#73 言い争う二人を宥めただけなのに
今日、こうしてワラシ抜きの3人で集まったのには、当然理由があった。 ワラシの誕生日が12月の頭にあって、二人にそのことで相談に乗って貰う為だった。
俺の誕生日の時には、ワラシがサプライズで二人だけで祝ってくれたので、俺も同じようにワラシをお祝いしてあげたいと考えていた。
だけど、俺一人で考えても大したことが思い浮かばなくて、急遽八田さんとバッキーの二人に相談することにしたら、3人で集まって作戦会議をすることとなった。
因みに、平日だとワラシ抜きで集まるのが難しかったので、土曜日のこの日は「家族と用事が出来た」と言ってワラシには一緒に遊べないことは伝えてあり、花岡さんにも声を掛けたが部活があるので不参加となった。
「まずはプレゼントなんだけど、女子には何が良いんだろ」
「予算とかは決まってるの?」
「前に俺の誕生日の時にワラシがこの財布をくれたんだけど、結構高いヤツだったから、俺もそれくらいは頑張りたいと思ってる。でもナニが良いのか全然分かんなくて」
そう言いながら持ってきたリュックから財布を出して二人に見せた。
俺の誕生日にワラシから貰って以来、ずっと大切に使ってる財布だ。
「フミコちゃんなら「ぐふふ」とか言って何でも喜びそうだけど、二人の場合だと普段から持ち歩けて長く使える物とか良さそうだね。 それこそ財布とか」
「アクセサリーとかは?」
「指輪とかネックレスとか? でもああいうのって凄く高めの値段設定だから、俺が出せる予算程度の物ならしょぼくならない?」
「安いのでも良い物あると思うけど、探してみないとだね。でもアクセサリーは好みとかもあるしなぁ」
「ワラシならシルバーのパンクな感じなのが似合いそうだけど、確かに本人の好みの問題があるな」
「アキちゃん、色々持ってるんじゃないの?参考に見せてあげたら?」
「うーん、私も沢山持ってる訳じゃないし、安物ばかりだよ?」
バッキーはそう言って、机の上に置いてあった装飾が施された木製の箱を取って、テーブルに置いてフタを開けて中を見せてくれた。
中にはネックレスや指輪に髪飾りなどがいくつも入っていた。
「そういえば、前に髪飾りとかはプレゼントしたことあったな。 こんな高そうなのじゃなくて、もっとシンプルなデザインのだけど」
「あー!フミコちゃんがよく付けてるバレッタ?」
「そうそう。 ワラシがオカッパ止めて髪伸ばすって言った時に、じゃあってことで雑貨屋で二人で選んでプレゼントしたの」
「なら後で見に行ってみる? 実際にお店に行ってみて選んだ方のが、色々ヒントになるかもだよ?」
「確かにそうだね。 ココからだとショッピングモールも近いし、一緒に行ってくれる?」
「私はおっけー!」
「私も大丈夫だよ」
「二人ともありがと。助かるよ」
「じゃあウチでお昼食べた後にでも行こっか」
「あとはどんなお祝いをするかだけど、女の子はどんな風にお祝いして貰えると嬉しいのかな?」
「やっぱり、好きな人と二人きりでラブラブに過ごすのが最高にハッピーで憧れるよね!」
「そうだねー、そういうのはすっごい憧れるよね」
「八田さんもバッキーもそういうのに憧れるんだ。 だったら二人とも恋人作ればいいじゃん」
「ケンピくんたちと遊ぶのが楽しいから今はそういうのは良いの!!!恋人なんて必要なし!!!」
今日来るときに同じ様なことを八田さんに話したら否定されたけど、バッキーは八田さん以上に喰い気味な拒否反応を見せた。
「おぉぅ、そうか。 それなら別に良いんだけど・・・」
「そうだよ~。私もアキちゃんもケンピくん居るからしばらくはそういう恋愛は良いの!だからケンピくんはフミコちゃんばかりに構ってないで、こうやって私たちとも遊んでくれないとダメなんだからね!」
「えぇ・・・俺が?」
「私はソコまでは思って無いよ! フミコちゃんとケンピくんの邪魔なんてするつもり無いからね!シズカちゃんと一緒にしないでね!」
