#72 ワラシの居ない土曜日
更新止まってて申し訳ないです!
やっと新エピソードが書けましたので公開します。
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今日は土曜日。
いつもの週末なら、俺の家かワラシの家でワラシと二人で過ごすのだけど、今日は珍しくワラシとは一緒じゃない。
俺は朝から自転車に乗って八田さんを家まで迎えに行き、そこから二人でバッキーの家に向かっている。
「ケンピくんとこうして二人なの、久しぶりだねぇ」
「うん。いつもはワラシと一緒だし」
「フミコちゃん以外の女の子と遊ぶの、ドキドキしちゃう?」
「ナニ言ってんだ? 今更八田さんにドキドキするとかナニ寝惚けたこと言ってるの? 俺がドキドキするのはワラシだけだ」
「またそういうこと言って!最近私のことぜっんぜん女の子として扱ってくれないし!」
「そんなにチヤホヤ女の子扱いされたいなら、俺じゃなくて他の男子と遊べば良いじゃん。黙ってれば可愛くて人気者なんだし、引く手あまたでしょ」
俺が尤もな指摘をすると、八田さんは左手で器用にハンドル操作をしながら右側を並走する俺の方へ向いて、右手の人差し指を立てて左右に振り「チッチッチッ、ケンピくんは解かってないなぁ。男子なら誰でも言い訳じゃないんだよ? 私は男らしくて、でも優しくて、私が嬉しい時は一緒に喜んでくれて、私が悲しい時は慰めてくれて、私が怒ってる時は一緒に怒ってくれるような人が良いの!私ってこう見えて理想が高いんだよ?」と、何故か得意げな顔で無い胸を張って言い出した。
「だったら猶更、俺と遊んでないで、そういう男を探しに行くべきじゃないの?」
「だからそういうことじゃないんだよねぇ。 そういう素敵な男性は、向こうから来てくれないと意味ないじゃん」
「なんで?」
「自分から探しに行ったら、それは運命的で素敵な出会いじゃないでしょ?」
「うーん、確かにそうかもしれないけど」
「だから私はそういう出会いに憧れてるの! 夏休みの前にケンピくんが颯爽と現れて助けてくれた時みたいにね!」
「なるほど。 だが、こっちからお断りだな」
「えー!なんでよ!」
「いや、普通に考えてダメに決まってるじゃん!ワラシ以外はノーセンキューなの!」
「ケチ!」
「いや、マジでナンなの?もし俺がウェルカム!とか言ったとしたら、ワラシ居るのにどうするつもりなんだ?」
「うーん、ふたまた?」
「うわ、二股OKとか安い女だな! そもそも、二股する様な男を素敵な男性とは言わないと思うぞ? それに俺みたいなブサイクが二股とかしてたら、社会的に確実に抹殺されるだろうな」
「まぁまぁ、この先どうなるか分からないしねぇ」
「八田さんの恋愛観を聞いてると、真っ暗闇な未来しか想像出来んぞ・・・」
そんな下らない恋バナをしているウチに、バッキーの家に到着した。
バッキーの家に上がるのは、実は初めてだ。
八田さんは何度も来た事があるので、八田さんが駐輪した横に俺も自転車を停めて、八田さんの後に続く様に玄関に向かった。
八田さんがピンコーンとベルを鳴らすと、直ぐに玄関扉が開いて中からダックスフンドを抱えたバッキーが「いらっしゃい!」と元気よく出て来た。
「アキちゃんおはよ!」
「バッキーおはよ。今日は急にすまん」
「ううん、ケンピくんからの相談だからね!私も今日は張り切ってるよ!さ!入って入って!」
バッキーの家は俺んちや八田さんちと同じ様な2階建ての一軒家で、上がらせてもらうと小学生くらいの妹さんらしき女の子が顔を出してたので「こんにちは」と笑顔で挨拶すると、プイっとそっぽを向かれて逃げられた。
「こらミウ!失礼でしょ!」
「大丈夫だ、バッキー。 いきなりブサイク男子が押しかけて来たから、驚いちゃったんだろう」
「もう!ホント、ケンピくんごめんね?あとで言い聞かせておくから」
「いやいいよ、そんなことしなくても。 ハイ、これお土産ね」
「気を使わなくても良かったのに。ありがとうね、頂きます」
「そうだった!私もコレ!ウチのママが持ってって」
「シズカちゃんもありがとうね。 私の部屋2階だから先に上がろうか」
「おっけー!」
バッキーは抱いていたダックスフンドを降ろすと階段を上って行くので、八田さんと後に続く様に階段を上り、上がって直ぐ手前の扉に二人に続いて入った。
