第2話

翌日。



「おはよぉ…」



ニナは遅めの起床。ボサボサ頭のまま、リビングへやってきた。ピンクの綺麗な髪が台無しである。



リビングが何やら騒がしい。



「おはよう!お姉ちゃん!やったよ!ついにアードゥに出逢えたの!!」



「えっ…」



「今日はお祝いをするから、ニナも手伝ってちょうだい!」



母が張り切っている。



「マリアナも…いよいよ巣立つのか…」



父が涙ぐんでいる。



「何言ってんの!これからあちらのご家族と顔合わせして、2人で暮らすための準備をして…ってやることたくさんなんだから!」



母が父を叱る。



「はぁ…本当に素敵な方だった…。ひと目見た瞬間に、電撃が走ったもの…!これが恋というのね…!」



マリアナは、うっとりとしている。



「…そんなの、恋なんかじゃない。」



ニナは、誰にも聞こえないくらいの小さな声で、ボソッと言った。



「ん?お姉ちゃんなんか言った?」


「ううん。マリィ、必ず幸せになってね。」


「うん…!ありがと、お姉ちゃん!」



ニナは、複雑な気持ちのまま妹を祝った。





後日、マリアナのアードゥの家族と顔合わせが行われ、ニナも無理矢理連れて行かれた。



アードゥ含め、みな物腰の柔らかい優しい人達だった。



マリアナは運が良かった、とニナは少し胸を撫で下ろした。それと同時に、顔を紅潮させながらお互いを見つめるマリアナ達を見ると、魔法の恐ろしさを感じた。



「ニナさんは、まだアードゥ探しの途中なのかしら?」



相手の母親が、ニナに問いかける。



「えっ、あー、はい、まぁ…」



「全く、出不精で困ってるとこなんですよ。」



母が呆れながら言う。



「あら、そうなの。ふふ、きっと家族が大好きなのね。でも、アードゥに出逢えればきっとより素晴らしい人生になるわ。」



相手の両親は、お互いを恋する瞳で見つめ合う。



「あはは…。」



ニナは、苦笑いして目を逸らす。



見つめ合うマリアナと相手。



…おふっ。



ニナはまた目を逸らす。



微笑み合う我が両親。



…ゔっ。



与えられただけの偽物の恋に吐き気がする。

ダメだ。ここに居ると気が狂いそう。



「わ、私、ちょっとお手洗いに…」



そそくさとその場から離れる。



出る予定もなかったものを無理に押し出し、トイレを出る。



手を洗い、髪を整える。



…戻りたくない。無理矢理捻り出されているようなあの笑顔たち、見たくない。

こんな国、出て行ってしまいたい。

しかし、国外へ出ることは禁止されており、重い刑罰が科せられる。

自分と結ばれるはずであったアードゥが行き場をなくしてしまうからだ。



私は自由に恋愛をして、自分が自分でありたいだけなのに。



…そう思う私は、やっぱり歪んでいるのだろうか。



「…はぁ。…魔法なんて、クソくらえだ。」



洗面台の前で、独り呟いた。

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