#74 ミウちゃんとの交流



 お昼ご飯はバッキーのお母さんがクリームシチューとフランスパンを用意してくれた。

 なんとなく、バッキーんちらしいメニューだと思った。


 食事はキッチンの4人掛けの食卓で、俺達3人とバッキーの妹のミウちゃんも混ざって4人で食べた。


 ミウちゃんはバッキーに似て整った容姿の美形で、小学生の割に大人びた雰囲気で、最初はどこか冷めた印象もあって、「この子は将来すっごい美人になりそうだな」と思えるような美少女だった。


 でも、朝に挨拶した時もそうだけど、食事を始めてからも俺に対して明らかに警戒してて、俺が自己紹介して「お姉ちゃんの友達なんだよ?よろしくね」と言うと、ジっと俺のことを見つめてたかと思ったら、プイッっとそっぽを向かれてしまった。


 それ見てバッキーがミウちゃんを怒るので、バッキーを宥めてミウちゃんに根気よく話しかけてみた。


 すると、少しづつだけど返事をしてくれるようになった。


「何年生なの?」


「5年です」


「へー、ウチの弟なんてまだ3年でやかましいしバカで生意気だけど、さすが5年生だと落ち着いてて大人っぽいんだね。ウチもこういう妹のが良かったなぁ」


「はぁ」


「お姉ちゃんに似て美人さんだし、学校じゃ男の子にモテモテでしょ?」


「周りの男子、子供っぽいから興味ないです」


「そうなの?年上がいいの?」


 ミウちゃんは無言で頷く。


 そこで八田さんがちゃちゃ入れて来た。


「またケンピくんはたらし込もうとして!さっき散々お説教したでしょ!」


「大丈夫だよ。ミウちゃんみたいにクール系美少女は俺みたいなブサイクに興味ないって」


「でも分かんないよ~?姉妹で男の趣味が同じかもしんないし!」


「ちょっとシズカちゃん!また根も葉もないこと言って!」


「お姉ちゃんは男の趣味悪い。私はイケメンにしか興味ないです」


「コラ!ミウ!アンタまでナニ言い出すの!」


「今日のお姉ちゃん、怒ってばっかで怖いね。ミウちゃんもそう思うでしょ?」


 俺が軽い気持ちでミウちゃんに同意を求めると、ミウちゃんの暴露が始まった。


「だってお姉ちゃん、好きな男子が遊び来るからって何日も前から浮かれてたし。 昨日の夜だって部屋でゴソゴソして煩いから文句言いに行ったら「明日ケンピくんが来るから掃除してるの!邪魔しないで!」って怒るし。 今日だって朝から何回も服着替えて鏡見ながら髪型ずっと気にしてソワソワしてたし―――」


 慌ててバッキーがミウちゃんの口を封じて黙らせた。

 バッキーは真っ赤な顔して怒ってるような、でも気まずそうな表情。 

 でもミウちゃんの方は口を封じられても澄ました顔してて、やっぱり姉妹だと腹グロいところも似るんだなぁと感心した。


 更に八田さんがミウちゃんの暴露話を聞いて、ゲラゲラ笑いだした。


 八田さんの態度が気に入らなかったのか、今度はバッキーが八田さんに矛先を向けた。


「シズカちゃんだって朝からミニスカートなんか履いちゃって必死にアピってるくせに!人の事笑えないじゃん!」


「はぁ?アキちゃんだって胸強調した服ばっか着て、そんなにオッパイ自慢したいん!?でも残念でした~!フミコちゃんのがおっきいもんね!ケンピくんはフミコちゃんのオッパイ見慣れてるから、アキちゃんがいくら頑張ってもムダで~っす!」


 また女同士の醜い言い争いが始まった。

 八田さんの綺麗な美脚もバッキーの強調された巨乳も決してムダなアピールでは無く、俺はワラシが居ないのを良いことにチラチラ気にして目の保養にしてたくらいだが、女同士の醜い争いに関わるとロクなことにならないのは先ほど痛い目にあったばかりで身に染みていたので、二人のことは放置してミウちゃんとお喋りしながら食事を続けた。


 お喋りしてて分かったんだが、ミウちゃんは意外にもゲームが好きで、俺も持っている『大江戸スピリッツ』という格ゲーにハマっているというので、食事の後に対戦することになった。

