第6話 異星の技術と神々の派閥

 入学式前のホームルームが終わり、講堂での入学式が始まる。小学校の時もそうだったけど、校長先生の話は長いよね。

 さっきも貧血で三人ほど倒れたし、校長先生の話って実は呪術だったりしない?


 そうそう、入学式の父兄席には、天軌お兄様と恵美瑠お姉様も出席していて、私の名前を呼び泣きながら手を振っていました。

 お父さんとお母さんも凄く困った顔をしてて、私も物凄い恥ずかしかったよ!

 それに、入学式で名前を呼ぶのは、流石にやめて欲しいよ!


 教室に戻ると、先生と各個人へのMミアのオープンアカウントの交換をする。これは現代社会で公的な機関に属し生活するには必要な事なんだ。

 交換した先生のアカウントから、学校の各種連絡事項が私のMミアのオープンアカウントに送られてきた。


 MミアとはGOFMID、つまりゼネラルオーガニズム フェムトマシン インターフェイスデバイスと呼ばれる、超極小の生体機械を使った総体的ネットワークシステムの総称であり、このシステムのOSの事だ。一昔前の、ナノマシンとか電脳とかそう云った物を、より高度に一つに纏め上げた物、と言えば分かるかな?

 今の時代、何でもMミアで電子機器は制御されている。

 オープンアカウントとある様に、プライベートアカウントも存在し、公私を区別できる様に為っている。プライベートアカウントの秘匿性は、文字通り神レベルの物と成っているので、皆安心して使用できるんだよね。


 ちなみに、このMミアは神レベルと言った通り、普通の人間が作った物では無い。第三次世界大戦のおり、殲滅派と理想派の神々の小競り合いのドサクサに紛れて、四柱の異星の神とその庇護下に有る種族が、地球外から地球にやって来て定住したのだ。

 そんな彼らの神様達は、家の神様達と同じ守護派の神様で、地球に住まわしてもらう代わりとばかりに、大戦と惑星規模の超巨大地震からの復興に大いに協力してくれた。そして、その時神とその庇護下に有る種族の科学技術で作られたのが、生体型フェムトマシンと、それを利用した大規模ネットワークに、それを運用する為のスーパーOS。それら、全部ひっくるめて出来たのがMミアシステムだ。

 Mミアって言葉は、彼らの言葉で、新しい世界と云う意味らしいし、それに相応しい物が出来たんだよね。


 勿論これには、人の持つ力を目覚めさせるためのシステムも組み込まれている。

 異星の神と科学の力を、そう簡単に信用して良いのかと思うかもしれないが。

 そこは、人類を含む人種族に最も友好的な神々の派閥である、守護派の神様達が保証してくれるので安心できると云う訳だ。

 この神様達以上に信用できる神々は、この世界には存在しないからね?


 取り合えず、私が知ってる神々の派閥の話をして於いた方が良いかな?

 第三次世界大戦の直接の原因の二つの派閥から、先ずは殲滅派の神々の事から。

 殲滅派は良くない物や危険な物、その可能性がある物全てを殲滅する、過激な善性の神々の集団なんだ。家のお三方曰く、彼らはよろしくない物に過激すぎて、話が通じない事が多々あるそうだよ。

 この神々を信仰する人達にも、気を付けた方が良いかもね。

 大戦の原因と為ったもう一つの神々の派閥が理想派の派閥だ。

 理想派の神々は、理想派なんて言うんだから、善性の神がメインなのかなって思うでしょ? でも、理想の為なら何でもする、テロリスト集団の様な神々が、この派閥なんだよね。この派閥は悪性の神々と、性質的には善だけど、「汝の成したいように成すがよい」とか言いそうな、どこぞの暗黒神の様な考え方をする神々が属している過激派派閥なのだ。

 つまり、第三次世界大戦は、神々の過激派派閥同士の衝突によって、大勢の人達を巻き込んで起こったのが、第三次世界大戦だったって事なんだよね。


 次は維持派の神々かな。

 維持派の神々は、世界の存続をメインに置いた神々の派閥で、自然神とか精霊神と呼ばれる様な神々に、穏健派の善性の神々何かがメインに属している派閥だね。

 ここの神々は、余程の事が無いと動かないから、余り当てには出来ないんだよね。第三次世界大戦の時は、殲滅派と理想派のやらかした事がアレだったから、流石に動いたそうだけどね。


 次は改革派の神々。この派閥は、常に世界に変化を与え、魂の進化を促す事を目的としたトリックスター集団だ。何かしらの変化を起こそうと、世界に種を蒔き色んな所にちょっかいを出す。つまり碌でもない混沌の神々の集団である。


 あとは、必要悪派の神々かな。この派閥の神々は、穏健派の悪性の神々で割と話の通じる神が多く。守護派との関係はそんなに悪くないのだ。「悪には悪のルールがある。そして、悪が無ければ善が何かなど分からない、善悪の区別の為にも悪は必要だ」そんな感じの神々の派閥である。ぶっちゃけ殲滅派の神々よりマシである。

 他にも派閥は有るらしいが、私が知っているのはこの位である。勿論派閥に属さない神もいるが、信用できるかと言えばそんな訳ない。

 と言う訳で。家のお三方も属する、守護派の神々が一番信用できるんだよね。


 私は、自分のMミアに来た連絡事項を確認して、この後紫凰院学園中等部春の大掃除が有るを知る。

 春の卒業と入学式による人の入れ替わりは、怪異や魔性などにも大きく影響する。

 それは、卒業する者達の残念だったり、入学する者達の期待と不安が生み出す精神エネルギーなど、春は何かと起こりやすい。

 特に中高の、力が目覚め易い時期にある子供達が集まる学校には、対策をして置いても何かしら起こる物なのだ。


 なるほど。伯父様が、無理なスケジュールで私に初陣を経験させたのは、これが有るからだったんだね。

 気になるクラスメイト達を、こちら側に引っ張って来るのは、明日以降って事ね。


「まーおちゃん!」


 しおちゃんが、勢い良く後ろから抱き着いてくる。

 勢いの割に、ふんわりとしたソフトタッチで、私を柔らかい感触が包み込む。


「私達は大掃除が有るから、一緒に行こ?」


 教室のドアの方を見ると。さっちゃんも会計コンビも、私と一緒に大掃除に行くため、教室の外で私を待っててくれた見たいだ。持つべき者は幼馴染だね!

 置いて行かれなくて良かったよ!


「うん、分かった。行こう」

「だよね! 真緒ちゃん一人じゃ、迷子になっちゃうもんね!」

「むぅ、そんな事無いし……?」


 しおちゃんに揶揄われて思わず頬を膨らませてしまう。


「はうぁ~><、真緒ちゃんかわいい!」


 しおちゃんの、過剰なスキンシップを受けながら、他の皆と合流した私は、皆と一緒にMミアの連絡事項に指示された、大掃除要員の集合場所に向かうのだった。

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