第12話 ある人達の思惑

ユートが薬草採取の依頼をしている頃、此処はある商会の一室で何人が会合を開いていた。

「それでは、ゲース=ガメッツ殿、『子猫亭』の近況報告をお願い致します」


『分かりました。ジャーク監査官様。先ず『子猫亭』の両親に入れた飲み物を飲ませ、両親は意識不明となって後2か月後にはこの世にはいないでしょう。娘2人は今の宿状況を何とかしようと必死に頑張っています。其処で私はこのを使い両親が死亡した日に回収をする予定です。返済できない場合は子猫亭の没収と娘2人が借金奴隷に落とし、それを領主代理様が買い取っていただく事になります。そうですね? ギルモア=ザクソン様』


「まあ...そう言う事だ。俺はあの獣人を性奴隷として虐めるのが好きだからな?」


『子猫亭の敷地は前領主様から頂いた土地で結構な大きさです。子猫亭を無くし、我々のとして王都のいる第一王子派の貴族に販売しようと考えています』


「そうなると、僕が第二王子の派閥の側近にしてもらう事が出来るのだな? ジャークよ?」


「そうなります。これで5大貴族....今は4大貴族の内一つと言われる我がザクソン家、ハミルトン家。そして、今は王国派でこちらに寝返りを交渉しているガーネット家と手を組んで第二王子を次期国王にさせる事が出来ますぞ」


「なるほどな......。」

ギルモアは笑いながら今後の事を考えていた。

そう、ここには3人の男性が座って会議している。

一人は中央の席に座っているガタイ男性がザクソン家の領主代理であるギルモア=ザクソンで、領主であるライオネット=ザクソン伯爵の長男である。

その隣に座っているのが王都からザクソンへ派遣されている細身の男性がジャーク=ワールダーク。

向かいに座っている肥満の男性がガメッツ商会の会頭のゲース=ガメッツ。


ベルマーク王国には5大貴族が国王を支えていた。

王都から近い街、学園都市ラインの領主、グレイク=ラインバルト公爵でこのベルマーク王国の宰相で、国王派に所属している。

王都から北にある貿易都市グリーンシティの領主、ギレン=グリーンハイツ伯爵でベルマーク王国の財務大臣を務めていて第一王子派に所属している。

西にある工業都市ハミルトンの領主でを務めているライオネル=ハミルトン伯爵で商業大臣を務めていて、第二王子派に所属している。

南にある農業都市ザクソンの領主、ライオネット=ザクソン伯爵。

主に農水大臣を務めていて、今は国王派である。

最後に東の防衛都市ロックハーグの領主でレオン=ロックバーグ辺境伯爵で主に防衛大臣を務めていたが、5年前のスタンビートによりロックバーグが壊滅した為、代わりに子爵から伯爵になったメルビン=ガーネット伯爵が旧ロックハーグ家跡に再び作った要塞都市ガーネを作り、現在防衛大臣となっていて第一王子派である。

現在、国王派が2つ、第一王子派が2つ、第二王子派が1つとなっており、ザクソン領主のライオネット=ザクソン伯爵が意識不明の為、長男であるギルモアが自ら領主代理としてザクソンを統治しているのだ。

ジャーク監査官はギルモアに話を進めた。


「ギルモア様、ライオネット様夫妻の状況はどうなっていますか?」


「あの薬のおかげで後1か月ほどで無くなると思う。そうなると僕が正式に領主となり、あの薬をギレン様に渡して第二王子様が国王になった時は財務大臣にしてもらう約束になっているからな? そうなれば、王国の国費は僕の自由になる訳だ。それより、ジャーク殿。第二王子様は誠にベルガイア王国と同盟を組むのだな?」


「はい、第一王子の方もバイデン王国と同盟を考えているようです」


「そうなると、次期国王次第ではバイデンとベルガイアのどちらと同盟を組んでバイデン又はベルガイアと戦争になる訳だな?」


「その通りです。ちなみにガーネット伯爵に対しては一応こちらに寝返る作戦を取っています。国王死去後にはこちら側になるかと思います。」


「もし、ガーネット伯爵が拒否したらどうなるのだ?」


「それは、ガーネット公爵を暗殺して、その娘とギルモア様と結婚させてガーネット家をビルモア様の物にしたら良いのでは?」


「そうか、そうか......僕に取っては良い話だな......あはははは」


その場に居た3人は大笑いしているのであった......だが、しかし、商会の部屋の近くに一人の男が聞いているのを知らないのであった.....。


*****ゲイル視点******

ユートがギルドを出た後、ギルドマスターのゲイルは座っていた。


「マジでリオン様がこんなにも強くなっているのか......」

そう思った時、部屋の扉が開いて2人の男が入って来た。


『ゲイル様。ご報告があります』


「分かった。ランスロットとハリソン」

2人の男は、Bランク冒険者パーティ「白銀の狼」のリーダーで元ロックハーグ領近衛騎士団副長のランスロット=ハーゲンとロックハーグ領の元執事のハリソン=メイヤーの2人であった。


