#75 女の子とのお出かけはやっぱり大変
結局、バッキーのお母さんから「ミウも連れて行ってあげなさい」と言われ、バッキーが渋々了承したのでミウちゃんも一緒に近所のショッピングモールに出かけることとなった。
そうと決まった途端ミウちゃんが「直ぐに着替えてきますね!」と言って自分の部屋にダッシュで向かうと、バッキーも「私も着替えてくる!」と自分の部屋にダッシュで向かった。
今朝俺達が来た時からバッキーはオシャレな恰好してたからてっきりそのまま出かけると思ってたのに、まだ着替えるつもりらしい。
二人が着替えてくるのを待っている間、リビングで八田さんと『大江戸スピリッツ』で対戦しながら時間を潰すことにしたが、八田さんはミウちゃんよりも弱くて、直ぐに「面白く無い!」と止めてしまったので時間潰しにならなくて、結局ダックスフンドとじゃれながら時間を潰した。
20分程で二人とも着替え終えて戻って来た。
バッキーは、クリーム色のニットの丈が短いミニスカワンピに上に茶色と赤のチェック柄のストールを羽織り、小豆色のタイツを合わせたいつも以上にアダルティな装いで、さっきまで1つに纏めていた髪も下ろしていた。
八田さんのミニスカに張り合ってるんだろうな、と思ったけど、心の奥底に仕舞って口にはしないでおいた。
ミウちゃんは、トップスが薄いピンク色のセーターで下は高そうな茶色と黒のチェック柄のスカートを履いてて、薄手のベージュのコートと黒のニーソを合わせた小学生とは思えない様な装いだった。
二人とも、「近所のショッピングモールに行くだけなのに、気合入れすぎだろ!」とツッコミたくなるような気合の入れようだ。
俺なんて、パーカーとジャージだぜ?
因みに八田さんは、スミレ色のシャツにグレーでミニのフレアスカート履いてて、上着はライダースのジャケットで脚は黒のストッキング。 この人の場合はオシャレに気合入ってるのはいつものことだ。
オシャレに関してはワラシの先生だしな。
この日はポカポカと天気が良かったし、歩いて10分程の距離なので、自転車はバッキーの家に置いたまま歩いて行くことにした。
玄関で靴を履いて表に出ると、ミウちゃんの方から手を繋いで来た。
格闘ゲームでの交流のお蔭か、ミウちゃんはすっかり俺に懐いてくれていた。
俺には男兄弟しかいなくて、「生意気な弟よりも、可愛く甘えてくれるような妹のが良かった」と何度も何度も考えたことのある人生だったので、敢えて言わせてもらうと、年下で可愛いミウちゃんにこうして甘えられるのは、長年の夢が叶ったと思えるほど、幸福感に満たされた。
俺と同じような妹の居ない諸兄なら、この想いはきっと理解してくれるだろう。
だが、八田さんとバッキーの二人は、そんな俺の幸福感などお構いなしに文句を言い始めた。
「ミウ!なんでアンタがケンピくんと手を繋いでるのよ!」ガミガミ
「抜け駆け禁止!最近の小学生あざと過ぎる!!!」プンプン
「ミウは小学生だから、危ない道路は手を繋いで歩かないとダメなんです」プイッ
「確かにミウちゃんの言う通りだな。俺と一緒なら安全だからね」
「ちょっとオカシクない!?私たちのときはいっつも冷たいのに、なんでミウちゃんにだけはそんなに甘いの!!!しかもデレデレしちゃって!」
「もうこうなったら写メとって、フミコちゃんに報告するしか」
「まてまてまて!今日の作戦会議はワラシに内緒だろ!そんなことしたらバースデーサプライズが台無しになる!止めるんだ!」
「くっ、確かに・・・」
八田さんとバッキーはまだブツクサ文句を言っていたけど、本来の目的はワラシへの誕生日プレゼントを選ぶことなので、さっさと歩きだした。
歩きながらミウちゃんとお喋りをしていたのだが、最近の小学生はマセている様で、ずっと恋バナだった。
「お兄さんはどんな女性が好みなんですか?」
「年下とかどう思います?」
「お兄さんは彼女いるんですか?」
「その彼女とはドコまで進んでいるんですか?」
「いつ別れる予定ですか?」
「略奪愛ってどう思います?」
潤んだ上目遣いで、ずっとこんな質問をされ続けた。
流石バッキーの妹だ。
これまで抱いていた妹という幻想が、ちょっぴり崩れた。
ショッピングモールに到着すると、再び女同士の言い争いが始まった。
「もう危ない道路じゃないんだから、ケンピくんの手を離しなさい!」
バッキーがミウちゃんに怒りながら手を離すように言うと、すかさずミウちゃんが反論した。
「迷子になったら困るから小学生のミウはお兄さんと手を繋いでないとダメなの」
すると、今度は八田さんがミウちゃんの揚げ足を取ろうとした。
「あー私もここ慣れてないから迷子になりそうだなぁ~。ケンピくんと手を繋いでないと迷子になりそだなぁ~」
「だったらシズカさんとお姉ちゃんとで手を繋げばいいですよね」
ミウちゃんのが
ナニこの子!?
小5なのに腹グロお姉ちゃんのバッキーと学年3位の学力の八田さんを速攻で論破しちゃってるよ!?
しかし何というか、ブサイクがチャームポイントだと自負するこの俺に、こんな風にモテキが到来するとは。 何か良からぬことの前触れの様な気がしてならないので、自重しなくては。
「なら、ミウちゃんと八田さんが手を繋げば万事解決だな。うん。 では早速目的の雑貨屋さんに行こうか」
茶番はここまでだ。
俺の目的は、ワラシへ贈る誕生日プレゼント選びだからな。
醜い女同士の争いになどに構ってるヒマはない。
いがみ合っている女子3人を放置して、俺はさっさとエスカレーターに乗り、雑貨屋さんがある2階フロアを目指した。
________
明日も更新します。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます