第13話 『子猫亭』改造計画①

俺は子猫亭に帰るとミーケさんとミケール夫婦が夕食の準備をしていた。


『おかえりなさい。ユートさん』


「ただいまです。ミケールさん」


『夕食出来たので。ミーケ、ユートさんを食堂へ案内してくれるか?』


『お父さん。分かった! ユートさん、こっちだよ?』

ミーケさんの案内で食堂に着いて席に座るとミーコさんが夕食を持ってきた。

その内容は.....。

ネコまんま(卵付)

具が多い謎のスープ

小松菜と厚揚げの煮物

以上三品だった。


「ミーコさん、二つの料理はわかるけど残りのこのスープは?」


『これね、私達の部族で良く使っている野菜で子芋とニンージンと海藻で確か.....ワカメーとオーク肉の薄切りした物に同じく調味料のミソーを入れたミソースープですわ』


なんだと!

これは....これは! 豚汁じゃあねえか!


「美味しそうだ....いただきます」

俺は夕ご飯を食べた...豚汁に関しては最終3杯おかわりしてしまった。


「ごちそうさまでした。ミーコさん、旨かったです」


『ありがとう....って何で「いただきます」と「ごちそうさま」は知っているの? この言葉、私達の部族で必ず言う言葉なのに?』


.....猫族と俺がいた日本での風習が同じだと?

俺は慌てて話をごまかすのだった。


「それは、領都にある図書館でネコ族の風習が載っていたページがありまして.....色々とネコ族の事を調べたのですよ?」


『そうだったのね? 嬉しいわ』

何とかごまかせたわ.....次から気を付けよう.....。

俺はその後、ミケールさん達に話をする。


「ミケールさん、明日ギルドに行って欲しいのですが?」


『ギルドに行って何をするのですか?』


「ギルドに行って指名依頼をして欲しいのです。指名冒険者は俺で。内容は『子猫亭の手伝い』です。報酬は『子猫亭の宿泊料金を最大半年間無料』で」


『それはミーケから聞いたのですが、貴方はFランク冒険者ではありませんか? 指名依頼はCランク以上じゃないと受ける事が出来ないはずでは?』


「それは問題ないよ? だってさっきCランク冒険者になったから。一か月後に領主宅で認証する事になっているので。これは仮だけどCランクのギルドカードです」

俺は仮発行のギルドカードをミケールに見せた。


『本当です......。明日、朝一番にギルドに行きます』


「ありがとう。内容は『黒猫亭の改装のお手伝い』の依頼で任期は約2ヶ月で」


『わかりました』

こうしてミケールとの簡単な話をした後、俺は部屋に戻って寝るのであった。


*****

次の日の朝、ミーケはギルドに向う事に。

ミケールが元気になったとバレたくない為、ミーケが代わりにギルドに向って行く。

俺はミーケから少し距離を離れてギルドに向う事にしたのだ。

ミーケがギルドに到着して、受付嬢の所に向い話を始めた。


『すいません。指名依頼を申請したいのですが?』


『いらっしゃいませ。指名依頼の申請ですか? 誰を指名するのですか?』


『ユートさんです。依頼内容は『黒猫亭の改装の手伝い』です。報酬は黒猫亭での宿泊料金を約半年間無料でお願い出来ますか?』


『それは.....ギルマスに確認しますね?』

受付嬢はギルマスに確認をして出て行って、すぐに戻って来た。


『ギルマスに確認しましたら問題ないと言う事です』


『ありがとうございます』

ミーケが答えると隣からデカイ男が横やりをしてきた。


『なんだあ? 黒猫亭の改装だと? なら俺がCランクのワールが受けてやるぜ? 報酬は宿泊料金無料? そんなのいらねえ! 金貨100枚の先払いだ』


『私はユートさん指名なのです! そんな金額は出せません!』

ワールはミーケの姿を舐めまわした目をして怒鳴った!


『なら、お前が俺の奴隷になってくれたら受けてやる。可愛がってやるからな? 俺が飽きたら娼館で稼いで貰う事で.....こりゃあ良いわ』


『ワールよ。俺も参加して良いか?』


『ああ、良いぜ』

ワールが言った言葉で周りの男性の冒険者達がワールに話かける。

それを聞いたワールは更にそいつらに提案するのだった。


『お前さん。良かったな? 良い相手が一杯いるじゃないか?』


『やめて下さい! 私はユートさんのみ依頼しているのです!』


『さっさと受けるから受付嬢さん。依頼の処理たのむぜ!』

ワールがミーケの腕を掴んで受付嬢に脅し始めた。

俺は受付嬢の所に向って声をかけた。


「すいません。俺に指名依頼が来ているはずだが?」


『ユートさん! 助けて下さい!』


『なんだあ? お前は?』

こいつ何だ?

