第5話 自己紹介、気になった人以外は流し聞き

 私の名前は秋素戔宮あきすさみや 真緒まお、つまり出席番号1番で、一番最初に自己紹介する事になります。取り合えず、無難な自己紹介でもしておきますかね。


「それでは、出席番号1番の子から、自己紹介してくださいね」


 後藤先生が自己紹介を促す様に、特徴的なフレームをした眼鏡の位置を、クイッと直す様に眼鏡のつるに手を掛ける。


「私の名前は秋素戔宮 真緒と言います。好きな物は、『もじゃろー』と『にゃんくぅ~』です。あと、体を動かすのが得意です。皆これからよろしくね?」


 私の無難な自己紹介が終わると、クラスメイトからパチパチと拍手をされる。如何やら、及第点の自己紹介が出来たらしいね。

 ちなみに『もじゃろー』は、まんまるもふもふボディに小さな手足、キラキラお目々がとっても可愛い、一見毛玉にしか見えない羊のゆるキャラだよ。

 『にゃんくぅ~』は、何時も直ぐにお腹が空いちゃう腹ペコ猫さんのゆるキャラで、糸目が普段のお母さんに似てて可愛いと思うんだよね。

 私、『もじゃろー』と『にゃんくぅ~』のグッズを集めてるんだよね~。


「はい。秋素戔宮さんありがとうね。次は出席番号2番の子、お願いしますね」


 私の次はさっちゃんの弟の啓示君だ。その次はさっちゃんだね。


「朝見 啓示と言います。姉さん共々よろしくお願いします」


 はい、シンプル。啓示君、それじゃ情報が少なすぎると私は思うよ?

 入学式まで時間が無いからか、先生も直ぐに次を促す。


「はい、あたしの名前は朝見 沙智。弟の事も含めて、あたしが自己紹介するよ♪」


 さっちゃんは、自分達が二卵性双生児である事や、自分は音楽を聴いたり漫画を読むのが好きだとか、啓示君が言葉足らずで不愛想に見えるかもしれないけど、割と何でもできるし、良い子だから仲良くして欲しいとか。

 自分だけでなく、啓示君の事も話したりして、それだけでさっちゃんが世話焼きさんな事がよく分かる。そんな自己紹介だったね。

 出席番号4番伊崎君に、5番の栄藤君と続いたけど、印象にあまり残らなかったね。まあ初対面だし、これからの三年間で、色々知って行く事になるから問題ないでしょ。

 で、6番は火威斗かいと君だね。


「はいっ! おれは折部おりべ 火威斗、清習小学校から来ました!  好きな事はサッカー観戦、もち自分でするのも好きだけどな!」


 私はサッカーの事は詳しく知らないけど、火威斗君は所謂サッカー小僧でしょっちゅうサッカーボールを弄ってる。サッカーが大好きで、サッカー選手に成りたいって気持ちは有るらしいけど、立派な退魔士になる方が大事だって、もう既に自分の中で割り切ってる見たい。なかなかできる事じゃ無いよね。

 次はしおちゃんの番だね。


「では、次の子お願いしますね」


 ビシッ! と手を挙げて、席を立ったしおちゃん。


「はい! 私の名前は金華かなか 栞と言います! 好きな物は真緒ちゃんとさっちゃんです! みんなよろしくね!」


 しおちゃんは、自己紹介で私達が好きだとアピールをした後、ウインクをして着席する。ふむふむ、なかなか物議を醸しそうな自己紹介だよ。まあ、本人は気にしないだろうけど。


 出席番号8番潮路さんと、9番の園原さんは特に気になる事も無く。次は10番の子だ。


「はい、私は田宮 希水のぞみ。趣味は読書。よろしく」


 素っ気ない感じで自己紹介をした田宮 希水さんは、深い青色の瞳に銀縁のアンダーリム眼鏡を掛けた、黒髪ショートの眼鏡っ子だ。気になるクラスメイト1号だね。

 田宮さんを見て気になった理由は、三源泉が頭に集まっている事が分かったから。

 そのお陰でこの子が強力な異能を秘めていると分かったからだね。

 何故なら、幽泉,霊泉,魂泉の三源泉が一つの部位に集まると、必ず異能を有すると云う事が統計上分かっているからだ。

 特に、頭に三源泉が集まる場合、間違いなく強力な異能を備えている上に、様々な力の基本となる、氣,魔力,念などの法則エネルギーの扱いも満遍なく出来るのが特徴だ。まだ、一度も三源泉が開いた形跡が無いので、異能を持っている事を本人も気が付いていないだろうけどね。

 田宮さんは直ぐに、退魔士としての育成コースに参加する事になるかもね。

 ちなみに、源泉のどれか一つでも開いた事があるのなら、開いた事のある源泉を中心に、源泉が閉じた状態でも力の流れが生じる様になるため、見鬼の才ある者や力の扱いに慣れている者なら直ぐに気が付く事が出来るんだよ。


 出席番号16番までの、塚羽君,寺崎さん,天堂君,東金さん,葉山君,氷室さんの中に、今は気になる人はいなかったね。まあ、これからって事で。それで、次の出席番号17番の子なんだけど。


「わたくし、不破 夕輝と言いますの。皆様、どうぞよろしくお願いしますわ」


 夕陽を思わせる茜色のハイライトが入る金髪に、水色の猫の目を連想させる瞳をした、お嬢様っぽい喋りする不破さん。私はもう既に、不破さんは異能を自覚して使っていると睨んでいる。これはもう、直ぐに退魔士育成コースにご案内だね!


 まだまだクラスメイトの自己紹介が続き、名字だけ一応覚えたのは、辺見君,祝部ほおりさん,保久良さん,間宮君,三日月君,宮園君だ。で、出席番号24番の子が、今日気になった最後の子だ。


「俺の名前は、村瀬 零兎れいと。漆黒の月支配者にして、世界最高の力を持ったダークリンカーだ! ふっ……決まったな」


 うん。中二病だよ。村瀬君は白髪に紅い瞳、右見目に眼帯をしたアルビノ男子だ。格好もザ中二病って感じで、制服の上からフード付きの黒マントを羽織り、指ぬき手袋を装着している。村瀬君は私の見立てでは、無意識で何かしらの力を使っていると思うんだよね。何で無意識かって言うと、力の流れは有るけど自覚が無い所為で、力の流れが滞っているからだね。

 ちなみに、ダークリンカーなんて聞いた事がないから、やっぱり中二病だね。

 勿論村瀬君も、退魔士育成コースにご案内だね。きっと絶賛、中二病の彼は、喜んで参加してくれそうだね。


 気になったクラスメイトはこんな所だけど、残りのクラスメイトも名字だけ、女芽里めめりさん,矢崎君,弓原さん,陸君。これでクラス全28名だ。

 クラスメイトの自己紹介が終わった所で、いよいよ講堂での入学式だね。

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