 八田さんとバッキーは相変わらず言い争いを続けてて、まだ食べ終わりそうにないので、俺達はリビングにあるテレビでゲームを始めた。


 俺はこのシリーズを小学生の頃からやり込んでて自信があったので、最初はハンデのつもりでクセが強くて扱いにくい『ブリーフ浪人』という不人気キャラをチョイスした。 ミウちゃんは、扱いやすくて俺が選んだキャラとは相性が良い『イケメン将軍』という人気キャラをチョイスした。


 ミウちゃんの表情を伺うと、開始前から既に勝利を確信したかのような自信満々の表情をしていた。


 1ラウンド目は様子を見ながらこちらからは仕掛けずにイケメン将軍の攻撃をチマチマガードし続け、隙が出来れば基本技で投げてゲージを削るという地味な戦法で、ほぼノーダメージで勝利した。


 2ラウンド目は積極的に手足を繰り出し、相手がガードしても悉くガードキャンセルさせて、ムキになって仕掛けて来た瞬間にカウンターで大技決めて勝利した。


「小学生だとこんなもんだよな」と余裕を見せて勝利宣言しようとミウちゃんへ視線を向けると、涙目で滅茶苦茶悔しそうな顔をしていた。


「もう1ゲーム!次は負けません!!!」


「お、おう。 キャラ変えた方がいい?」


「ダメです!ブリーフ殺すんです!」


『ブリーフ殺す』って、美少女小学生が言ったらダメなワードだよな。


 結局、次のゲームでも手加減することなく圧勝した。


「ん~~~もう!むかつく!もう1ゲーム!絶対ブリーフぶっ殺す!!!」


 ミウちゃんは悔し過ぎて言葉遣いが酷くなり始めていたが、スルーして次も手加減せずに圧勝した。


「なんでよ!なんでブリーフがこんなに強いのよ!むかつくむかつくむかつく!」


 どんだけブリーフが嫌いなんだよ。


 いくら続けてもミウちゃんが俺のブリーフ浪人に勝つのは無理だと思ったので、少しだけ手ほどきをすることにした。


「試しにキャラ交換してやってみようか? 俺がイケメン使うからミウちゃんブリーフでやってみなよ」


「ううう、やってみます」


 ココからガードキャンセルのコツや隙を付く相手の挙動のポイントを1つ1つ説明しながらプレイした。

 ミウちゃんはよっぽどこのゲームが好きなのか、俺の説明を真剣な表情で聞いてて、教えられたことを1つ1つを習得しようとキャラを変えながら何度も反復練習をしていた。


「だいたい出来る様になったみたいだし、再戦してみよっか?」


「うん!今度は負けませんから!」


「おっけ」


 で、3ゲームやって、最後にようやくミウちゃんが初勝利をした。


「やった!勝てたよ!お兄さんのお蔭で勝てました!」


「うむ。まだまだ粗削りだけど、もう大丈夫かな。 じゃあそろそろ俺も本気出していい?」


「良いですよ!もう負けませんから!」


 今度は普段から愛用している『セクハラ大名』というパワー重視のキャラをチョイスした。


 で、特訓して強くなったミウちゃんの『イケメン将軍』を開始早々コンボでハメて瞬殺してみせた。


「ナニいまの!?な、なんで???ナニしたんですか!?」


 負けたミウちゃんは今度は涙目になることも無く圧倒的な敗北ぶりに悔しさよりも驚きのが上回ったのか、隣に座る俺の腕を掴んで目をキラキラさせて、尊敬の眼差しを向けて来た。


「世の中、上には上が居るということだよ。ふふふ」


「カッコイイ・・・」


 格闘ゲームを通してミウちゃんと交流を深めていると、八田さんとバッキーも食事を終えて、「そろそろ出かけよう」と声を掛けられた。

 するとミウちゃんが「私も行きたい!」と言い出した。


 バッキーが難色を示すと、ミウちゃんは俺に「お兄さん、いいでしょ?ミウも連れて行って下さい。ミウ、お兄さんと一緒にお出かけしたいの」と上目遣いで甘えて来たので、「しょーがないなぁ」と了承すると、八田さんとバッキーに「またすぐそうやって女の子に甘い顔して!」だの「小学生相手にデレデレして!フミコちゃんに言いつけるよ!」と怒られた。


 二人ともついさっきまで言い争いしてたのに、なんで俺を怒る時は息合わせたコンビプレイになるんだよ。





 _________


 明日も更新します。



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