなっちゃってもいいわけー?」



「うーん、それは困る!」



「ふっ、かわいいやつめ。」



「…私達、ニナを甘やかしすぎな気がする。」



「それは、わかる。」



「お前が言うな。」



そんな会話をしていると、始業のチャイムが鳴る。まずは朝礼があるため、一箇所に集まる。



「…えー、以前から話していたが、今日からここで新しく副支店長として働いてもらう、ヴァン・タンザナイト君だ。彼は別の支店で副支店長をしていたから、勝手はよく知っている。しかし、そうは言ってもここは初めてだから、助け合って業務に励んでほしい。よろしく頼むよ。」



「この度、こちらの副支店長として働かせていただきます、ヴァン・タンザナイトです。まだまだ未熟者ですので、ご迷惑おかけしてしまうこともあるかと思いますが、よろしくお願い致します。」



皆は拍手で迎え入れた。

ヴァンはほとんどの女子がうっとりする程の美形であった。髪は濃紺。切長の目で、瞳は透き通った深めの藍色である。

そして、ひと通りの連絡が終わり、各々業務に取りかかった。






昼休み。

ニナとアリサとルドは昼食をとり終え、3人で話をしている。



「ヴァン様ほんとーに素敵!噂は間違いじゃなかったのね!」



アリサが目を輝かせながら話す。



「噂?そんなのあったっけ?」



「ニナ…本気で言ってる!?ずっと前から噂あったじゃん!前の支店で成績トップで、若くして副支店長になったイケメンがいるって!それがヴァン様だよ!」



「そ、そんなことも言ってたような…ないような…」



「うわぁ…アンタマジで一旦ゲームから離れなよ!」



アリサがニナの肩をばんばん叩く。



「いででっ。暴力反対!」



「まーでも、すげぇよなぁ。まだ28歳だろ?俺らと2つしか変わんねーもん。」



「うんうん。でも、すごく謙虚で腰が低くて…。はぁー、あの人がアードゥだったら、どんなに良かったことか…」



「そんなにいいんだ。へぇー。」



「あの人が、アードゥだったら…」は、アリサのお決まりの文句だ。アリサはアードゥパーティーに行ってはいるが、アードゥにそれほど固執していない。だからアードゥ以外にもどんどん興味を持つし、キャーキャー言う。ニナには、それが心地良かった。



「あ、そろそろ時間だ。戻ろう。」



ルドが時計を見て行った。



「おっし、目の保養がいるから午後も頑張れるぞー!」



「はは…。」



3人は戻っていった。

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