ミーケさんの腕を掴んでいるけど?

こいつの職業は.....武闘家でレベル20? しかもEランクじゃないか!


「おい、おっさん。依頼者の手を放してくれない?」


『はあ? 俺はCランク冒険者のワールだ! お前はFランクじゃないか?』


「あのう....あんたのランクEじゃないの? 俺は昨日Cランクになったユートだ。しかもあんたって弱いじゃん」


『何言っているんだ? ぶっ倒すぞ!』

ワールはミーケさんの腕を放して俺に拳をぶつけた......が俺はその拳を掴んで握り潰した。


『ぎゃあああああ! 何するんだああああ!』


「受付嬢さん。これこいつのギルドカードです確認」


『はい....間違いないです.....Eランクですね.....これはギルド違反になりますわ。みんな来てちょうだい。違反者が出たので捕まえて!』


腕を握り潰したのワールは職員に連れられて行くのであった。


「質問だけど? あのバカはどうなるの?」


『そうですね....違反となった冒険者はランク剥奪して罰金を受けます。ミーケさんの報酬は宿泊料金の約半年間ですから、その滞在費を請求する事になりますわ。払えない場合は借金奴隷として、ザクソンにある鉱山の作業をしてその賃金を賠償金に回しますわ。鉱山作業は一日銀貨1枚となります』


と言う事は、子猫亭の一泊が銀貨10枚で半年間(六ヵ月として約180日)だと大体約銀貨1800枚(金貨18枚)、一日銀貨1枚だから1800日、1年360日なので最低でも5年以上鉱山で働くか.....。

しかし、受付嬢は更にとんでもない事を言った。


『ワールさんの場合、前科がたく~さんありますので、鉱山作業の日数は20年以上になるかと....依頼者への賠償とギルドへの賠償も含まれますので....。ミーケさん。ユートさんの指名依頼申請しました。ユートさん。依頼を受けて下さい』


「わかった。これで良いか?」


『はい。受付完了しました。後は依頼者のミーケさんに聞いて下さい』


「了解した。ミーケさん、子猫亭に戻ろうか? 依頼内容を確認するので」


『分かりました』

色々とあったが、俺とミーケさんは子猫亭に戻り、食堂で話をすることに。

そこでミケールが俺に尋ねる。


『あのう.....私達の宿をどうするつもりですか?』


「子猫亭の改装をするのだ。このままだと子猫亭は潰れるから。それで、今日まで此処にいたのだが、気になる事が沢山出たので説明するよ」

俺は子猫亭の状況を紙に書いてミケール達に渡し説明をする。

内容は以下の通り

①店舗自体が老朽化で壁や床がボロボロになっている

②食堂が狭いので食べる人数が圧倒的に少ない

③ここの目玉がない

④防犯などの設備が全くしていない


「紙に書いてある通りの理由でお客さんが来ないのだ」


『どうしたらいいのかしら?』


「ミケールさん、この宿の設計図とかありませんか?」


『ない!』

きっぱり言うな!

そこで俺はミケール達に話を進めた。


「店舗の事は俺が作り直すので材料とかは全くいらない。ついでに防犯設備もこちらで用意する。それで改装策はこの紙に書いているので見てくれないか?」

俺は改装内容をミケールに見せて説明すると


①全面的に宿を作り直して4階建ての建物にする。

今の建物は3階建で最上階の奥がミケール一家の部屋なのだが、俺はこの建物自体を宿専門にする事でミケール一家の家を別にすると考えた。

②目玉となる物を作る。

ネコ族の料理を工夫して新しい料理の開発

主にこの二つがメインになると思うのだ。


「取り合えず、明後日から始めるとしますので覚悟をして下さい」


『『『『ひええええええええ!』』』』

ミケール一家全員青くなっていくのであった......。


さあて、頑張るとするか!



~作者より~

今回からの更新日は不定期になります。

次回、子猫亭改装計画その2を送りします。

お楽しみ下さい。

応援と評価をお願い致します。








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る