「先ず、私ランスロットからご報告を我『白銀の狼』の探索者からガメッツ商会を調査した所、ガメッツ商会の会頭と王都から来た監査官と領主代理としてザクソン伯爵の長男達の話を聞きました。どうやら子猫亭を潰してある薬の工場を作る計画をしているようです」


「それは本当か?」


「はい、間違いありません....。あの長男が領主となった時は第二王子の派閥に入る事になります。」


「次は、私ハリソンから。ライオット様夫妻は未だに意識不明です。ランスロット副長の話を聞いてどうやら長男が夫妻になんらかの薬を入れた模様です。私が『鑑定』をしましたら......その薬は....『呪いの薬』で意識不明となって2か月後には死亡する薬みたいです。しかも、毒反応が無いので死因が解らなくなってしまいそうです....。リオン様がCランクになってライオット様の代わりにギルモアになるとCランク取り消しになる可能性があります」


「私からは気になる事があります」


「言ってみろランスロット副団長」


「はい、監査管ジャークって言う男、我パーティメンバーに「人物鑑定」がいるので調べましたが......「隠蔽操作」をしており「鑑定」が出来ませんでした」


「なんだって!」


「しかも.....どうやらジャーク監査管はベルガイアから来たスパイだと考えられます

す.....。理由はギルモアから以前話をした時、第二王子派のベルハイト伯爵が寄越したと言っていました」


「そうなると、詳細はこうなるのか? 第二王子がベルガイアと同盟を組む為、ベルハイト伯爵しか今は支援していないが、ザクソンがギルモアになれば第二王子派に加わって第一王子派と同数となるって事か.....国王もおそらく「呪いの薬」を使って意識不明にさせて亡くなった後、第一王子を討伐すると考えて良いと思う」


「そうなれば、この国は混乱になってしまいます」


「現在、我々がする事はギルモアの悪事を防ぐ事で、ライオット夫妻の病気を治す事が先決だな?」


「「御意」」


「しかしなあ.....何か良い方法がないのか....って、おいハリソン」


「何でしょうか?」

ハリソンが尋ねるとゲイルは机の上に蒼い液体が入った瓶を取り出した。


「ハリソン。この瓶の中身を『鑑定』をお願いできるか?」


「わかりました.....『鑑定』!」

ハリソンは瓶の中身を鑑定して驚きの顔を出していた。


「これは.....すごい.....」


「何がすごいのだ? 教えろよ?」


「この瓶の中身は『万能薬』でしかも最上級の品質です。この薬の効果は異常耐性を全て解除出来る薬です.....。しかも、全ての呪いも解除出来るって......」


「そうか! その薬をライオット夫妻に飲ませると」


「呪いが消えてしまって、夫妻の意識が戻ります! でも騎士団長。この薬は何処から手に入りましたか?」


「それは.......」


「それは.......」

ゲイルの発する言葉でランスロットとハリソンは驚きを上げた。


「ユート.....いや、リオン様が作った薬だ」


「「なんですとおおおおおおおおお!」」


「お前ら、うるさいぞ!」


「「すいません.......」」


「しかし、リオン坊ちゃまがこんな薬を作るとは.....」


「騎士団長! この薬は1個しかないのですか?」


「リオン様.....ユートが貰ったの本数は1ダースある」


「「なんですっとおおおおおおおおおおおおおおおお!」」


「お前ら! うるさい!」


「「すいません........」」


「二人に指示をするぞ! 先ずはハリソン。お前はこの薬を持ち帰ってギルモアのバカにバレないようにライロット夫妻に飲ませ、ランスロット夫妻には俺が来るまでわざと意識不明の状態になってもらってくれ良いな? いつも食事とかの世話はハリソンがしているのだろう?」


「はい、私と専用侍女1人ですが、その侍女は亡き旦那様の専用侍女でしたので問題ありませんかと」


「それでいい。ランスロットはあいつらの監視を頼む。どうやら「子猫亭」が危機になって居るみたいだ」


「分かりました」


「それでは解散する」


「了解」

ハリソンとランスロットはその場を後にした。


「これで、ロックハーツの復興の道筋が見えて来た......。後はリオン様をCランクに昇格させてライオット夫妻に承認していただけば、王都以外の都市にリオン.....ユートに行ってもらえる。まあ....ユートに同行させるメンツはしかいないかあ......あいつは.....変態だが腕は一流だからな.....」


そう言ってゲイルは溜息をつくのであった。



~作者より~

「子猫亭」の改装の件の話は次回となります。

ユートのビックリドッキリのやり方で「子猫亭」を大幅に変えて行きますので

お楽しみ













  

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る