リモート飲み会with焼き鳥機
宵埜白猫
また会う日まではリモートで
先日卒業式が終わり、久しぶりに
日をずらす事も考えたのだが、この先しばらくは会えそうに無かったので、昨今は生活に馴染み深くなったリモートで行う事になった。
「久しぶり。ちゃんと聞こえてるか?」
「おう夏樹、聞こえてるぞ」
テーブルの上に立てたスマホから、冬弥の声が響く。
「でも一年前とはいろいろ変わったよな」
「ああ。居酒屋にはあれ以来行けて無いし、俺たちも大学卒業したし」
冬弥の言葉に、夏樹が感慨深そうに答えた。
「夏樹は出版決まったしな」
そう付け足す冬弥に、夏樹が照れくさそうに頬をかいた。
「……ほんと、お前に相談してよかったよ。ありがとな、冬弥」
「気にすんなよ。……それより、そろそろ飲もうぜ」
「ああ」
画面越しに、二人が缶チューハイのプルタブを開ける。
そしてそのまま缶を掲げ、
「乾杯!」
声を揃えて言った後、二人はチューハイを煽る。
「はぁ……やっぱ缶チューハイってきついよな」
「そうか? 夏樹が酒に弱いんじゃね」
「いや、いつもお前とおんなじ量飲んでるだろ」
「それもそうか」
缶を置いて、つまみに手を伸ばす。
夏樹の前にあるのは、いつもおなじみの柿ピーだ。
「缶チューハイと一緒に食うといつもより美味く感じる……ん? 冬弥は食わねえの?」
「ああ、俺は今作ってるとこ」
「作る?」
そんな会話をしているうちに出来上がったらしく、冬弥は画面の下に手を伸ばす。
「これ」
言いながら冬弥が夏樹に見せたのは、綺麗に焼けた焼き鳥だった。
「え? お前ずっと焼き鳥焼いてたの?」
「うん」
「俺にも一本くれー」
画面に手を伸ばす夏樹に、冬弥が苦笑する。
「残念だがやれねぇよ。リモートだから。……あ、でもそろそろ」
冬弥が何かを言いかけたところで夏樹の部屋のインターホンがなった。
「あ、悪い。ちょっと待っててくれ」
「おう」
どこか楽しそうに笑う冬弥を置いて、夏樹は玄関に向かう。
ドアを開けると、有名な某通販会社の箱が置いてあった。
頼んだ覚えは無いが、宛名は確かに自分のものなので、とりあえず部屋に持って帰る。
「なんか荷物届いてた」
「あーそれ俺から。出版祝い。開けてみ」
促されるままに封を切ると、中からは焼き鳥機なる物と、串に刺さった状態の鶏肉がそれなりの数で入っていた。
「おお! ありがと冬弥!」
それを見て子どものようにテンションをあげる夏樹に、冬弥は目を細めた。
「ああ、どういたしまして。……お返しは出世払いでいいぜ」
「頑張って売れなきゃな」
楽しそうにそう返して、夏樹は早速焼き鳥機の準備をする。
「じゃあ改めて、俺たちのこれからの未来が明るいものであることを祈って!」
「乾杯!」
いつか、また会ったときに響くグラスの音を想像しながら、二人は再びグラスを掲げた。
リモート飲み会with焼き鳥機 宵埜白猫 @shironeko98
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