第7話 武道館の前での話
私達は、
武道館の入口には、学校関係者と思しき退魔士官制服の三人と、退魔士であろう生徒達。それに何故か、天軌お兄様と恵美瑠お姉様が待っていた。
「紫凰院学園に所属する退魔士生徒の諸君、よく来てくれた。二,三年生の生徒諸君は知っていると思うが、私は退魔士育成の責任者を任されている
私達を見回してからそう名乗った。庵野 勝信と言う人の第一印象は、鋭い眼光に黒髭もじゃもじゃのクマおじさんである。別にクマの獣人って訳じゃないからね。
政府所属の高官退魔士の黒制服を着ている事から、本物の政府所属の教職員の様だ。しかも、特級退魔士な上に准将閣下じゃないですか。
ちなみに、庵野閣下は、髪も髭も目も服も黒一色の全身真っ黒だ。
あ、制服には金の飾り紐が付いてるから、黒一色じゃなかったね。
「新入生の諸君には私の補佐を務める二人の補佐官を紹介して置こう。
視線で、二人の補佐官に自己紹介を促す庵野閣下、顔が怖い。
「はい。私は、政府所属特級退魔士、観螺久 夏美と言います。政府より大佐の官職を頂き、庵野の補佐官おります。新入生の皆さん、よろしくお願いいたしますね」
菫色の髪と青い瞳の、整った顔立ちをした美人なお姉さんが、観螺久 夏美さんだ。紫系の色の髪は、秋素戔宮の色を感じさせ親近感を覚える。制服は濃い赤紫色で、暗めの色合いだ。閣下に、敬称を着けずに名を呼んでいるのは、退魔士としての格が同格だからだろう。退魔士としての階級の方が、元々重要だからね。
「ハッ!
長身にガッシリとした身体つきで、短い黒髪に四白眼の所謂凶相だが、良い人そうな雰囲気とオーラがにじみ出ている。観浄眼で観ても良い人そうなので、特に警戒する必要はなさそうだね。
ここで、退魔士の階級について、話して置こうと思う。
退魔士の階級は、下は五級から始まり一級まで来て、そこから特級,超級,神級が一番上となる。
五級四級の退魔士は、下級退魔士に位置する。四級退魔士の仕事は、主に街中などに現れる大した力もない、雑魚怪異や魔性の討伐がメインだ。特に五級退魔士は、退魔士になってから1年間はこの階級固定で、退魔士としての仕事に慣れる事が目的の新人枠だ。斯く言う私も、新人ひよっこ枠の五級退魔士だよ。
しかも、昨日五級退魔士になったばかりのね!
ふぅ、三級二級の退魔士は、中級退魔士にあたり多くの退魔士資格を持つ者が、このクラスの退魔士となる。二級退魔士に為ると、指揮権を有する様になる見たいで、軍属なら尉官クラスに当たるらしいね。彼らの仕事は、明確に人に害を及ぼす力を持った、怪異や魔性の討伐がメインで、特に魔物と呼ばれるタイプの魔性の討伐が一番多いそうだ。
ちなみに魔物は、神以外の魂を持つ存在の精神活動によって生じる、マイナス化したエネルギーが何かしらの核を得て生じる存在で、どの様な形で有れ私達の世界以外にも、必ず居るのが魔物なんだそう。秋素戔宮家のお三方に聞いた話だけどね。
一級退魔士は、上級の退魔士で中級以下の退魔士に対する指揮権を持つ。彼らは単独で、数十人単位の死傷者を出す怪異などの討伐する力を持つ、指揮能力と強力な単独戦闘能力が一級の条件だ。軍属なら佐官クラスの指揮権を持っている人達って感じかな。
特級退魔士は、超人の域に足を踏み入れた者達だ。数百から数千人規模の被害を出す、怪異などの存在を討伐を可能にする力を持ち、世が世なら皆英雄と呼ばれる様な力を持った人達である。なので、特級に指揮能力は求められていない。勿論あった方が良いんだけどね。ちなみに、特級退魔士と云うだけで、軍の将官クラスの指揮権を持ってるよ。
超級退魔士は、その力が伝説上の存在に匹敵するまでに至った者達の事だ。その力は国家規模の厄災にも対処可能で、退魔士の実質上のトップとされる。何故かと言うと、神級退魔士の力は規格外の為、国の管理下に置こう等考えるだけ無駄である。
そのため、超級退魔士が国家に属する退魔士のトップと為っている。超級退魔士は、元帥や大元帥、又は総帥クラスの指揮権を持っていると思えば良いね。
神級は、神の本霊相手でも、ある程度は対処できると云うのが最低基準となるため、神級退魔士はピンキリである。上は神域に足を踏み入れた超越者たる現人神、下は秘法秘術を用いて下位神の本霊を辛うじて足止めできる程度。とは言え超級より明らかに格上で、国家を超える力を持っているため、彼らの行動を制限できるのは同じ神級の退魔士か、神だけである。
ちなみに、退魔士の資格を得たからと言って、政府に所属する必要は無い。
政府所属は、公務員だから安定してるってだけだね。
だから、所謂フリーの退魔士とか、企業所属の退魔士なども勿論沢山いるよ。
まあ、どちらにせよ政府の緊急招集には、応じなければならないけどね。
あっ家は、秋素戔宮の本家と本家に近しい分家は、討滅士を名乗る関係も有って、秋素戔宮グループの所属の退魔士と云う事になってるよ。
「宜しい。では、大掃除の詳しい話は武道館の中でしよう」
そう言うと、庵野閣下は宇童大佐と共に、武道館の中に入って行った。
生徒達も、それに続いて武道館の中に入って行く。
観螺久大佐が私達の方に近づいて来る。何か用でもあるのかな?