「あー!アキちゃん裏切るつもり!?アキちゃんだってケンピくんラブのくせに~!自分だけイイ子ぶってぇ~!」
「ちょっとぉぉぉ!何てこと言い出すの!?そんなこと言った事ないでしょ!勝手なこと言わないでよ!」
「またまた~!そうやってムキになるところが怪しいなぁ~?」
「まてまてまてまて!二人とも待つんだ!」
「待てない!コレは女同士の問題だから!最近シズカちゃん調子に乗り過ぎだからいい加減キチンと解らせる必要あるの!」
「素直になれないアキちゃんの方のがよっぽど自分の気持ちを解かる必要があるんじゃないの~?」
どうしてこうなった・・・
いつもならワラシが居るから二人ともワラシにビビってこんな風にならないのに、今日はワラシが居ないから八田さんはいつも以上に調子に乗り過ぎだし、バッキーも冷静さを失ってて女同士の醜い言い争いを止めようともしない。
八田さんはツンとした生意気そうな表情でそっぽ向いてて、バッキーは下唇を噛みしめ悔しそうに上目遣いで睨んでいる。
そもそも俺のことを買いかぶり過ぎだし、俺にはワラシっていう恋人が居る訳で、どんなに可愛い子に言い寄られた所で俺がブレることは無いし、それなのに二人してこんな言い争いして何にも良いことなんて無いぞ。 女同士の問題だろうが、今日は俺が二人に頼んでこうして集まって貰ってる訳なんだから、俺が何とかしないといけないじゃないか。
「はぁ、二人とも落ち着きなよ」
俺はそう言って、左手で八田さんの手を取り、右手でバッキーの手を取った。
そのまま自分の手をそれぞれの掌と重ねる様にして握ると、二人とも俺の掌を握り返してくれた。
「二人ともこうして俺みたいなブサイクと仲良くしてくれるのは凄く嬉しいよ。八田さんもバッキーも大事な友達だし二人の事凄く好きだし、これからもずっと友達で居たいし。 でもこんな風に大事な友達同士がいがみ合って喧嘩してたら悲しいじゃん。 そもそも二人とも俺のことを買いかぶり過ぎなんだよ。そんなつまんないことで喧嘩なんてするなよ。二人ともウチの2年を代表するくらい可愛いんだから、怒ってばっかだと台無しだよ?勿体ないよ?」
「そーゆーうトコだよ!」
「そーだよ!またそうやって!」
「えぇ!?」
仲直りさせようとしたら、俺が怒られただと!?
「ホッント!油断も隙も無いんだから!不意打ちでキュンってさせるの禁止!」
「ホントそーだよね!なんでいっつもこうナチュラルにイケメンムーヴ出来るの!」
二人同時にぷりぷり怒りだしたから怖くて左右の手を離そうとするが、二人とも握る掌に更に力を込めて離してくれず、まるで俺を逃がさないかのように二人とも手を引っ張りながらグイグイ体ごと迫ってツバを飛ばしながら文句を言い続けた。
両手を掴まれ左右両方から迫られ逃げ場の無い俺は、二人からのお説教を聞きながら心の中でずっとワラシに助けを求め続けたが誰も助けてくれるわけも無く、きっとこれはワラシに内緒で二人と秘密会議をしてたバチが当たったんだと考えていた。
でもとりあえずは、俺を説教するという共通目的が出来たお陰か二人の息はぴったりで、女同士の醜い言い争いは治まっていた。
その後、バッキーのお母さんがお昼ご飯を用意してくれて漸くお説教タイムは終わったが、食事の為に1階に降りる際にバッキーが言ってた言葉が印象的だった。
「こういう男の人を恋人にすると凄く苦労しそうだよね。 フミコちゃんくらいどっしり構えていられる人じゃないと、精神的に持たないよ」
いや、俺、何も悪いことしてないよな?
喧嘩の仲裁しただけだよな?
何でこんな風に女ったらしのクズみたいな言われ様なの?
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明日も更新します。
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