バッキーの部屋の中は一言で表すと『中学生女子らしい部屋』だった。
ベッドの布団は薄いピンク色で統一されてて、マクラの両サイドにはキャラ物のぬいぐるみが所狭しと並び、壁には男性アイドルグループのポスターが数枚貼られていた。
「飲み物用意してくるから、座っててね」
「手伝おうか?」
「いーからいーから。 あ!でもクローゼットとか机の中とか勝手に見たらダメだよ!絶対にだからね!」
「おっけー!」
「そんなことしないって」
バッキーが部屋から出て行ったので、八田さんとお喋りをして待つことにした。
「八田さんはちょくちょく遊びに来てるんでしょ?」
「そうだね。 アキちゃんがウチに来ることもあるし、私がココに遊びに来ることもあるね」
「へぇ~」
何気ない会話をしながら、勉強机のイスに座ってみた。
正面にはフォトフレームが2つあって、そこには夏休みに俺んちでバーベキューした時にバッキーと八田さんとワラシと俺の4人で写した写真が1枚と、同じく俺んちでやった体育大会の祝勝会の時に参加した全員で写した写真が飾られていた。
1枚目のバーベキューの時は、バッキーの笑顔はまだまだぎこちないし、他の3人が肩寄せ合ってるのに対してバッキーだけ少し距離置いてる感じで、遠慮しているのが分る写真だった。
それに比べて2枚目のバッキーは、俺とワラシと3人でほっぺがくっ付きそうなほど顔を寄せ合ってて、凄く楽しそうな笑顔だ。
「バッキー、凄く変わったよな」
「そうかな? あ、でも一人ぼっちの頃と比べればそうだね。 でもそれは当然でしょ?」
「まぁね。 でも変わったと言えば、八田さんもかな?」
「そんなことないでしょ? 私ってずっとこんな感じじゃなかった?」
「うーん、以前から誰とでも親しくしてる感じはあったけど、ここまでは図々しくなかったな。 遠慮が無くなったと言うべきか」
「そりゃーそうだよ。 ケンピくんもフミコちゃんもアキちゃんも、私は親友だと思ってるからね」
八田さんが俺たちのことを親友と呼ぶのはどういった心境なのか気になり、イスに座ったまま振り返って八田さんを見ると、クローゼットの引き出しを開けて中を物色していた。
「おいコラ。バッキーが勝手に見るなって言ってたでしょ」
「え?アレは、見てくれっていうフリでしょ? って、ナニこれ!?ケンピくんコレ見てよ!タグにEって付いてるよ!!!私、こんなにおっきいの持ってないよ!」
八田さんは勝手なことを言いながら、引き出しから水色のブラジャーを取り出して、俺に見せる様に広げて掲げた。
丁度そのタイミングで部屋の扉が開き、バッキーが戻って来た。
「あ・・・」
「おかえり!」
「ええええええ!?」
三者三様の反応をするも、バッキーはティーセットを乗せたお盆をテーブルに置くと、八田さんに飛び掛かって下着を奪い返した。
「なんで勝手に下着見るの!私さっき絶対に見ないで!って言ったよね!?しかもよりにもよってケンピくんに見せるとか、酷い!」
「えー、絶対に見るなって言うからそういうフリだと思って。 それにケンピくんだってホントは見たかったでしょ?」
「おいコラ俺を巻き込むな。俺は注意したからな?」
「分かってる。ケンピくんはこういことしない人だし、またシズカちゃんが調子に乗ってバカなことしてただけだろうね!」
「ごめんごめん。もうしないからね?」
八田さんの心の篭ってない謝罪に、バッキーはムスっとした顔をしていた。
「八田さんには俺が後でお仕置きしとくから、バッキーも機嫌直してくれよ」
「むぅ。ケンピくんがそう言うなら良いけど」
「因みに八田さんへのお仕置きは、石垣に「八田さん、最近石垣の事が気になってるらしいぞ?」って一言言うだけで充分だろう」
「ちょっとぉ!ソレだけは絶対に止めて!」
「”絶対に止めて”って言うのは、言ってくれっていうフリなんだっけ?」
「うん、そうだね。シズカちゃん自分でそう言ってたもんね」フッ
「ちっがうから!」
俺のお仕置き案を聞いた八田さんは止めるように必死に訴えていたが、バッキーは腹グロモードで悪人みたいな笑みを浮かべていた。
バッキー、やっぱりあんまり変わってないかも。
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