「あなたが秋素戔宮 真緒さんで良いのかしら?」
ん? 如何やら私に用があった見たいだね。
「はい。私が秋素戔宮 真緒ですけど、何か御用でしょうか観螺久大佐?」
「そうなのね! 六花家の
六花 潤と六花 更紗は、秋素戔宮の本家に近い血筋の分家一族で、秋素戔宮の親戚の中では、私と一番仲の良い双子の姉妹だ。
私より二才年上で、関西領京都にある紫凰院の姉妹校。金凰院学園で今年中学三年生になってる筈だね。ちなみに、ギャルっぽい見た目の美少女で、勿論ものすごく可愛いんだけどね。
「潤ちゃんと更紗ちゃんにですか。すると観螺久大佐は六花家にご関係が?」
「ええ、二人のお兄さん。
なるほど。観螺久大佐、見た目も性格も確かに勇騎さん、好きそうだなぁ。
来年結構と云う事は当然婚約もしているんだろうし、何より人の様に魂を持つ存在は、霊性が高く為れば成る程、本当に好きな者同士でないと、恋人や夫婦のアレやコレが出来なくなるんだ。要するに、結婚の予定が立てられると言う事は、如何やら観螺久大佐は本当に、私の親戚になる人の様だね。
六花姉妹とも仲が良さそうだし、私も仲良く出来そうだ。
「それじゃ、夏美さんと呼ばせて貰います」
「よろしくね。真緒ちゃん」
「はい」
とっても嬉しそうな夏美さんに、何故か頭を撫で撫でされてます。
しおちゃんが、物凄い顔で夏美さんを見てるけど、全く気にしてないね。
「そろそろ、良いかな? 観螺久大佐」
如何やら、天軌お兄様が痺れを切らして話し掛けてきたようだ。
天軌お兄様は、短め黒髪に両目共澄んだ紫色の瞳をしいる。美少年風の線の細いイケメンで、本人的には身長が低いと、コンプレックスらしいんだよね。
天軌お兄様も、一応172cmは有るんだけど、伯父様が190cmと大きいからね。それに私も、身長は160㎝は欲しいからしょうがないよね。
「これは秋素戔宮 天軌殿。お待たせしてしまい申し訳ございません!」
「そんなに畏まらなくても大丈夫よ。天軌にちょっと堪え性が無かっただけなんだし、貴方は来年には私達の身内になるのだから、気にしなくて良いわよ」
夏美さんをフォローする様に話し掛けて来たのは、秋素戔宮 恵美瑠お姉様だ。恵美瑠お姉様は、黒に近い紫色の長い髪に、ルビーを思わせるキラキラの紅い瞳が特徴的な、色白の線の細い美少女然とした人だ。モデル体型で手足が長くスタイルも良い、それに身長も161㎝あって良いなぁ。
ちなみに、如何でも良いかも知れないけど、私も力を使っていると髪が紫色に見えるらしい。瞳の方も異能ではない普通の力を使っている時ですら、源泉が目に有る所為か光って見えるらしいよ。
それと、夏美さんが何故、天軌お兄様と恵美瑠お姉様に、畏まっているのかも話して置くね。理由は簡単で、二人が超級退魔士資格を有しているからだね。
更に言うと広継伯父様は、現在この国に存在する11名の神級退魔士の一人だ。
神級退魔士が、11人も居ると聞くと多く感じるかもしれないが、世界を容易に滅ぼす力を持った神々が、然したる力の制限も無く、活発に活動しているこの世界に於いて、たったの11名しか対処できる者が居ないのである。
現在の一国家としては多い方だと言うけど、まあ心もとないよね。
「恵美瑠様……。いえ、恵美瑠さんありがとう」
「ふふっ、どういたしまして」
「な! 恵美瑠それは無いだろ。お前もじれていただろうに……狡いぞ」
兎に角、天軌お兄様が悪いと言う構図になり、この話は終わりのようだ。
「それでは、私は先に行きますね。武道館中で説明が有るので、急いで貰えると助かります」
そう言うと、夏美さんも武道館に入って行くのだった。
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